「適当に座って。」



儚を家に呼ぶのは初めてだった。というか、2人きりで静かな場所に居るのすら初めてだ。

少し緊張した様子でソファーに座っている儚。隣に座って、グラスにワインを注ぐ。
乾杯してひと口飲んで、目を閉じる。

2人きりで過ごすのも、こうして普通に話せるのも、最後になるかもしれない。
そう思うと涙が滲んできて、掻き消すように大きく深呼吸をした。



「…少しだけ、私の話を聞いてくれる?」


『うん、勿論です。』


「……私ね、昔からずっと女の子が好きなの。初恋から、好きになったのも付き合った事があるのも、全部女の子。」


『……』



儚の顔が見れなくて俯き加減になってしまう。



「…儚に初めて会った時から、私は貴女が好きだった。」


『…オンニ……』


「…ずっと、儚だけが特別なの。何気ない時間でも、一緒に過ごすだけでどんどん好きになって…。だけど、貴女に嫌われたくなくて、貴女の傍に居られなくなるのが怖くて、どうしたらいいのか分からなかった。」



真っ白な肌も、琥珀色の瞳も、華奢な身体も柔らかい肌も、全部自分だけのものにしたかった。
いつか他の人に抱き締められる儚を想像して、勝手に苦しくなって。



「…貴女を抱き締められないのが辛くて、他の人の所に行ってしまうって考えたら苦しくて、私どうすればいいのって、そんな事ばっかり…っ」


『オンニ』



我慢出来ずに流れた涙を必死に拭うけど、次から次に溢れるそれが嫌で、何もかも上手くいかない自分が嫌で、唇を噛み締める。

だけど次の瞬間、優しい温もりに包まれて、嘘のように涙が止まる。



『…気付かなくて、ごめんなさい。』


「…っ」


『苦しかったですよね。…私も同じだから、分かります。』


「…え、?」


『…私もずっと、オンニが好きでした。』



耳元で響く透き通った声に、思わず儚の顔を見る。
ずっと見れなかったから気付かなった。儚の頬にも、涙が伝っていた。



「儚…」


『ずっと好きで、オンニも同じ気持ちならどんなに幸せだろうって考えて、だけど、そんなはずないって苦しくなって…』



抱き締め合って泣く私達は、滑稽かもしれない。それでも、夢にも思ってなかった幸せな言葉に、どんどん腕の力が強くなる。



「…儚、」



少しだけ身体を離して、儚の涙を拭う。ゆっくりと目線を合わせてくれた彼女を、精一杯の気持ちを込めて見つめる。

大切な、何より愛しい儚。私の儚。



「…貴女が、儚が好き。私の全部は貴女のものだし、貴女の全部も、欲しい。」


『…オンニ、好きです、愛して…っん、』