「受け取りんしゃい」
いつもの屋上への通り道、突然待ってるように言い残し姿を消した仁王くんは戻ってくるなりその掛け声とともに、わたしにいちごオレを投げてくれた。(なんか、青春ドラマのワンシーンみたい)
わたしは突然のことに、思わず取り落としそうになりながらもなんとかそれを受け取って、仁王くんを見上げる。
「これは、」
「この前約束したじゃろ」
たしかに、仁王くんはいちごオレをかってくれる・・・って、いったけど・・・・・まさか本当にやるとは思わなくて、驚いた。
何事もなかったかのようにあるきだす仁王くんの背中を追いかける
「ありがとう」
「よう似合うとる」
似合ってる、の意味はきかないことにして、仁王くんのあとについて屋上へ。ここにこうして二人でくるのにも随分となれてしまった。
屋上はあったかくて、ぽかぽかして・・・いまではわたしのお気に入りの場所になっている。どうしてこうなったんだろう。最初はよくそんなことを考えていたし、嘆いてもいたのに、人間どうころぶかわからないものだ。(とはいえ、それを仁王くんには伝えたくはないのだけれど)
今日もわたしはベンチに腰をおろして、うんと背伸びをした。
***
みょうじなまえ、
初対面で俺のイリュージョンを見破った女。
今まで偶然にも柳生の姿をした俺に告白してきたやつも、その逆もあったのに・・・・本当に驚かされた。
だから、近付いた。理由はたったそれだけだった。
だが、
なまえは俺が仁王雅治だとか・・・・そういったことはまったく気にせずに一切媚びることもなかった。それどころか、意中の相手である柳生と突き合わせてももじもじするだけで、むしろ迷惑だといいだす始末。
最初は正直ただの興味本意じゃった。でも、いまは・・・・俺自身が、なまえに惹かれている。それは自分でもよくわかっとる。
なまえが好いとるのは柳生、そう言い聞かせたのに・・・・・だめなんじゃ。
柳生をすいとるなまえをどうにかしようだとか、そういう気はない。ただ、傍におりたいだけなんじゃ。(どうしようもないんにのう)
「仁王先輩?」
「ちょっと借りてもええ?」
「っ、」
そういいながら、腰かけるなまえの膝を枕にするとわかりやすくその小さな肩が震える。所謂膝枕っちゅーやつじゃ。
抵抗せんのはわかっとるきに、文句を言いたげななまえも見て見ぬ振りしてそのまま目をとじた。
もうどれだけの時間こうしとるんじゃろうか。折角いい天気なんに、なかなか寝付けん。普段はこんなこと、ないんに。
考え事をしとるからか。なまえに気付かれんように静かに息をついて、とある日のことを思い出した。
たまたまその日も天気がよくて、二人で屋上におって・・・・俺もなまえもぼんやりしとった時じゃったのう。俺はなんの気なしにとある質問をしたんじゃ。確かこれもただの興味本位じゃった。
なんで柳生なんか、そうきいたんじゃ。すると、なまえは恥ずかしそうに笑いながらぽつりと・・・・・助けられた、と、そういった。
「あの、おなまえ、きかせてもらっていいですか」
「・・・・・・・柳生、柳生比呂士ともうします」
のう、なまえ。あれがお前さんだったとはのう。
その柳生が俺だったって聞いたら、お前はどうするんじゃ。
きっかけは柳生に扮した俺だったとしても、それからなまえが追いかけたのは正真正銘の柳生。
なら・・・・
・・・・・・・・考えても無駄、か。
途方もない現実に、俺はしずかに意識を手放した
「仁王先輩?」
「おはようさん」
「眠れました?」
「・・・・おかげさんでな」
そうはいったものの、やっぱり眠れるはずもなかったんじゃ。しらないなまえはやさしく微笑んで、俺をみおろす。
それから、なにかはっとした顔をして、不意に俺の髪を撫でた。驚きはしたものの、心地よさに思わず目をとじる。
「寝癖」
「あー・・・かまわん」
「結び直してあげるから、じっとして」
「できるんか」
「・・・・仁王くんよりは綺麗にできるし」
いわれるがままに頭をあげると、なまえはゆっくりと俺の髪をときはじめる。
太股を恋しく思ったりもするんじゃが・・・・これはこれでいいかもしれん。
「・・・仁王くんのかみ、意外に柔らかいね」
「意外とはなんじゃ、意外とは」
「見た目よりってこと」
「・・・人にされるのは慣れんのう」
擽ったくて、どうにも落ち着かん。肩を動かせば動くな、とでもいうように引っ張られた。
・・・・・随分と乱暴にやってくれるのう。
「できた!」
「・・・・ん、」
「あ!だから撫でるのは禁止だってば!」
言いながら笑うなまえを直視できんのは日差しのせいか、それとも・・・・・・・・・・・・
20130421
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