「アナタならどうにかなる相手でも、私じゃあ分かりませんよ。次元が違う」
「ああ。やり合えば2人とも殺されるか、良くて相打ちというところ。…たとえ人数を増やしたとしても変わらないだろう」
「やっと見つけたはいいが、お守りがあの伝説の三忍とは…彼が相手では"木ノ葉のうちは一族"も"霧の忍刀七忍衆"の名もかすんでしまう」
「ああ…しかしどんな強者にも弱点というのがあるものだ」
「そうですね。…ところで、あのフタバさんの力はすごいですねェ。ガイとかいう人が現れた時、ちょうど私のチャクラをフタバさんが吸い取ったようで一瞬クラッとしてしまいましたよ。おかげであの珍獣にしてやられました」
「だからか…。ガイさんが強いにしても、お前にしてはあっさりと不意を突かれたもんだと思っていたんだ」
「フフフ…あの方がフタバさんを欲するのも分かる気がしますねェ」
小高い丘に立つイタチ、鬼鮫の2人はターゲットであるナルトとその横を歩く自来也を見ながらそんな会話を交わしていた。
* * *
その頃、アスマ、紅、ガイの3人はカカシとフタバをとにかく安静にと考え、まずはフタバを彼女の家に連れて帰り母親に託し、その後カカシの家を訪れていた。
1人でイタチの万華鏡写輪眼とやり合ったカカシの疲労は相当なもので、一向に目を覚ます気配がない。
アスマたちはベッドに横たわる彼を見守りつつ先ほどの出来事について話し合うことにした。
「奴らの様子じゃあまだナルトは見つかっていないみたいだな…」
「でもおかしくないか…あいつらすでに里に入り込んでいた。この里でナルトを見つけるのなんて簡単だろ…イタチはナルトの顔を知っているんだぞ」
「それに目の前に居たフタバを易々と諦めたのも疑問だわ。彼らにとってフタバよりナルトの方が優先順位が高いってこと?一体何を企んでいるの…」
ガイの呟きにアスマと紅がそう答えたとき、ガイが突然「しっ!」とそれ以上の発言を遮った。
するとキイッと音を立て部屋の扉が開き、そこにはカカシ、と家主の名を呼ぶサスケが立っていた。
「……どうしてカカシが寝ている?それに上忍ばかり集まって何してる…一体何があった!?」
明らかに動揺しているサスケを落ち着けようとガイが口を開く。
「…ん、いや別に何もな「あのイタチが帰ってきたって話は本当か!?しかもナルトとフタバを追ってるって…」
しかしガイの誤魔化しも虚しく、話を聞きつけた別の上忍がそう叫びながら部屋に入ってきてしまった。
その事実はサスケにとっては聞き逃せないものであり、彼は血相を変えて部屋を飛び出して行った。
「何でこーなるの!」と慌ててその後を追うガイは気付くことができなかった。
実はアスマたちが家を出てすぐに目を覚ましていたフタバが扉の死角になる位置で悲痛に顔を歪め立って居たということに。
* * *
起きてすぐ、フタバは母親のマキナから自分が気を失っていたということを聞いた。
フタバは先ほどの出来事の話を詳しくきくためアスマ達の元へ行かなければと考えていた。しかし今彼らがどこにいるのか分からない。眉を顰めて悩んでいた時、マキナが口を開いた。
「アスマさん達、さっきカカシさんの家に行くって言ってたわよ」
「えっ…?」
それは予想外な内容だった。マキナならわざわざ首を突っ込んで危険なことをするなと自分を止めるものだと思っていたからだ。
「? そんな顔してどうしたの?アスマさん達のところに行きたいんでしょ?」
「そ、そうだけど…止めないの?お母さん」
「どうして止めるのよ」
「だって…」
「…木ノ葉崩しの後あなたが家に帰ってきた時、父さんと同じ目をしてたの。普段はニコニコしてるくせに、任務ってなるとゾッとするくらい真剣な目をしてた父さんと…。その時に、ああもうこの子は幼くてか弱い娘じゃなくて立派な"忍"なんだな、って」
マキナはそう言うとフッと頬を緩ませた。
「ほら!だから行きなさい!あなたが頑張ることで解決することが少しでもあるのならまずは行動!…カザネさん達や三代目火影様、父さんだってきっとそれを望んでいるわ」
ただし無理はしないこと!そう付け加えたマキナはポンっとフタバの背を押した。
フタバは急いで身支度をし、母をギュッと抱きしめ家を飛び出した。
「いってらっしゃい!」
と叫ぶ母の声を背に受けながら。
* * *
フタバはサスケが出て行ってしまった後、アスマたちに見つからないようにガイを追っていた。木ノ葉の里を出たあたりで引き返そうとも思ったが、やはりサスケのことが心配だ。フタバは覚悟を決めてその足を動かす。
サスケに必死に隠そうとしていた上忍達の様子をみても、やはりイタチとはサスケの兄のことなのだろう。
先程の闘いの中でまともにイタチの顔を見ることが出来なかったフタバはここでようやく確信した。
「(イタチさん…)」
数年前、うちは一族を滅ぼした張本人。実の親にまで手をかけておきながら、弟であるサスケだけは殺さなかった男。
そして忍術の使えないフタバに、せめて知識だけはと忍者になる上で大切なことを学ばせてくれた男だ。
フタバはかしこいな、と優しく言ってくれたイタチの顔が思い浮かぶ。
「(どうして…)」
フタバは公表された今でさえ、イタチがあのうちは殺しの犯人であると信じられないでいた。
以前サスケが言っていた復讐の対象がイタチであるということも。
自分は知っていることが少なすぎる。フタバはごちゃごちゃ考えるのをやめ、とにかくサスケを追うガイに追いつくことにした。
しばらく走ると、見知った全身緑の男が猛スピードで前を走っている。
このペースでは届かないと察したフタバは大声で叫んだ。
「ガイ先生ー!!待ってくださーい!!」
「…フタバ!?お前何故こんなところに…今頃アスマが里中走り回って探しているぞ」
キキーッと急ブレーキをかけて止まってくれたガイが呆れた顔でフタバを見下ろす。
「すみません…あとでしっかり謝っておきます…」
確かに護衛担当のアスマは自分を探すだろう。
アスマにも、恐らく彼の質問責めに合うであろう母にも申し訳なく思った。
「まあ来てしまったものは仕方がない。今更一人で帰すより一緒にいた方が安全だろう。急ぐぞ!」
「は、はい!って、うわわわわわ!」
少しスピードの劣るフタバを小脇に抱え、ガイが再び猛スピードで駆け出した。