▽07

「おつかれ、フタバ」
「シカマル…へへ、本当に疲れちゃった」
「フタバー!」
「わ、サクラ!」

自分の試合が終わり二階へ行くと友人達が待ち構えていた。
サクラはフタバにぎゅーっと力強く抱きつきおめでとうと言った。その言葉にフタバは喜びの笑みを浮かべそっと抱きしめ返す。
すると交互に友人達皆が頭をくしゃくしゃと撫でてくる。優しかったり乱暴だったり、それぞれの性格が現れているようでフタバは嬉しかった。

「フタバさん!ボクはあなたの試合をみて感動しました!!」
「えっと、あ、あなたは…?」

突然話しかけて来た迫力ある元気な少年に驚いたフタバは戸惑いながらもそう尋ねた。

「ボクはロック・リーです!あんなに強力で素晴らしい術をボクはみたことがありません!あなたはきっと他にも凄い忍術を使うのでしょうね!」
「フフ、ありがとございます!でも私、他の忍術はてんでダメなんです」
「そう、なんですか…?実はボクも忍術が使えません。なので体術を極めているところです!フタバさんももっと体術を磨けば素晴らしいくノ一になれると思います!」
「体術!そっか、そうですよね!だったら今度一緒に修行しましょう!」

突然あらわれ、しかも一緒に修行をするという約束までこぎつけたリーにナルトが対抗しだした。

「ゲジ眉〜!フタバに手出すなってばよ!フタバ、修行なら俺としよう!」
「え、うん!もちろんナルトともするよ」
「はぁ!?フタバ、特別に赤丸を好きなだけ触らせてやるから俺と修行しろ!」
「赤丸を?やったー!もちろんよキバ!」

収拾がつかなくなったところでカカシが止めに入った。

「ほらほらお前達、修行するのも喜ぶのもいいが次の試合誰になるかわからないんだぞ。掲示板を見ておきなさい」

その言葉にハッとした面々は慌てて掲示板をみる。そして、名前が表示された。


『ウチハ・サスケ VS アカドウ・ヨロイ』


「サスケ…」

フタバは思わず呟いていた。サスケの名をみた皆もそれぞれ思うことがありそうな顔をしている。サクラなんて、今にも泣き出しそうだ。
フタバにしても、いくら強いとはいえ具合の悪そうなサスケのことが心配だった。それに対戦相手の忍のことをフタバは何も知らない。どうやらさっき自分が戦ったカブトと同じ班の人みたいだが、初めてみる顔だった。わかるのは、木ノ葉の忍であるということだけ。


「サスケ、無茶しないでね」
「…お前に心配されるとはな」
「具合悪いんでしょ?そんなすました顔しちゃって」
「っ!何故わかった」
「え、何言ってんの?サスケは友達だよ、そのくらいわかるって!」
「…フ、そうか。心配するなフタバ。俺は勝つ」

サスケはフタバの肩をポンっと叩き、試合会場となる一階へと降りて行った。
大蛇丸に付けられた呪印のことを知らないフタバが自分の変化に気付いている、それだけで少しだけ嬉しかった。
だが喜んでばかりもいられない。サスケはこの呪印が自分のチャクラに反応し、チャクラを練ろうものならサスケの精神を奪い無理やりに身体中のチャクラを引き出すものであると確信していた。
この勝負、簡単な忍術であってもそうそう使うわけにはいかないのだ。

流石No. 1ルーキーといったところか、サスケの試合となると見ている全員の目が真剣そのものだった。
皆が見守る中、サスケとヨロイが向かい合う。

「それでは始めてください!」

ハヤテの掛け声で第二回戦が始まった。

ヨロイは素早く手裏剣を構えサスケに投げつける。だがクナイを構えていたサスケはそれで手裏剣をはじきかえした。

うまい、誰もがそう思ったがサスケは何故か痛がるような素振りを見せ床に倒れこんだ。呪印がわずかなチャクラに反応したのだ。
その隙をつきヨロイがサスケとの間合いを詰め思い切り殴りかかった。間一髪それを避けたサスケはヨロイの右腕を掴み押し倒す。形勢逆転だ。

「やった!!」

ナルトの声が響く。メキッと軋む腕の音が聞こえ、誰もがサスケの勝ちを確信した。その時、

ヨロイの右腕がサスケに触れた途端、サスケは身体から急に力が抜けていくのを感じた。ヨロイに蹴り上げられ、サスケは頭を押さえ込まれた。

「サスケくん!!」

遠くで聞こえるサクラの声を感じながら、サスケは驚いていた。

「(こいつ、俺のチャクラを…!フタバと同じ吸収の力…!?)」

先程フタバが使った力と全く同じものを、この木の葉の忍、ヨロイが使っている。
火影やカカシら上忍が調べても判明しなかったフタバの力を、何故同じ里の忍が?そもそもこのヨロイとやらが吸収を使うのならば里のデータに出ていたはず。

