朝、学校へいっていざ教科書をしまおうとしたら、違和感をかんじたのがはじまり。
しばらく教科書を出し入れした末に手を差し入れた結果、なにかがつっかえているようでうまくしまうことはできず・・・・・・。しばらく悪戦苦闘したあと、腕をつっこんでそのなにかを引き出して、驚愕した。入っていたのは無造作に折られたルーズリーフ。なんとなく、嫌な予想しつつも開くと、そこには簡潔にこう書かれていた。
昼休み、屋上にこい。さもなくばばらす
内容からすぐに仁王くんだってことはわかるんだけど・・・なぜよびだしたのか、肝心の用件がわからずにさらに頭を悩ませることになったのはいうまでもなく。
結局、もやもやしながら授業をうけて、いよいよお昼休みを迎えてしまった。
いろんな不安を抱えながら屋上へのドアをあけてすぐ、みえた銀色にためいきをつきたくなる。
「みょうじ、こっちじゃ」
「な、な、なんなんですか!これ!」
「ちょっとしたイタズラじゃきに」
「そうじゃなくて、」
「騒ぎなさんな、お、ブンちゃんこっちじゃよ」
「ひっ!」
ブンちゃん!?わたしの知る仁王くんの呼ぶ"ブンちゃん"とは一人しか思い当たらない。わたしが考る間もなく背後のドアがあき、ぞろぞろと顔をだすのはテニス部のレギュラー陣だった。予想通りなんだけど、そうなんだけど・・・・・・こんなにはやく来るなんて思いもしなかったわたしは小さく悲鳴をあげることとなる。
さらに不幸なことに、そうこうしているうちにもわたしはあっというまに取り囲まれ・・・・・・。完全に逃げ場をなくなったわたしは目を白黒させながらぐるりとあたりを見回す。
・・・・・・や、柳生くんの姿がないだと!(そんな心配してる場合でもないのにばかばか!!)
「仁王のイリュージョンを見破ったのってこいつ?」
「そうじゃ」
「そりゃすごいな、俺達でさえまだ困らせられてるんだぜ」
左から、丸井くんジャッカルくん切原くん・・・・それに仁王くん。
奥には真田くん幸村くん柳くん。もしかしなくても勢揃いだ!(柳生くん以外の!)
「あ、あの、わたし」
「へえ、このこが例の」
「みたところ普通の女子のようだが」
「弦一郎、不躾に怖がらせてはいけないな」
「・・・む」
「そもそもなんでお前さんたちまできてるんじゃ」
「そりゃ、気になるだろ?なあ、仁王」
「ピヨ」
まだ三強とよばれてるひとたちはわたしからすこし離れた場所で遠巻きにみてるけど、そのた三名は至近距離でしげしげとみつめるもんだから、見せ物のパンダかなにかにでもなった気分だ。正直やめて頂きたいのにそんなことを言えるはずもなく。
そんな空気を取り去ったのは・・・・・・ドアがひらくおと。ここまできたら振り向かずともわかる。
「おや」
「や、や、やぎゅ、く、」
とはいえ、やっぱり本物だとおもうと緊張するのだ。声が裏返ったわたしをみて、みんなが一斉に振り向いたりするから余計に足の震えはひどくなる。
なるほど、そういうわけか、だとかなんとか
幸村くんがそうつぶやいて疑問符をうかべている間にも、わたしの姿に気付いた柳生くんはこちらに向かって歩いてきている。逃げ場なんてないわけで、身をかたくするわたしを差し置いて柳生くんに真っ先に声をかけたのは、仁王くんだった。
「やーぎゅ」
「どうしたんですか、みなさんお揃いで」
「折角じゃき、紹介しようと思ってのう」
「・・・・・・彼女ですか。全く、手が早いですね」
「まあまあ、座ろうよ、みょうじさんは?お昼はもってるの?」
「わ、わたしは、」
「遠慮すんなって」
「お前さんはこっちじゃ」
そういって、手をひかれて座ったのは柳生くんと仁王くんのあいだ。
かばんごとここへきたからお昼ごはんはもってるんだけど、こんなメンツにかこまれて、食べられるわけないんだけど・・・・!柳生くんのまえで恋する乙女が喉に食べ物通るとおもってんの・・・・・・!?数分前、かばんを手にした自分をすこし・・・いやかなり恨んだ。
なんだかんだで座って数分も経たないうちに丸井くんによりわたしのお弁当はみんなの目前に晒されるわけだけど・・・・・・そこからわたしが食べることができるのかと問われれば前述通り答えはノーで。・・・・・・すると、なかなか食べようしないわたしに気付いたらしい柳生くんがじっとわたしをみてこういった。(みんなはなにかを察して黙っていただけに、余計にいたたまれない!)
