カーテンの隙間からさす陽射しに目を覚ますと、自分が夢を見ていた事を知る。

幼い、まだ5歳にも満たない頃。
グクと2人で手を繋いで、桜の木の下に寝転がっていた。
大きくなったら僕のお嫁さんになってね。恥ずかしそうに笑いながら、だけどはっきりとした声でそう言ったグクに、笑って大きく頷いた。そんな、昔の夢。



「ユリ様、」


『…おはよう、ジョングク。』



控えめなノックの後に私の部屋の扉を開けた彼は、あの頃とは違い随分と逞しくなった。
私の方が少し高かった背は今では10cm以上彼の方が高くて、小さかった体は筋肉質になって。
カーテンを開ける大きくなった背中をベッドからぼんやりと見ながら、ズキズキとした胸の痛みをやり過ごす。



「朝食の準備が整っております。では。」



目線を合わせる事は一度もないまま去ってしまう。
扉が閉まると、自然と溢れるため息と一筋の涙。全部全部、お決まりの事だ。

私とグクは所謂幼馴染で。小さい頃はいつも2人一緒だった。
大人しいグクを引っ張って外に連れ出すのは私の役目で、疲れてぐずる私の手を引いて連れて帰ってくれるのがグクの役目だった。
毎日毎日、色んな事をした。沢山の思い出を作った。
グクのまんまるな瞳と笑った顔が大好きで、控えめだけど優しさに溢れた心が大好きで。グクが好きで好きで、これからもずっと2人で過ごす時は変わらないと信じて疑わなかった。

その現実が変わり始めたのは、私達が7歳になる頃だった。
いつも一緒に遊んでいたのに、勉強になると引き離された。その内、一緒に遊ぶ事すら許されなくなって、会う事は少なくなった。
そんな中でやっと理解した事。
王室の生まれの私と、執事の家系で生まれたグクは、決して対等には生きられないという事。
グクとはもう、昔の様に手を取り合って無邪気に過ごす事は出来ない。私はこの国の姫で、グクは私に仕える家臣。

そうして13歳になる頃には、幼い頃の関係が嘘だったかのように、私達はただの主人と執事になった。
目尻に皺がよる笑顔も、私を見つめる優しい瞳も、もう随分と見ていない。