みょうじなまえについてわかったこと。女。チビ。幸村のクラス。変なやつ。そして、




 "成績優秀で品行方正、まわりからの評価もたかい"



なーにが品行方正じゃ。参謀のやつ・・・・なんにもわかっとらん。
じゃあ昨日のみょうじなまえはなんなんじゃ。チームメイトが困ってるっていうのに・・・・・それ以上のデータはないときた。
夢だなんて言わせはせん。奴はたしかにあんなことを、・・・・・・そしてなんで俺はあんな女を気にしてるんじゃ。
そう思うと、ふつふつと怒りににたなにかが沸き上がる。

 出席日数は・・・足りとる。こんな気分のときは、サボるにかぎる。俺の足は自然と屋上へと向かっていた。
今日は快晴。昼間は最適温度。ドアをぬけて、プレハブをぐるりとまわった裏手が俺のいつもの場所。壁を背に座り込むと、いい案配に日差しと影がまざりあう。この僅かな日光はすぐに俺を眠りへと誘う。

 偶然仁王雅治の失恋の噂を流したやつがいて、そこに付け入ろうとした。偶然じゃ。そう、ただの・・・・・・


「偶然、だね」
「・・・・・・・・」
「あ、起きてたんだ」


 タイミングがいいのか悪いのか。相変わらず急に沸いてでて、にこにこわらうみょうじに思わず眉根を寄せる。
が、勿論そんなんで臆する気配もなく・・・みょうじは俺から二、三歩離れた場所におなじように座ると、膝を抱いた。


「恋愛の忘れ方そのいち、新しい恋愛をするべし」
「・・・・・・ゆうとくけど、俺はお前さんみたいな変な女は御免じゃ」
「奇遇だね、わたしも仁王くんみたいな変な人はやだ」
「・・・な、」
「大丈夫だよ、そういうのできたわけじゃないし」


 みょうじはなんでもないようにそう言ったが、俺は驚きを隠せなかった。
 瞬きする度に揺れるその長い睫毛をぼんやりとみつめる。みょうじはそんな俺の視線を気にする様子もなく、いい天気、と呟いて背伸びをした。呑気なもんじゃ。警戒していた分、俺まで気がぬける。


「いったでしょ、たすけてあげるって」
「わけがわからんのじゃけど」
「だから、仁王くんがあのこを忘れるのを手伝うってはなし」
「おまん、なんでそれを・・・」
「別に付け入ろうとかそんなんじゃないから」
「・・・・変な女じゃ」
「そんなわけで!てはじめに二人か三人女の子を紹介したいんだけど」
「いらんし」
「みんないいこ、あのこに似てるのは・・・えっと、このこ!」


 いいながら、みょうじが俺にむけてかざした画面には数人がうつったプリクラが表示されている。このこ、と指さしたのは真ん中で、それよりも、右でピースするみょうじに目がいった。強い光にあたったせいか、白い肌は透き通るように白く、黒目がちな目はより強調されている。
正直いって、このなかで一番かわええ。

 みょうじの感想をせがむ声ではっと我にかえる。どうって・・・・見てなかった、とはいえず考えた結果。(興味ないんじゃからしょうがなかろ)


「・・・・・似とらん」
「雰囲気は似てるでしょ」
「誰も似とるやつがええとはいっとらんじゃろ」
「でもきになったから画面みたんでしょ」
「・・・・・・寝るから、帰りんしゃい」


 相手にしきれん。ほかでもない、本能がそう告げた。

みょうじに背をむけて、よこになる。弟相手によく使う手じゃ。こうすれば大体は引き下がる。
が、思いの外みょうじの動く気配はせず。おそるおそるうっすらと目をあければ、さっきと変わらない体勢のまま俺を見下ろすみょうじと目があった。


「おはよ」
「・・・・っなんなんじゃ、ほんとに!」
「もういいの?」
「みられたら眠れんじゃろ」
「じゃあ、これなーんだ」
「・・・・しゃぼんだま」
「すきだってきいたの、幸村くんから」
「情報収集まで御苦労じゃの」
「仁王くんをあやすにはこれだって」


 じゃあ、ってなんじゃ、じゃあって。しかも幸村のやつ、チームメイトの情報を売るんじゃなか・・・・(よりによってこんな女に!)
 俺のそんな叫びはよそに、みょうじは早速しゃぼんだまに勤しみ始めている。ピンクの装飾を施された小さな筒からふわりふわりと浮かぶ球体は、日差しをうけてきらきらと輝く。
 それが風に吹かれて、浮かぶ様を見上げるみょうじは楽しそうに笑っている。


「元気、でた?」
「・・・・・さあ」
「そっか」


 でたとはいっとらんのに、みょうじは頬を綻ばせ、再びしゃぼんだまを吹く作業にもどる。・・・・どうにも、調子が狂う。
 本当に、へんな奴じゃ。




 あたりはしゃぼんだまに包まれていて、日差しは暖かくて・・・・天気はよくて。
 自然と口角があがるのはこいつのせいなんかじゃない、そう言い聞かせることにした




20130607


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