「きちんと食べないといけませんよ」
・・・・・・・でも、し、しかられた!柳生くんに!柳生くんにしかられ・・・・・・!どうしよううれしい
そんなわたしの脳内とは裏腹に、現実のわたしはこくりと頷くのが精一杯で・・・・・・もうなんだか消えたくなるけれど、これ以上気を使われるわけにもいかないから、ここでようやくお弁当に手をつけることとなった。さっきまではあんなに拒んでいたけれど・・・・・・これはこれでよしとしておく。
「#name2"さんのお弁当って女の子らしいよね」
「え、そ、そうかな・・・・・・ありがとう」
「うん、自分で作ってるの?」
「このへんはお母さんが作ってくれたんだけど、これと・・・・・・あとこれはわたしが作ったもので」
「わあ、そうなんだ。よくできてるね」
「なんじゃ幸村、興味津々じゃのう」
「そういう仁王こそ、食べたそうにしてるね」
「生姜焼きはうまそうじゃ」
「他もおいしいから!!」
「それはどうだか」
「ねえ、卵焼き、もらっていいかな?」
「ど、どうぞどうぞ!!」
ひいいいい!幸村くんがお弁当を話題にだすから!みんなの!っていうか柳生くんの視線が!わたしなんかのお弁当に注がれてる!!!!とける。わたしのちょっと不格好な卵焼きなんてそんなにみつめられたら跡形もなくとける・・・・・・・・・!(むしろとけてしまえ)
ちなみに、幸村くんとも初対面だし、綺麗な顔立ちのせいでもっと普段ならきゃあきゃあ騒いでいたのかもしれないけど・・・・・・・・・まともに会話ができるあたり柳生くんパワーってすごいとおもう。
「わ、幸村くんって結構食べるんだ」
「普通じゃないかな」
「それに比べて仁王くん、まさか貴方はその量だけで済ませるおつもりですか?」
「柳生はうるさいのう」
とかなんとか言いつつもそれからは、幸村くんと仁王くんに引っ張られて・・・・なんとか柳生くんと会話することができたんだから本当にわたしよく頑張った。褒めてあげたい
・・・・・・そりゃあ、会話っていえないようなレベルだったけど・・・・・・・・・・柳生くんが参加する会話にわたしもいたっていうだけですごいし、むしろわたしにとって柳生くんとおなじ空気を吸うだけで大事件で、それが精一杯だったんだ。
どうしよう、しあわせすぎてなんか怖いよ・・・・・・・・・!
会話が途切れているというのに視線をかんじ、顔をあげれば仁王くんとはたりと目があった。どういう反応をとっていいものかわからずに控えめに首をかしげると、仁王くんもなんだか意味ありげに口角をすこしあげて笑う。・・・・・・もしかして、よかったな、とかそんなことを言ってくれてる・・・・・・・・・・・・?仁王くんに限ってまさか、だけど・・・・・・・・・今日のことだってわざとわたしのため、だとか・・・・・・・・・・?
