いっちゃった
柳さんに、がんばるって・・・・・いっちゃった・・・・・!あれなら他の意味にもとられない、はず。
でも、そもそもわたしは柳さんを知りたくって・・・・できることならすこしでもお近づきになれたらなって思ってるだけ。なのに・・・なのに、あんなことを・・・。
結局あのあとはろくに会話もできないまま別れちゃったし、柳さんはどう思ったんだろう。驚いてはいた・・・よね。うん、たしかに驚いてた。・・・・・・むしろひいてたとか。ううん、ないはず。ちゃんと柳さんも去り際にまたって、いってくれたし。社交辞令だとしても、いまはそれだけでこころ強い気がする。
会いたい・・・・なあ。
会ったところでどうするか、とかそうじゃなくて、ただひたすら会いたい。こんな風に思うのは初めてだ。それから、色々一人で考えた。否、考えるしかなかった。
忘れようとしても、頭のなかを支配するのは柳さんのことだけなんだ・・・
今の時刻は5時過ぎを指している。土曜の5時過ぎ・・・・先週柳さんとばったり出会ったんだっけ・・・・。
偶然を装って、少しおしゃべりするだけなら平気かもしれない。会えるかはわからないけど・・・会えなかったら会えなかったでそれでいいし、会えたなら、・・・・・・それはうれしいし。
昔、先輩に恋をして一生懸命頑張る友達を応援していて・・・・このこはどうしてこんなに頑張れるんだろう、っておもった。
辛いことがあっても、うまくいかなくても・・・・笑顔でがんばる姿をみて、不思議だなって思ってたの
でも、いまならその子の気持ちだってわかるし、わたし自身、ひとをそんな風に変えることができる恋愛に、憧れた。たしかに、すこしまえに浮気をしたって騒動があったみっちゃんと白井くんたちは別れてしまったけど・・・・それでもみっちゃんはこれでよかったって言ってたし二人はまた友達でいる。
わたしだって、恋愛したい
そんな思いで、部屋のドアを背に佇む。外はおもったよりもずっと静かだった。すこし風は肌寒いけれど、防寒対策はばっちりだ。
・・・・なぜだろう、こうしていると部屋に入れなくなってしまったあの日を思い出す。あのときは・・・・・・柳さんが来て、上着を貸してくれて・・・・心配だからって一緒にいてくれて・・・・・・。
思えば結構重大な出来事だったんだ
・・・・・・・・・・重大、といえば
ここでとあることに気がついた。
・・・・もしかして、っていうかもしかしなくても、いまのわたしって・・・・・ストーカーみたい・・・・・・?そう思うと妙に恥ずかしくなってきた。一度そう考えるとどうしてもどんどん深く考え込んでいってしまう。
やっぱり帰ってしまおうか、そう悩み始めた頃。
階段をのぼる足音が響く。反射的にその方向をみて、目を疑った
「・・・・・こ、こんばんは」
「・・・大家さんならそこを散歩していたが」
「今日はそうじゃないんです!」
まさか、本当に会えるなんて。落ち着け、わたし・・・・
人聞きの悪いことをいわれたけど・・・・前例があるからなにも言い返せない。それよりも、いまは柳さんに集中しないと。会話・・・なにか、会話、
そう思った瞬間。柳さんが近付いてきて、わたしと同じ方向をむいてこういう。
「・・・なにか見えるのか?」
「・・・・こ、こうしてたいだけです」
いくら目をこらしたって何もみえることはないだろう。だけど、まさかそこを指摘されるとは思わず・・・さらに追い詰められてしまった。
柳さんは柳さんで、遠くをみるのをやめ、すっかり小さくなったわたしをじっとみる。その視線に思わず背中が震えたのを合図に、いよいよわたしの頭は真っ白になった。誤魔化すために、となんとか振り絞った声すらか細い。
「や、柳さん・・・?」
「・・・・・俺に会いたかった、と顔に書いている」
「・・・・ち、ちがいますし」
「そうか」
ならいいんだ
柳さんはそう言った。ぎりぎりわたしにも聞こえる声量で、ぽつりと。
わたしが目を見開いたのは、大きく反応を示してしまったのは気付かれただろうか
それに・・・・ならいい・・・って。どういうことか、なんて問う気にもならない。十分すぎる拒絶だった。
わかってた、わかってたよ。だってわたしと柳さんはただの隣人で、こうしておはなししてるのも、ただの社交辞令とか、そういうの
わかってたのに。わたし、ばかだなあ。・・・・・・・・遠い、なあ。
「友達と、待ち合わせなんですよ」
「成る程、では俺は失礼するとしよう」
「はい、さよなら」
さよなら、柳さん
誰にも聞こえないように、小さな小さな声でそう呟いた。
だけど、それはわたし自身のこころに刺のようにふかく、ふかく突き刺さって、うまく呼吸さえできなくなった
わたしは柳さんの背中を追いかけないままにそっと中へはいると、壁にもたれ掛かったまま、静かに泣いた
なまえは恋をしてるんじゃないの
わたしのはなしをきいた友達の一人がそういった。たしかに、そうかもしれない。もしくは柳さんというなの大人の人に憧れているだけなのかもしれない
でも、もしきっかけがそれだったとしても・・・・・わたしが柳さんに惹かれたのはほんとだって、答えた。そう、思ってた
もうでもわからない。恋愛なんてやっぱり、わからない(どうしてこんなに胸は痛んで、涙はとまらないの)
20130721
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