しばらく昼休みにぬけることを友達につたえると、一斉に彼氏ができたのかと問い詰められ・・・・・。結果、わたしはげっそりしながら屋上へと向かうことになっていた。
そもそも言えるわけがないのだ。なんでかわからないけど仁王くんと友達になっていっしょにご飯をたべてる、だなんて・・・・・・・・・・口が裂けたっていえるわけがない・・・・・!
 大体。わたしだって柳生くんとみやぶっただけなのに、こうまでされると思わなかったし・・・っていうかそもそもなんで入れ替わってたの・・・・もう謎は深まるばかりだ。



「おー、ちゃんときたのう」



 現れたわたしをみるなり、仁王くんはなんだか嬉しそうにそういった。
こういうところはちょっと犬みたいだなあ、と思ってしまい、すこし口元がゆるみそうになる。
 気を取り直して、導かれるままにベンチにすわると、日差しがぽかぽかしてあたたかくて気持ちいい。普段滅多に立ち入ることなかったからこそだろうか。これはこれで新鮮で・・・・・さらに、得した気分になった。


 そこでわたしの目にはいったのはほんとに必要最低限で、自分のすきなものしか食べないことに徹底しているような・・・・・・・・・・仁王くんのおひるごはん。野菜をちっとも食べない友達は普段からみているものの、こういうパターンははじめてで・・・・・つい、目を瞬かせてしまった。



「まさか、またそれだけしか食べないの?」
「なまえちゃんはたくさん食べてえらいのう」
「わたしのは普通だし」



 そう言いながら、頭を撫でてくる仁王くんの手から逃げるために精一杯体をよじって、両手で頭をホールドする。
しめたといわんばかりに様子をうかがうと、仁王くんは余裕の表情でぽつりとこう言った。



「なまえちゃんはかわいいのー」
「な!」
「警戒せんでもなんもせんから、大人しくしんしゃい」
「手のびてたのみたし!大体!そういうのやめて!あと、ちゃんづけも!」
「ピヨ」



 ・・・・・きいちゃいないんだから。そういう風にいえばはぐらかせると思っているのか。とはいえ、わたしもめんどくさいからあえて触れないことにしておくんだけど。

そうして、それからわたしたちはお互いの今日のことについて話す程度で、わたしのお弁当の半分も減った頃にはすっかり沈黙がつづいていた。
それも当然だ。わたしたちは成り行き上のトモダチなだけで、実際に仲がいいわけじゃない。忘れようとはしていたけれど・・・・・いざこうなるとやはり気まずいのだ。
 それに、今日に限っていまだにだれひとり顔をださないのはなんでだろう。昨日みんなが一斉にきたのは単に都合があっただけ?



「・・・みんな、遅いね」
「いつも集まるわけじゃないからのう」
「なるほ・・・・・・・・・・・え?」
「今日は誰も呼んどらんき、こないぜよ」
「な、にいっ・・・・え?・・・・・・だれもって、ほんと・・・に・・・?」
「おーいい反応じゃ」



 ・・・・・・・・・・なるほど。それなら今こうなっている理由もわからなくもないんだけど、
仁王くんは最初からこうなるの、知ってたってこと、だよね?じゃあなんでここにきたんだろう。ほかの場所だと目立つから?
・・・・そもそも、わたしと友達になりたい理由もからないし・・・・・・・・・・本当に、謎がおおい。

 考え始めると、騙された、ということよりも不明点が多すぎて、なにも言えなくなってしまう。仁王くんはさもわたしの反応を読んでいたかのように上機嫌でこうつづける。



「今日はなまえちゃんと親睦を深める日じゃき」
「!?」
「まあとって食うわけじゃないんじゃから、もっとこっちきんしゃい」



 まさかそんな風に言われるなんて思わなくて、わたしは驚きを隠せなかった。仁王くんといると驚かされてばっかりだ。仁王くんはずっと落ち着いているのに・・・・・・・・・・。
 ・・・・それに、勝手なイメージだけど・・仁王くんはもっと外界との交流を隔てたひとだと思ってた分違和感は拭いきれなかった。関わるたびに新しい仁王くんを知っていく。わたしがもっていたイメージなんて、どんどん塗り替えられていく。
 不思議だなあ。改めてそう思ってると・・・・・・・・・・不意に、視線を感じて顔をあげる。



