正直、呼び出されたときはこわかった。
口ぶりから要するに、わたしと仁王くんが屋上にいくのを偶然みたらしい。

・・・わたしなんかが仁王くんと・・・・っておもうとファンらしき女の子の気持ちも少しわかる。だからってわたしにあたるのは間違ってるかもしれないけど・・・・・。
 わたしはあのとき、あの出来事を仁王くんに知られたくないって、おもった。
同時に、仁王くんがいなくても乗り越えなきゃって・・・・・・おもってた。


 でも、仁王くんはそんなわたしをみつけだして、守るって・・・・いってくれた。
そこにいつものどこかふんわりした仁王くんはいなくって・・・・・わたしは気付けば泣き出してた。それは、自分のふがいなさへの苛立ちであったり、仁王くんの心強さだったり・・・理由はさまざま。だけど、勇気をもらったのはたしか。
 でも、守るっていったって、どうするつもりなんだろう
そんなことをぼんやり考えながら学校について、教室に入って・・・・・


「おは・・・」


 目に入ったのが、窓際のわたしの席に座って外を眺める仁王くんの姿。

 教室はいつもよりざわめいてるし、わたしと仁王くんを交互にみた親友である、みっちゃんはなにか言いたげな視線をおくって・・・・・口パクでこう告げた。せ、つ、め、い、し、て・・・・?いやいや説明してほしいのはわたしなんだけど!

 とりあえずあわてて近寄れば、まってましたと言わんばかりにかおをあげる仁王くん。



「な、なんでここに、」
「今日からなまえちゃんのボディーガードになるんじゃ」



 ・・・・・・・ボディーガード?
しれっとそう言ってのけた仁王くんとは裏腹に、わたしはぴしりとかたまる。もしかして、仁王くんが一緒にいれば安全だから、とかそういう理由・・・・・?

 どうじゃ、といわんばかりな表情をみせる仁王くんをよそに、わらわらとみっちゃんを筆頭に友達があつまってくる。


「え、ボディーガードって、どういう関係なの?」
「てかいつから二人は知り合いなの」


 わたしは仁王くんをみるけど、仁王くんはわたしをみるなりまた窓の外へ目をもどす。・・・これは、もしかしなくてもなすりつけられた感じ?

 視線がふたたびわたしへ集まって、じわりと嫌な汗をかく。(だって、どんな関係って・・・・・わたしが聞きたいぐらいなのに)
 結局、追い詰められたわたしはともだち?というなんとも曖昧なこたえかたをしてしまった。



「俺のことは空気だと思ってくれていいきに」



 そうは言ったって・・・・
なんて説明しようか悩みながら振り向けば、眉をさげたみっちゃんと目があう。そんなみっちゃんのかおをみたのははじめてで、わたしの心臓は再びはねあがった



「・・・・ごめんねなまえ」
「みっちゃん?どうしたの」
「昨日、あのこたちがなまえをよびにきたとき・・・・わたし、助けなかったでしょ」
「わたしも、なにもできなくてごめん」
「ううん、あんな状況で一緒にいてくれたの、心強かったし、それに・・・わたしも、黙っててごめん」
「・・・・・・あのこたちって、顔みたんか」
「だ、だめだよ仁王くん」



 仁王くんがぴくりと反応を示すから、わたしは慌てて引きとめる。みっちゃんたちは黙っててくれたし、ひとまずは安心だけど・・・・。仁王くんの拳は、震えていた



「ほんとに大丈夫だから、」
「・・・・もうそんな事はさせんきに」
「・・・ほんとに付き合ってないの?」
「付き合っとらんよ」
「付き合わないの?」
「どうかのう」



 とりあえずこの話は終わって、仁王くんも再び頬杖をついて定位置に。
・・・・相変わらず視線はいたいけど、わたしたちはいつもどおりに過ごして・・・・一日を無事に終えることができた。(ちなみに、仁王くんは宣言通り休憩になるたびにわたしの元へきてくれた)



「あの、仁王くん」
「なんじゃ」
「今日はありがとう、おかげで安心できた」
「俺のせいじゃきに、気にせんで」
「なまえのことならあとはわたしたちにまかせてよね」
「しっかり家まで送り届けるし」
「ん、まかせたぜよ」
「みんな大袈裟だよ!」



 部活もあるっていうのに家までおくるって言ってきかなかったときはどうしようかとおもったけど・・・・ようやくわかってくれたらしい。
部活がんばってね、そういって手をふると、仁王くんも手をふりかえす。たったそれだけなのになんだかうれしくなって、頬が綻ぶ。

ただ、それを見逃さなかったみっちゃんが目を光らせたのはいうまでもなく。



「で、なんで仁王雅治とお友達になったの」
「・・・・・聞きたい?」
「聞きたいに決まってるでしょ!」
「たいしたことじゃないんだって」
「たいしたことだし!!」
「そうだよ!吐け!」
「・・・・えっとね」



 それから
柳生くんのことからお昼休みのことまで、事の顛末をわたしの部屋でみっちりはなすことになった。


 みんな最初は驚くばかりだったけど、話し終えた途端みっちゃんは口を尖らせてこういう。



「なまえってば、なにも言わないし・・・」
「ご、ごめん」
「いいけど・・・・通りであんなことがあったわけだ」
「すごい剣幕だったもんね・・・・」
「わたしはあんたの味方だし、応援するから」
「ありがとう、でも応援ってなに?」
「なにって・・・・・・・・ねえ?」



 それから、女の子特有の会話でひたすら盛り上がったわけだけど・・・・
そんななか、わたしの脳裏に浮かぶのは仁王くんの顔ばかりで、不思議な感覚になった。(そんなわけ、ないのに)


20130505

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