▽21

三代目火影は穢土転生により甦らされた歴代火影を倒すことに成功していた。
しかしまだ大蛇丸がいる。三代目は己の魂を引き換えに大蛇丸を封印する術を繰り出した。これは以前里を救った英雄の術だ。

三代目は大蛇丸を捕らえるも、自分自身の身体を刀で貫かれている。
先に己の命が尽きるか、封印に成功するか、ギリギリの闘いだ。

火影だけでなく、木ノ葉全ての忍が里を守ろうと奮闘していた。
大蛇丸によって口寄せされた数十メートルもある大蛇に悪戦苦闘していたその時、その蛇の何倍もの大きさのある巨大蛙が蛇の身体を踏み潰した。

「(この術は…!)」

第一試験の試験官であったイビキは技に見覚えがあった。

「蛙に睨まれた蛇共が!おととい来やがれ!」


蛙の頭に立っていた忍、それは自来也だった。
彼の参戦で木ノ葉は大きく有利になる。自来也は三代目の身を案じつつ、再び戦闘態勢をとった。


* * *


「逃しゃあしねーよ!」

サスケはようやく我愛羅達に追いついた。
サスケの動きが止まったことはパックンによりフタバ達にも伝えられ、きっと追いつくことができたのだと彼女達は安堵した。
しかしパックンによれば自分達以外にもサスケの後を追っていた者がいると言う。敵か味方か、それは定かではないがパックンが感じたことがある。

「人じゃない…!」


サスケは我愛羅達の前に立ちはだかる。
すると我愛羅に肩を貸していたカンクロウはその役をテマリに譲った。

「テマリ、我愛羅を連れて先に行け!」
「ああ…」
「しょーがねーじゃん…お前の相手俺がしてやるよ!」

サスケは闘うしかないのだとカンクロウを睨みつける。

「いや…お前の相手はこっちだ…!」

突然聴こえてきた声の方を見ると、そこにはシノが立っていた。驚くサスケにシノが何故追いついたのか説明する。
シノはサスケが会場を出る前、彼に雌の蟲を付けた。同種の雄だけがほぼ無臭のその雌の臭いを嗅ぎつけることができる。それを頼りにここまで辿り着いたというわけだ。

「うちはサスケ…お前は我愛羅を追え。俺はこいつとやる。なぜなら元々こいつは俺の相手だったからだ」


シノはそう言うとカンクロウと向き合った。
サスケはそんな様子を見つつ、足早に我愛羅達の後を追う。2人きりになった空間で、シノが口を開いた。


「…お前達はフタバと親しかったはずだ。フタバがどんな想いでお前達を追っているかわかっているのか」
「…フタバの奴も俺達を追ってるのか」
「ああ。どこまで状況を理解したかは知らんが、ショックな事に変わりはないだろう。あいつは幻術から目覚めてすぐに試合中だった我愛羅のことを心配していた」


カンクロウの頭にフタバの笑顔が浮かぶ。自国のためと決心したはずなのに、自分達が今やっていることは大きな間違いなのではないかと思えて仕方ない。しかし、ここまできて引き下がることはできない。


「…こうなった以上どうしようもないじゃん。とりあえず俺はお前を片付けるだけだ」
「俺は負けるわけにはいかない。なぜなら俺はまだフタバに良いところを1つも見せていないからだ。…あいつが追いついたとしてもお前達に攻撃を加えてまで止めるということは難しいだろう。これは俺の役目だ」


傀儡の術で操り人形であるカラスを構えたカンクロウと、体内に寄生させている大量の蟲達を身体に纏わせたシノが正面から睨み合う。

カンクロウは何故かいつもより重く感じるカラスを操り、いち早く攻撃を仕掛けた。



* * *


その頃、テマリに背負われた我愛羅はようやく意識を取り戻した。
しかし"奴"が目覚めかけているのだろう、頭痛は続いているようだ。何かに気付いた様子の我愛羅は、自分を心配するテマリを邪魔だと強く振り払った。反動で大木に身体を打ち付けてしまったテマリが朦朧とする意識の中で見たのは自分達に追いついたサスケの姿だった。


「てめーら砂が何企んでるかは知らねーが…お前は俺がとめる!」
「強いお前…うちはと呼ばれるお前…仲間のいるお前…目的のあるお前…俺に似ているお前…お前を殺すことでその全てを消し去った存在として俺はこの世に存在する…俺は"生"を実感できる!」


そう言う我愛羅の目はなんとも痛々しく、そして悍ましかった。
身体中が痛むのか、我愛羅は唸り声を上げる。テマリはその姿を見て始まった…と焦りの表情を見せた。
彼女の目に映ったのは砂を纏い右半身が変異した"バケモノ"そのものの弟の姿だった。


我愛羅は以前サスケの修行中に彼の元を訪れていた。本選では試合でなく殺し合いをしよう、お前は俺の獲物だと告げるために。
我愛羅はサスケのことを本当の孤独を知る目をしていると言った。我愛羅と同じ、孤独がこの世の最大の苦しみであることを知っている目だと。
自分の存在価値を確かめたい、果たして自分は本当に強いのか確かめたいと心の底で望んでいるはずだと言う我愛羅に、あの時サスケは何も言えなかった。

サスケは激しい攻撃を繰り返す我愛羅から逃れながら、自分の復讐の相手である兄、イタチのことを考えていた。
一族を滅ぼしたイタチがサスケだけを生かしたのは一族殺しの罪悪感に苛まれぬ為の存在が欲しかったから。兄は自らを殺させるための復讐者という存在として自分を選んだのだ。サスケはそう理解していた。

こんなところで負けるわけにはいかない。サスケは手にチャクラを纏い、千鳥で我愛羅に立ち向かった。なんとか我愛羅の攻撃をいなすも、我愛羅の猛攻は止まらず身体の変異も広がっている。火遁で対抗するがどうやら千鳥以外の術は効かない。
しかしあの術はチャクラの消費が激しい。サスケは修行中カカシに言われたことを思い出していた。


『お前の限界は二発。無理に発動しようとすればチャクラは0になり下手したら死ぬ』


残りはあと一発。


「(こんな時、あいつがいたらな…)」


サスケはフタバの顔を思い浮かべ、弱々しく笑った。誰かの力を頼るなんて自分らしくもない。


我愛羅は自分の攻撃を受け傷付いているサスケを馬鹿にするかのように嘲笑った。


「お前の存在価値はこの程度か?はっきり言おう、お前は弱い!お前は甘い、憎しみが弱いからだ。憎しみの力は殺意の力…殺意の力は復讐の力…お前の憎しみは俺より弱い!」
「黙れ…」
「この意味がわかるか…?それはお前が俺より弱いということだ!」


サスケは向かってくる我愛羅に千鳥を打ち込んだ。
なんとか彼の右腕を負傷させることができたが、大蛇丸につけられた呪印が発動し痛む身体に起き上がることができない。
それでも攻撃を続けようとする我愛羅。万事休す、そう思った時サスケの前に金髪の人影が現れ我愛羅を蹴り飛ばした。


「サスケ!」
「サスケくん!」

誰かが倒れ込むサスケのもとに駆け寄ってきた。


「(アイツら…)」


テマリが見た人影、それはようやく追いついたナルト、フタバ、サクラ、パックンだった。


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