元々、女子と話すんは苦手じゃった。なんも知らんくせにテニス部のレギュラーっちゅーだけで言い寄ってきて、勝手なイメージを押し付ける。
・・・扱いなんかわからんし、
なんだ、お前はたったこれだけの人間かって思われるんが怖かった。だから、遠ざけた。それだけで、今度はミステリアスだ・・・って噂が流れた。
さらに、告白をのらりくらりとかわしていればなにがどうなったのか、プレイボーイのレッテルを貼られる始末じゃ。
仁王くんって変わってるよね
俺に近付いた女子は口を揃えてそう言う。
当然じゃ。俺の中身も、本質も・・・・おまんらには見せてやらんし、それでいい。
ずっとそう思ってた
その殻を容易く破ったのは、みょうじ、ただ一人じゃ。
なんでじゃろうな。居心地がよかった。奴が俺に興味がないからなのか、・・・・・果たして本当にそうなのか、・・・・・目的はなんなのか。何一つわからん。わからんくせに、どうにも心を開く。
だから、また怖くなった
ちょっとした好奇心じゃ。決して他意はないし・・・・あいつだって俺を調べあげとる、悪いことじゃない。(むしろおあいこじゃ)
そう言い聞かせて俺は今日・・・・・・・"奴"を呼び出した
「なんだよ仁王、こんなところに呼び出して」
あいつが妙にテニス部に関わっとるのは今回だけは幸運・・・・といえる。
朝練の後にこうして幸村と二人で話をするのは記憶の限りはじめてじゃ。
それも、場所は学校内に存在する俺の隠れ家のなかの一つ。(といってもあいつには知られとるんじゃけど、こんな時間にまで押し掛けてこない自信があった)
幸村はこん場所があったんだ、と、きょろきょろ辺りを見回しながら楽しそうに言う。
すこし空気が和らぐなか、俺は緊張しながら口をひらいた。目的はたった一つ、
「みょうじなまえについて聞きたいんじゃけど」
「なまえの?・・・・まさかそれだけ?」
尻尾を掴む、それだけじゃ。
幸村にしては意外な反応じゃが、どこか楽しむような、そんな印象を持った。こくりとうなずくと、幸村はわざとらしく考える動作をして視線を俺に滑らせる。・・・・・こうなることは予想がついとった。あえて幸村を選んだのはより有力な情報を求めた結果だ。みょうじと幸村とは友人で、それに、みょうじ曰く幸村を好いとるらしいからのう。これ以上の相手はおらんじゃろ。
幸村も俺の考えには気付いとるじゃろうし、すこし後悔をしたのはいうまでもないんじゃが・・・・・もう後には退けん
そう思ったのに、
「なんでもいいから聞かせて欲しいんじゃ」
「・・・・・・・・彼女はやめた方がいいよ」
「・・・・は?」
「悪いことはいわないからさ」
ふうん、とすこし考えた後、幸村が言いはなった言葉は想像もつかないもんじゃった。
あらぬ誤解を受けてしまったらしい。それだけは唯一理解した俺は、慌てて訂正する。ちなみに、幸村の顔色はぴくりとも変わらん。
「情報が欲しいだけじゃきに、誤解しなさんな」
「だから、やめた方がいいって言ったんだよ」
「・・・・・なんかあったんか」
「仁王には関係ないだろ」
「大有りじゃ、頼む」
「お前が必死になるの、珍しいな」
「幸村、」
幸村とみょうじとの間になにがあったか、どういう関係なのか。
益々わからん。・・・・それ以前に、幸村がこんなにはっきりと拒絶をみせたのははじめてで、俺の動揺は深まるばかりじゃ。聞いてしまってもいいのか、ぽつりとそんな疑問が浮かんで、口をつぐむ
次に口をひらいたんは、幸村じゃった。それも、沈黙を破るような、笑い声。
「冗談だよ」
「・・・・・・・は?」
「本気にしたんだろ」
「・・・・・・帰る」
「待った、聞きたいんだろ?」
・・・・・正直、どこまでが冗談なんかもわからんのに、苛立ちは募る一方じゃ。
確信犯。幸村はなにかを知っていて、敢えて楽しんどる。・・・・・しかも俺はそれに気付いとるのに、なんもできん。
