「それで?なんで俺の家に来たのよ」
そう言ったのははたけカカシ。第七班の担当上忍でありこの家の家主である。
フタバは普段カカシが使っているであろうベッドに寝かされている。
「いや、カカシならこいつの術が何かわかるかと思ってな。それに今日は非番だろ、かわいい部下の為だ文句言うな」
アスマはまるで自分の家かのようにソファでくつろいでいる。その様子を見てカカシはため息をつく。
「十班の子達はわかるにしても、どうしてナルト達までいるの?俺あまりプライベートは晒したくないんだけど」
キョロキョロと辺りを見渡すナルトに釘をさすように言った。
「修行の帰りにシカマル達に会ったんだ!これからカカシ先生ん家に行くって言うからついて来たんだってばよ」
「そーいうこと!フタバも心配だったしね」
「…俺は別に連れてこられただけだ」
一人暮らしのカカシの家に9人もいるものだから、少し窮屈な感じがする。
初めて見るカカシに十班の面々は緊張を浮かべているが、フタバを心配したいのが切り出した。
「カカシ先生、フタバが何をしたかわかりますか?そしていつ目覚めるんですか?」
「んー…くノ一の話からして、恐らくフタバがチャクラを吸い取ったのは間違いないんじゃないかな。そんな術きいたこともないけどね。でも顔色も良いしたぶんもうじき起きてくるでしょ」
それにしても寝かされているフタバは普通のかわいい少女だ。危険人物になり得るかもしれないと聞かされていたカカシは少し拍子抜けする。
顔にかかっていた髪を指でどかしてあげると、ムニャムニャと気持ちよさそうに笑った。カカシはそれを見て思わず可愛いねと呟き微笑む。
「カ、カカシ先生!さすがにフタバをってなると犯罪だってばよ!」
「何言ってんのナルト。俺はもっと上にしか興味ないよ。ま、この子がもう少し成長したらどうかわからないけどね」
ふざけているのか本気なのかわからないカカシに、一同が固まる。
いのがシカマルの方をチラッとみると、面白くなさそうにカカシを睨んでいた。
「チャクラを吸い取るなんてやべぇ力だぞ。普段いる俺たちが取られてないところを見ると、回復の力と同じように相手に触れているときしか使えねえってことだろう。…こいつは回復と吸収を操る。天使にも悪魔にもなるってこった」
「何アスマ、そこまで分かってるならここに来る必要なかったんじゃないの?」
「とりあえずフタバを安静にさせたかったんだよ。…もしかしたら初めて人のチャクラを吸い取った副作用みたいなもんでこうなってんのかとも思ってな」
初めて目の当たりにする力、その力を使用することでどのような負担がかかるのかは誰にもわからない。アスマの話を聞いたシカマルはフタバの側に座り直した。するとそれに続きサスケも近寄って来る。
「…なんだよ」
「いや、フタバは大丈夫かと思ってな」
「ハッ、お前も心配とかすんのか」
「フタバは人一倍無理するような奴だ。近くで制限かけてやる存在がなくてはいつか死ぬ。俺はお前だと思ってたんだがな。自信がないなら俺が奪う」
「っ!」
普段物を言わないサスケの宣言に、シカマルは思わず背筋がゾクリとした。
サスケとしては、あまり周りに人を置きたくはなかった。自分の復讐を果たす為には大切な者の存在は邪魔になる。しかし大切な者が強く、その力を利用できるとしたら?一石二鳥、いやそれ以上だ。
そんなサスケの思惑など、誰も知る由もなかった。
「…ん、私…ここは?」
「フタバ!」
「いのとサクラ…あれ?皆どうしたの?」
「ここは俺の家だよ。はたけカカシ、ナルト達の担当そして君の担当でもある」
「す、すみませんベッドに寝ちゃって!」
「問題ないよ。ところで何があったか覚えてる?」
カカシがフタバの身体を優しく抱きかかえソファに座らせる。それを横目で見つつ何が起こったのかをアスマが説明した。
* * *
「フタバ、恐らくお前が相手のチャクラを奪ったんだ」
「…シカマルを助けなくちゃって思って、あの攻撃を打ち消すにはチャクラを奪ってしまえばいいって考えたんです。回復もできるなら奪うことも可能かなって…一か八かだったんですけど成功したんですね。よかった」
「よかったってお前な!もしかしたら死んでたかもしれねぇんだぞ!」
「ごめんね。私が失敗してもシカマルならどうにかできるかなって思ったの。…でもあまりあの力は使いたくない。私、ものすごい憎悪に支配されてた。あの人を、殺したいとまで一瞬思った。しかもチャクラを吸い取るのってなんだか疲れちゃって」
無理して微笑んでいるようなフタバに、言葉が詰まる。
アスマは思った。
恐らくフタバは自分のチャクラを無意識に相手に合うように変化させて送り込みチャクラの回復をする。
しかし吸収の際は相手のチャクラをうまく変化させることができず、副作用のように疲労が溜まってしまうのではないだろうかと。
「カカシ、チャクラの流れが見える日向の一族なら何か分かるかもしれん」
「そうだね、紅とガイの班に日向の子がいたような気がするけど」
「く、紅かガイのとこね。んん、じゃあ紅の方に行ってみるか」
「それなら俺もフタバのことが気になるし、一緒に行くよ」
十班と七班は連れ立って八班を探すことにした。