「だから、なんで俺が浮気する奴に似てるんスか!濡れ衣っスよ」
「似ているものは仕方ないだろう、赤也」
「浮気なんぞけしからん、その根性いま俺が叩き直して・・・」
「だから!似てるだけだから俺じゃないんですってば!!ああもう!座っててくださいよ!」
今日のメンバーは赤也、弦一郎、俺・・・・に、精市はあとから来る予定だ。まだ全員揃っていないとはいえ、十分に騒がしい。
というのも、俺と女子高生の間に何かあった、というはなしがおそらく幸村の口から瞬く間に広まったせいだ。
会って早々赤也の口からその話題が飛び出してきたときには目眩さえ感じたのはいうまでもないが・・・・・今回は弦一郎がいることも忘れてはいけない。
つまり、精市の第二波を迎える気力も残らない確率は文句なしの百パーセント・・・といったところだ。
「それで、なんかあったりしたんスか?」
「・・・・・なにか、とはなんだ」
この質問にはデジャヴを感じた。脳裏に精市の笑顔が浮かぶが・・・・赤也からきかれる方が数段ましだと判断した俺はひとまず咳払いをし、落ち着きを取り戻す。
ちなみに、噂の彼女とは今朝も顔をあわせたが、いつも通り変わらぬ笑顔を浮かべておはようございます、と声をかけてくれた。それだけで、なにも期待されるような事は起こっていない。
柳さんに惚れちゃってたりして、と騒ぐ赤也を尻目に弦一郎はじっと俺の顔をみつめる。・・・弦一郎の頬が少々緩んでいるのはみなかったことにしようと思う。
「あ、部長ももうすぐ着くって!」
「・・・・お前はまだ部長、と呼んでいるのか」
「いやー癖って怖いっス!」
なんの関係もない他人の空似というやつなんだが・・・やはりあのときの彼と赤也よくにている。赤也と顔をあわせるたびにおもわず関心するほどに、だ。
そんなことを俺が考えているだなんて毛頭も思っていない赤也はえがおを浮かべたまま、幸村のためにと奴の好物のつまみをテーブルに広げはじめた。
俺がそれに手を伸ばしたのと、インターホンが鳴ったのはほぼ同時の出来事だった。
「おまたせ、久しぶりだね赤也」
精市は部屋に入るなり違和感を感じるまでに上機嫌だった。
視線が一斉に精市に集まって、それから、その視線は再び一斉に同じ位置に注がれる。なぜなら・・・
「なんスかそれ!」
「あ、これ?なんか表にかかってたよ」
言いながら、精市が提げているのは職場でも何度か目にしたことのあるような、小さなポリ袋だ。
黒を基調としたデザインのそれを手渡されると同時に、今度は俺に視線が集まる。
表にかかっていた、と精市はいったが俺には全く心当たりはない。そこへ、いちはやく興奮ぎみに首をつっこんだのは赤也だった。
「もしかして例の子からじゃないっスか!?はやく開けましょうよ!」
「そう焦るなよ、あ、真田、俺のコップこっち」
「まったく・・・お前は自分で動かんか」
例の子、そう言われて思い浮かぶのは彼女しかいないが肝心の中身の検討はつかない。弦一郎までもが好奇の目をむけるなか、俺はセロハンテープでしっかり固定されたくちをおそるおそるひらいていく。
中には・・・・・・・・しるこに・・・・和菓子、あとは・・・・・メッセージカード。そこには、小さく丸まった字で、ありがとうございました、とかかれている。
・・・・・しるこの礼、なんだろうな。三人はこの不思議な顔触れに目を丸くしたあと、
「女子高生って・・・どうなんっスかね」
ぽつりとこんなことを呟いた。
「アウトだろ」
「よく考えるのだ、蓮二」
「てか、なんだよそのチョイス・・・・・もしかして蓮二お前、もう調教したの?」
「それはどういう意味だ精市」
・・・・・なにをどうすればそんな解釈に行き着くのはおいといて、あんな偶然渡した持ち合わせのしるこの礼にしては、重い。それに、これを見る限りすっかり和のイメージを持たれたようだ。それも無理はないんだが・・・腹を抱えて笑う二人の傍らで、眉間にしわをよせたまま俺をみているのが・・・・・・弦一郎だった。
「それで、きちんと親御さんの了承は得ているのか?」
「ぶっ!おや、お、おやご、さ・・・やめっ・・おなかいた、」
「笑い事ではない!どうなんだ、蓮二」
・・・・・・・・・・事態の収拾は、諦めた。
***
あれから、奴らはみっちり日付が変わるまで居座って、さらに弦一郎はかなり出来上がって帰っていった。唯一酒を飲んでいなかった赤也が二人を送ったのだからなにかあるとは考えにくいが・・・一つ心配なのは例の誤解はとけたかどうか、それだけだ。
俺なりに説明はしたんだが・・・・相手は酔っぱらい。俺にとって都合の悪い部分を、とんでもない解釈をしているに違いない。
・・・次に顔を会わせるのが恐ろしいが、ひとまずそれはおいといて、
今時、隣人に菓子をもって挨拶をしにきた時点で関心はしていたが・・・彼女は俺が思っていた以上に律儀だったらしい。
macherie
メッセージカードをなぞりながら、すこし、明日顔をあわせるのが楽しみになったのは気のせいだろうか
20130515
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