▽09

八班を探す面々はナルトの勘とやらを頼って森の中に来ていた。どうやら彼の勘は当たったようで、八班のキバ、シノ、ヒナタは紅の指導のもと修行をしているようだった。

「やっぱりいたってばよ!」
「な、ナルトくん…!」

ナルトをみたヒナタが顔を赤らめる。
キバとシノは突然現れた七班と十班を見て首を傾げた。


「なんだー?ん、フタバ!俺に会いたくて探してたのか?そんなことなら修行の成果を…!」
「キバ、それは違うと思うぞ。なぜならフタバ以外にも大勢来ているからだ」
「うるせぇよお前ら、話聞け」
「な、何故俺まで…」


フタバを見て寄って来たキバをシノがたしなめたが、更にシカマルが2人を一喝した。
落ち込むシノに対し、キバはシカマルの言葉など意にも介さずフタバにじゃれついている。


「修行中すまんな、紅ちょっといいか?」


アスマがそう言うと紅と呼ばれたくノ一が近寄って来た。
フタバは初めて見る紅に頬を赤らめた。

「(な、なんてセクシーな人…これが、大人の女…!!)」


* * *

「ふーん、なるほど。この子がフタバちゃんなのね。それでヒナタにチャクラの流れを見てもらおうってこと」
「は、はじめまして紅先生!修行中失礼いたします!よろしければヒナタをお貸しください!…てこれじゃまるでヒナタが物みたいな言い方!よくない!よくないわ!ごめんなさいヒナタ!」
「ど、どうしたフタバ。落ち着け」


どうやらフタバは紅を前にすると緊張してしまうようだ。アスマに頭をくしゃくしゃっと撫でられハッとするフタバ。シカマルはその様子をくっくっくっと愉快そうに見ていた。


「わ、私でお役に立てるなら…フタバちゃんのチャクラは前に一度見たことがあるので、何か変わっているところがあればわかるはずです。では…白眼!!!」


ヒナタの目の周りは白眼により血管のような筋が浮かんだ。以前、フタバが回復の力を見つける前、本当に大量のチャクラがあるかどうか不安になったフタバは友人であるヒナタに見てもらっていたのだ。その時は確かに大量のチャクラがあり、どこかあたたかい感じがするということを告げられた。最初に見てもらった老人と同じようなことを言われたのだ。


「…え?これって…」
「どうしたヒナタ。何かわかったのか?」
「あ、あの。フタバちゃんの体内に2種類のチャクラが見えます。もしかしたら吸収したという砂隠れの人のチャクラかもしれません。…でもすごく不思議です、段々フタバちゃんのチャクラに取り込まれています。もうしばらくすれば完全にフタバちゃんのチャクラと同じ性質になるかと」


ヒナタはそう言うと白眼を解いた。


「フタバちゃんの身体は今は問題はありません。でもチャクラを吸収するとき、やはり多少疲れてしまうのかもしれません。今回は初めてのことなので長い時間気絶したのでしょうが、恐らく回数を重ね身体を慣らすことでその時間も短縮され、最後には特に大きな疲れもなく吸収だけできるようになるでしょう」


自信はありませんが…と言ったヒナタの背をナルトがぱしんっと軽く叩いた。


「ヒナタ!お前すげぇな!そんなこともわかるのか!フタバもよかったな、身体に問題なくて!」


ヒナタはひぃっと小さな悲鳴をあげ紅の後ろに隠れた。ヒナタはわかりやすいなぁと思わずフタバは微笑んだ。


「ありがとうヒナタ!ナルトも!…もしこの力が使いこなせるようになったら私ももっと役に立てるかな?」

フタバは考えていた。
吸収の力は相手を思い遣るプラスの思考の時に使える回復の力とは違い、怒りや焦り、憎しみなどの負の思考に反応して使えるように感じた。
そんな感情に飲み込まれてしまわないかと、少し恐怖を感じたのだ。
それでも、仲間の助けになれるのならば…。