「なあ、なんで柳生なんじゃ」
「な、なんでって、」
「きになるナリ」
「に、仁王くんこそ!どうしてわたしに構うの!」
「さあどうしてかのう」
「あ、ほら!またはぐらかす!わたしだっていわないから!」
「言っても信じてくれんじゃろ」


 ・・・・・すると、こんなことを言うんだから・・・・・・・・・・本当に、ずるい。なんでもないようにいうけど、わたしのペースはみだされっぱなしなのだ。

 教えてくれないのは薄々わかってたけど・・・・柳生くんのことについて聞かれたのはまったくの予想外だった。なんとかはなしが流れたことを安心しながら食べ終わったお弁当を片付けることに専念する。しかし、そうさせてくれないのが仁王くんだった。



「で、なんで柳生が好きなん?」
「だ、だから、」
「変装をみやぶるほど好いとるんじゃろ、だから理由が気になるんじゃ」



 わたしの言いたいことを汲み取ったのか、さきに理由をのべられてしまい、いよいよわたしはだまりこむ。

 わたしが観念してくちをひらいたのは、目一杯沈黙がつづいたあとだった。



「・・・・・た、助けてくれたから」
「助けた?」
「一年くらい前に、わたしが上級生につかまってるのを、柳生くんが助けてくれたの」



 あれは、たしか二年生の頃だった。中庭で些細なことからこわいひとたちに絡まれたわたしをみかけた柳生くんが、うそをついて逃がしてくれたんだ。

 そのときはみんなが騒ぐ立海テニス部のレギュラーに助けられた、というよりは柳生くん自身に感動したのはよくおぼえている。



「・・・それから、どうしても気になって、追いかけてるうちに好きになってて・・・って、仁王くん?」
「ああ、すまん、聞いとる」



 われながら少女漫画みたいだなっておもうし、当時は飽きもせずに柳生くんをおいかけたわたしを、みんな単純だっていったっけ。
だから、たぶん仁王くんも例外ではないとおもうんだけど・・・・・なんだか急に考え込むような、ぼんやりした表情をみせるから、余計にはずかしくなる



「・・・・あ、呆れた?」
「いや、それっていつの話じゃ?」
「・・・・一年くらい前?かな・・・」
「ほう・・・」
「仁王くん?」
「いや、いいんじゃ」



 とはいえ、仁王くんはやはりどこかうわのそらのままだった。
原因がわからないから、余計に不安をあおられるけれど・・・・・・・・・・わたしだってこのまま引き下がるわけにはいかず。

 意を決して、仁王くんと向き合う。



「次は仁王くんの番だよ!」
「なんの話じゃ」
「だから!わたしをかまう理由!」
「・・・それはまたいつか」
「・・・・・・そんなことだと思った」
「拗ねなさんな、話さないことはないんじゃから」
「一緒だし!」



 大体、このまえだって柳生くんのことを応援するっていったのに、今日きてみればふ、ふ、二人きりだし!柳生くんなんかいないし!さらにはわたしとの仲をはぐくむ日だとか平然といっちゃうし・・・・・。

 そのわりに理由は絶対教えてくれないんだから、ずるい。ふてくされるわたしをみてへらっとわらう仁王くんが、にくい



「まあ、純粋に仲良くなりたいだけじゃきに」
「な、」
「だめか?」



 はじめてみる仁王くんの寂しげな表情にどくりと心臓がゆれた。
・・・・演技にしたってたちがわるい。わたしはうろうろと視線をうごかして、最後にためいきをつくと。



「・・・・・だめとかじゃ、ないけど」
「じゃ、明日はいちごオレでも用意して待っとるきに」



 なんとも歯切れのわるい返事をした。けれど、仁王くんはまったく気にする様子もなく、またふにゃりと目尻をさげてそういうのだ。



・・・・そういうのはいらないから、理由をきかせてくれれば悩まずにすむのに。そうはおもいながらも、くちには出さずにのみこんでおくことにする。


20130412

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