「(どういうことじゃ…)」

火影は嫌な予感がして仕方がなかった。


その時、フタバはただ呆然と試合をみていた。
どうして自分と同じ力を?アスマや、報告を受けた火影は初めてみる力だと言っていた。しかし今、目の前で同じ力を使っている忍がいる。
ーーあのヨロイって人にきけば何か分かるかも。
フタバは密かにそう考えていた。

試合結果はあっけないものだった。
呪印が暴走し始めたことで忍術はダメだと考えたサスケは、以前忍術を使えない忍者、リーと戦った時のことを思い出していた。
忍術がダメなら体術で。そうしてヨロイに純粋な体術で挑み、獅子連弾という何度も身体を叩きつけダメージをあたえる技を浴びせた。ハヤテはヨロイがこれ以上試合続行不可能だと判断し、サスケが勝利したのだった。

「やったー!!」
「でもあれってフタバと同じ…」
「どういうことなの…」

ヨロイが医療班によって運ばれていく。
皆はサスケの勝利に喜ぶと同時にフタバと同じ力を使うヨロイに疑問を感じていた。
疲労困憊しているサスケの元にサッとカカシが現れ話しかける。

「これから奥に連れてって呪印を封印する」

サスケは本選に残る奴らの試合をみたいと反抗したが、これ以上放っておくと取り返しがつかなくなるからダメだと強く言うカカシに押し切られ大人しく奥へと連れていかれた。

フタバは話を聞こうと思っていたヨロイが今話をするのは難しい状態であると判断し、それならば実際に戦ったサスケから話を聞こうとカカシとサスケの後を追いかけた。この後の試合も気にはなるが、同じ術を使う忍をみたのだ。優先順位はまず話を聞くことだった。

1人観戦から離れるフタバを、心配そうな顔でシカマルが見つめていた。

* * *

フタバはカカシとサスケを見失っていた。ようやく2人を見つけ出した時、サスケは身体中に封印の術式を書かれ更に地面に円陣状に描かれた術式の中心に座らされていた。

「あらフタバ、来ちゃったの」
「あ、ご、ごめんなさい!…サスケ、大丈夫なんですか?」

うん、まあ見てて。と飄々と言うカカシが素早く印を結びサスケの背に触れると術式がみるみるうちにサスケの首元に刻まれた呪印に集まっていった。

今行われたのは封邪法印という封印術で、サスケの意思の力を礎に呪印の力を抑え込むというものだ。カカシがそう説明すると同時にサスケが倒れ込んだ。

「柄にもなくそーとー疲れたみたいだな。しばらく寝かせておこうか」
「…あの、カカシ先生。その呪印っていうのはなんなんですか?」
「あ、ああ。これは…」
「私が贈ったサスケくんへのプレゼントよ」


後ろに気配を感じたフタバとカカシが振り向くと、そこには1人の忍が立っていた。

「封印の法術まで使えるようになったなんて成長したわねカカシくん…」
「大蛇丸…」

フタバはカカシに大蛇丸と呼ばれたその忍をみて、妙に嫌な気分になった。

「悪いけどカカシくんに用はないの…あるのはその後ろの子達」
「なぜサスケを付け狙う…しかも子"達"って、まさかお前フタバまで…!」

フタバはただ2人の会話を聞いていることしかできなかった。どうして自分が…?忍術もろくに使えず回復はともかく制御しきれない吸収の力しかもっていない自分がなぜ?

大蛇丸はある野望のためにいいコマを欲しており、サスケはその内の1人だという。

カカシは大蛇丸と刺し違えることくらいはできる!と手に雷を纏い構えた。

「カカシ先生!ダメです!」

ハッとしたフタバは思いっきり抱きつき大蛇丸に攻撃しようとするカカシを止めた。刺し違えるなんてダメだ。自分たちにはまだカカシが必要だ。

大蛇丸は見下すように笑い、カカシはすること言うこと全てがズレていると指摘した。
サスケは力を得るためにはどんな邪悪な力でも手に入れようとする心を持っている復讐者。いずれ強大な力を得るために私を求める…そう大蛇丸は語ったのだ。

「ところでフタバちゃん。お久しぶり、あなたなかなか勇敢に育ったのね」
「…!私はあなたになんか会ったことない!」
「あら、冷たいじゃない。あなたアビスマフタバちゃんでしょ?」
「違う!私の名は柊フタバです!」


大蛇丸は愉快そうに笑い、フタバに向かってこう言った。


「あなた本当に何も知らないのね。さっきのサスケくんの試合は見ていたでしょ?あなたと同じ力を使うヨロイも。あの子ね、あなたのお陰であの力を得たのよ。あなたの細胞をちょっと使って、ね」
「え…?どういう、こと?」

カカシが唖然としているのが横目で見えた。
大蛇丸が何を話しているのかわからない。


「そもそもあなたの力は私が創り出したものなのよ」


フッと視界が暗くなり身体が床に吸い込まれていくのを感じた。


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