「フタバ、使いたくねぇならその力は使わなければいい。仲間のためにっていうのも結構だが、まずは自分のために行動を決めろ。とりあえず火影にはお前の力について随時報告する。だが火影だってお前が無理に力を使うのは良しとはしねぇだろうさ」


フタバが悩んでいるのを感じたのか、アスマがまたフタバの頭を撫でる。アスマの体温がそこから伝わってきて、くすぐったいやら嬉しいやらでフタバはにっこりと笑った。


「…ずっと思ってたんだが、アスマお前フタバのこと触りすぎじゃねぇ?」
「なんだアスマ、俺に呆れときながらお前もフタバのこと狙ってるの?」
「お前もってなんだよカカシ。問題発言だぞ。シカマル、こいつのことやっちまえ!俺は大人の女が好きなんだよ」
「ふぅん。大人の女って誰のことかしら?」
「く、紅…勘弁してくれ…」


そんなやりとりを見てまたフタバが笑った。


「フタバ」
「ん?なにサスケ」
「あまり無理はするなよ」
「! へへ、優しいねサスケ」


フタバに話しかけるそんなサスケの様子を、サクラが複雑な顔をして見ていた。


* * *

「じゃ、俺たちは火影のとこに行くから。君たちは今日は家に帰りなさい。じゃあまたねー」

気の抜けた声でカカシがそう言うと、上忍の3人はサッと消えてしまった。
辺りはもう暗く、すっかり夜になっていた。
残された七、八、十班プラスフタバはこのまま帰るのもなぁと考えていた。


「なあ!どうせならこのメンバーで飯でも行かねぇか?」
「ナルトにしてはいいこと言うじゃない!賛成!(サスケくんの隣は私よー!)」
「…フン」
「それならボクおすすめのとこがあるよ!」
「どーせ焼肉だろ、めんどくせぇ」
「あら、じゃあシカマルは行かないのねー。フタバ、あんたは行くでしょ?」
「う、うん!…シカマル行かないの?」
「…行かないなんて言ってねぇだろ」


そんな様子をみて、八班が少し疎外感を感じていた。それを察したのか、フタバが話しかける。


「ヒナタ、キバ、シノももちろん行くよね?なんだかこうして話をするのも久々だし、皆で楽しもう!」
「し、しょーがねぇな!フタバがどうしても俺がいなきゃ嫌だって言うなら行かないわけにはいかねぇよ!」
「キバ、別にフタバはそこまでは言っていない」
「わ、私も行っていいなら、その…」
「何言ってんのヒナタ!一緒にいこ!」


フタバに手を引かれたヒナタは嬉しそうに、うん!と返事をした。


その日はチョウジおすすめの焼肉屋に行き、全員がお腹いっぱいになるまで食事を楽しんだ。
下忍初めての任務だった十班は、長い1日を笑顔で終えることができた。



その後も、多くの任務をこなしそれぞれのメンバーが経験を積んでいった。
下忍として、自信をもてるようになるほどに。


フタバも色んな班で任務を遂行し(アスマはもちろんカカシや紅ともだいぶ打ち解けた)、少しずつではあるが自分の力を理解していった。
回復の力は、相手に触れている面積が多ければ多いほど回復の時間、量の効率が良いということ。無意識で相手にたまたま触れただけじゃ回復はしないということ。
吸収の力はアスマが予想したとおり、回復の力と同様相手に触れていなければ発動しないということ。
しかし吸収は回復の時とは違い手のひらで触れるだけで十分だということ。(まだ吸収するチャクラ量の加減はできず、任務中敵を殺しかけたこともあった)


力を使うたびに学ぶことができた。
今では吸収を使っても、意識のある中1分程動けなくなるくらいにまでなった。


いよいよ中忍になる日も近いのではないかと、フタバは胸を高鳴らせていた。


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