そうだとしたら今すぐにでも地面に額をこすりつけてお礼をいう必要があるのにもちろん今それをするわけにはいかなくて、少しはがゆい気持ちになった。・・・・・・・・・・よくわかんないし、勝手に怖いひとだとおもってたけど、いい人、なのかも。(なんて、わたしげきんだ・・・・・・・・・・!)
「もうこんな時間でしたか、次は移動教室なので私は失礼します」
それから時はなごやかにすぎて、柳生くんがそういって立ち上がったのは、ちょうど休憩がおわる15分前。会釈をかえして、柳生くんがでていく背中をみおくって・・・・余韻にひたりながら息をついた。
いつもは遠巻きに眺めているだけだったから、喋っている柳生くんをみれたのだってうれしかったし、(もぐもぐしてる柳生くんのかわいさも堪能したし!)なんだか長い一時間だった。
ちなみに、柳生くんを皮切りにみんなそれぞれの理由で出て行ってしまい、自然とわたしと仁王くんだけがぽつりと取り残される。わたしも仁王くんには聞きたいことはたくさんあったわけで、好都合だ。
「・・・・・に、仁王くん」
「なんじゃ、改まって」
「まず、どういうことなの!」
「どうって・・・・だから、紹介したんじゃ、感謝してもらいたいのう」
「み、みてるだけでいいっていったのに」
「照れるみょうじはかわいいのう」
「かっ、からかわないで!!
いまだって、平然と宥める姿にわたしはむくれるばかりだ。声をあらげるわたしに仁王くんはあくまでいつもと変わらない様子で向き合う。この余裕はなに!わたしはあの手紙をみつけた時点でぞっとしたし、レギュラー陣にかこまれたときだってびっくりしたし、なにより柳生くんの登場で心臓をもっていかれそうになったのに・・・!
いまだって、平然と宥める姿にわたしはむくれるばかりだ。
しかし、いつまでもそうしてるわけにはいかず。
「・・・・・・・・・・でも、えっと・・・・・一応その、ありがとう」
「どういたしまして」
「それで、本題にはいるけど・・・・・・・・どうして呼び出したの」
「どうしてって、なーに、簡単な取引がしたくての」
「や、やだ!」
「即答なんてひどいナリ・・・」
「だ、だって!」
「まあまあききんしゃい、取引っちゅっても簡単じゃ。内容は・・・・・・・・俺と友達になるだけじゃからの」
「・・・・友達?」
「ああ。それだけで柳生へのお前さんの気持ちは黙っとく。さらに、お前さんは俺と友達でいることで柳生と触れ合うことができる。な?いろいろ捗るじゃろ」
仁王くんの用、とは、突拍子のないものだった。
だって友達って!大体、なにが目的なのかよくわからないし・・・・・・・・あれ?もしかして、わたしのことを柳生くんと突き合わせて反応をたのしんでる・・・とか?それなら十分ありえるかもしれない。・・・・・・・・でも、ううん。でもそれってあんまりたのしいとはいえないし・・・・・・・・。
あまりに急で、なんともいえずにいるわたしをもろともせずに仁王くんは笑うと・・・・手を差し出してきた。意味がわからずにその手をみつめているとあいた手で有無を言わさず握手させられ、わたしは益々目を丸くした。
「よろしく、なまえちゃん」
「ま、まって!なるっていってない!」
「明日も屋上で、な」
「ちょっと!仁王くん!!!」
完全に仁王くんのペースだと、気付くには遅すぎたらしい。
どう考えても理不尽だし、説明もたりないんだけど・・・・・・・・わたしは弱味を握られているせいで強くいうことはできない。仁王くんはそれを逆手にとったんだ!
さらに、明日もなんて物騒なことを言い残してさっさと出て行っちゃうんだから余計にわたしは頭を悩ませることになる。どうしよう。・・・・・・・・・・・・・・・・本当に、どうしよう。
わたしのまわりの環境が、わたしの意思とは無関係に急速にかわっているらしい。
20130407
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