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*アレン→セシル
「アレン様、私と弟とどっちが大事なのです」
弟――と言い掛けて、言葉を飲み込んだ。
しかし、女性は勘が良い生きもので。
私よりも私の気持ちをよく知っていて、聞いておきながら答えはもう、分かっているのだ。
「――……お幸せに」
察したのかそれ以上は何も言わず去っていく女性を、引き留めずに見送った。
「また別れたのですか、兄上」
そう言って、セシルは首を傾げた。幼い頃となんら変わらない、純粋な、少年特有の無垢な瞳で、俺を見据える。見詰められて、見透かされそうで、堪らず視線を外した。
「毎回女性から告白してくるのに、何故毎回フラれるのでしょうね」
私なんかとは違って容姿・文武・性格全て出来の良い兄なのに不思議だ、と言う。
非凡で優秀だと言われる兄、平凡で取分け何もないと言われる弟。軍閥家の次男として生まれ師団長を務める兄、軍閥家の三男として生まれ一介の騎士にさえなれなかった弟。
賢兄愚弟だと周囲から言われても、素朴で飾らない弟が可愛くもあり愛おしい。
――誰が言えようか。決して口に出してはいけない、伝えられない想い。
カップの中の、やや濃いめのオレンジ色の水面が小さく波立つ。
すっかり冷めしまったダージリンを言葉と共に飲み下し、愛想笑いを浮かべた。
紅茶に沈めた言の葉
(拍手お礼より再録)