らしくない。みょうじ相手に、こんな・・・・・・・いや、心をひらいた、ひらいてしまった時点でらしくないのは十分わかっとった。その理由をうやむやにしたままこうやって足掻いて、・・・・・・・出口がみえん。
・・・・・・そんなだから、付け入られる。あんな唐突にきて、いみわからんことで振り回して、そのくせ居心地がよくて、にげてもすぐにみつけにきて、それで、俺が抱え込んでどうにも出来なかったモノを簡単に、消していく。
こんなん、卑怯じゃ、
まさか、なまえがこんなにはやくアクションを起こすだなんて思わなかったし、それを受けた仁王がまんまと俺を頼るだなんて思わなかった
ほら、仁王ってああみえてプライドとかはすごく高いし。それにまさかこうして隠れ家に招いてくれることも考えてなかったな
だけど、からかうような事をいったのはちょっとした好奇心からだった。当然仁王は怒ったけど・・・これからきちんと事実を話すつもり。
なんとか宥めて留まってくれたものの、不機嫌なのは目にみえてわかる。
「なまえとは男友達みたいなものなんだ」
「・・・男友達?」
「うん、男友達」
今日の仁王に普段のポーカーフェイスなんて影もないみたいだ。わざとなのか、素なのかはわからないけれど・・・無意識に口角があがる。
なまえとは友達だけど・・・・いい意味で男友達のような関係。今の発言に嘘はない。・・・・それなのに、仁王は信じてないようだけど、先にからかったのは俺だし・・・・。文句をいう権利はない。けど、どうしてもにやけが収まらないのは許して欲しいかな
そんな俺の思いはよそに、仁王は目線をさげながらこう言った。
「恋愛対象には・・・・・ならんの?」
「・・・・・なまえが?」
・・・・真剣な仁王には悪いけど、これには笑わざるを得なかった。
なまえとは一年のときに同じクラスで、委員会が一緒になって意気投合したんだっけ。
テニス部だから、とか俺が幸村精市だからとか、関係なく接する彼女は新鮮だった。仲良くなった理由は本当に些細なことだけど、俺が本音で向き合える大事な友人であることに変わりはない。
だからって恋愛対象か、なんて聞かれたら、きっとなまえも聞いたらすごい顔をするんだろうな
「ふ・・・はは、おかしいな・・・・・・それはないよ」
幸村は腹を抱えて笑うなり、きっぱりとそう言った。その笑顔に白々しさとか、そういったもんは感じられん。でも、だからこそ、俺はさあ、と体温が低くなるのを感じた。
みょうじと幸村は友達で、みょうじは幸村にとって、恋愛対象でもない
笑えん。どっかできいた話じゃ
脳によぎるのは、幸村のことを話したみょうじの横顔。・・・・自嘲ぎみにわらっとった、横顔。
「それはそうと、仁王はどう思ってるんだよ」
「なんでそこで俺がでてくるんじゃ」
「いいから答えろって」
「・・・・・どうもこうもないきに、じゃーまたの」
あんな風にさらっと笑ってのける、それほどまでにみょうじは、幸村の心に近付けてないんか。そう思うと柄にもなくイライラした。幸村はなんも悪くはない。俺が異常なんは、わかっとる。あいつに会ってからずっと、異常じゃ
だから、これもその一環。
「・・・・もうひとつ、なんであいつをふったんじゃ」
「ふった?俺が?あいつを?」
俺は二人になにがあったのかも知らない。こんなことを幸村にいう権利も、ない
助けられた義理を返したかったのか、そう聞かれたって首を傾げる程、自分でもよくわからん。わからんけど、止まらんかった
幸村は相変わらず読めん表情をしとる。
「・・・ふふ、ほんと、コート上の詐欺師が聞いて呆れるなあ」
「待った、どういうことじゃ」
「本人に聞きなよ」
結局なにもかもわからんまま取り残された俺は、一人拳を握りしめた。
脳裏には幸村の言葉がこびりついて、はなれん
20130803
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