▽03

「フタバ!恐らくサスケはこの中にいる!」
「この宿に?どうして…」
「さあな…とにかく気を引き締めて行くぞ!俺から離れるんじゃない」
「は、はい!」

フタバとガイは木ノ葉から離れた歓楽街のとある宿にたどり着いていた。
宿の受付によると先程から廊下付近より轟音が鳴り響いているらしい。
ガイは慎重に宿の外周からその音に近付いていく。


「先生、アレ…」
「ああ、壁にあんなに大きな穴が…間違いない。フタバ、こういう場合は中の様子を誰にもバレずに確認する必要があるが、その方法とは?」
「はい、手鏡などの反射を利用して確認します」
「正解だ!ただし焦って出てきてしまった為今手元に手鏡がない。よってこの額当てを利用する!」

ガイはそう言うと腰に巻いていた額当てをほどき、中の様子を伺った。手鏡で見るほど鮮明ではないが、確かに額当てには人影が映った。

「見えづらいな…ん!?これはサスケとナルトに見えないか!?ということはこのイカツい白髪の男は…」
「あ、この方は…」
「よーしフタバ!お前はここで隠れていろ!俺がアイツらを助けてくる!」
「え、いやガイ先生この人は敵では…」


言い終わる間も無くガイは「ダイナミック・エントリー!」と叫びながら出て行き白髪の男の顔面に蹴りを食らわせた。

「あれ?」

ガイはそこでようやく気付いたようだ。"白髪の男"はあの伝説の木ノ葉の三忍の1人、自来也だということに。


* * *


「自来也様…大丈夫ですか?」
「ああ…ティッシュありがとうのォフタバ…」

隣でガイが手鏡がなかったもので…だとかなんとか言い訳をするが、鼻にティッシュを詰めた自来也はムスッとしてそれを聞いている。
フタバは自来也は大丈夫だと判断し、それよりもさっきから呆然と壁にもたりかかり座っているサスケに駆け寄った。

「見ての通り重傷だ、サスケを早く医療班の所へ。腕の骨に肋骨の骨折…それに何やら瞳術で精神攻撃をくらって意識がない」

自来也は心配そうな顔をするフタバにそう説明した。
イタチと一対一でやり合ったらしいサスケ。あんなに兄を尊敬していたサスケが、あんなに優しく弟を見守っていたイタチが…。フタバはなんとも言えない悲しみに胸が締め付けられた。

「自来也様、サスケは大丈夫なんでしょうか…」
「…そうとうな精神的ダメージを受けとるようだのォ」

イタチの持つ万華鏡写輪眼はサスケの写輪眼とは少し違い、一瞬にして数十時間分の苦痛を与えるという。考えたくもないが、まさかイタチはサスケに"あの日"の光景を見せ続けたのではないだろうか。あの、イタチがうちは一族を滅ぼした日の光景を…。


「ちくしょう…何だってばよ!サスケにあいつ何しやがったんだ!?」

ナルトがグッと拳を握りしめる。
そして自来也に対し、用があんならこっちからあいつらの所に出向いてやる、予定変更だと怒鳴りつけた。
しかし自来也は今のお前が行っても殺されるだけだと一蹴する。それでも納得のいかないナルトは毎日怯えて暮らせってのか!!と食ってかかった。

「少し黙れ」

普段とは違う、鋭い眼光を放つ自来也に思わずフタバもビクッと肩を竦ませた。

「お前は弱い」

ナルトは悔しそうにサスケの方を見る。あのサスケがいとも簡単にやられてしまった。認めたくないが、確かに今の自分では太刀打ちできないだろう。


「スマンのォガイ…この子の気持ちを汲んだつもりだったがやはりもっと早く助けてやるべきだった…」
「…今、カカシも同じ術をくらって寝込んでます…いつ意識がもどるか…」
「カカシ先生が!?」

ナルトがフタバを見た。彼女は悲しそうに唇を噛み締めている。
ガイもまた同じ表情をしている。
加えて彼はサスケの姿が我愛羅との一戦で重傷を負ってしまった愛弟子、リーと重なって見えていた。

「教え子が傷付いたとき…こんなとき心から思いますよ。医療スペシャリストのあの方がここにいてくれたら…とね」

そんなガイの言葉に、自来也の眉がピクッと反応した。

「…だから、これからそいつを探しに行くんだっての」
「そいつって…もしかして」
「ワシと同じ三忍の病払いの蛞蝓使い…背中に"賭"を背負った綱手姫をな」


* * *


「自来也様、綱手様をきっと…探して連れて来てください」

サスケを背負ったガイがそう話す。

「ぜってー見つけてすぐ連れてくるってばよ!それまでサスケ頼むぜ!激眉先生!」
「じゃあなガイ、サスケの方は頼んだぞ」
「すみませんガイ先生、アスマ先生や紅先生、母によろしく伝えてください…」

自来也はナルトとフタバの頭にポンっと手を置いた。

フタバはナルトと自来也が綱手を探すと聞き、自分も同行させてくれと頼んだのだ。綱手に、渡さなければならないものがある。三代目から託されたこの御守りの中身を。
フタバも狙われているとガイから説明された自来也は彼女も側に置いておいた方が安全だろう、と連れて行くことを承諾したのだった。

「ナルトくん!フタバ!君たちみたいなガッツのある子は好きだ!君たちにこれをあげよう」

ごそごそと懐を漁りだしたガイ。これだ!と取り出したのはガイやリーが着用しているのと同じ、緑の全身タイツだった。
リーはこれを着て強くなった!と力説するガイとそれをキラキラした目で聞いているナルト、引き気味にそのタイツを受け取るフタバ、呆れている自来也。あんなにも真剣だった空気が一瞬にして緩んだ。まあこれはこれでいいか、と自来也は笑顔を見せた。

ガイを見送った後タイツを着ようか迷っているナルトを自来也がそれとなく止め、フタバ達は早速出発することにした。

道中、ナルトは何故自分やフタバが狙われているのか自来也に尋ねた。
ナルトに関しては彼の中にある妖魔、九尾の力。フタバはアビスマの生き残りであり最強の血継限界、"底なし"と"転移"そして"吸収"の力を利用するためであろうというのが自来也の考えだ。

「しかし奴らがどうしてそんなものを欲しがるのか…正直その目的まではワシもつかみきれとらん…」

ナルトやフタバは足を止め彼の言葉に耳を傾ける。
自来也は怖がらせてしまったか、と付け加えて話した。

「あんな奴らに狙われ続けるのは酷な話だがのォ…これも運命。まぁワシがお前たちを守ってやるから安心し…」
「だったらさっさと強くなんなきゃな!俺ってばよ!」
「わ、私も!強くなります!」

食い気味に言い切った2人を見た自来也は面食らってしまったが、すぐにフフっと優しい表情を見せた。
ナルトはフタバは俺が守るから焦らなくても大丈夫だと言うが、フタバはそれに反発するように私がナルトを守るの!と笑顔で言う。
自来也はそんな頼もしい言い合いをする2人の背を押し、再び歩みを進めた。

自来也は、綱手は自分と同じ年であり、一言で言うと嫌な奴、賭け事が好きだが伝説のカモと呼ばれるくらい運が悪いと説明した。
更に老けるのが嫌で特殊な術で容姿を変えており恐らく20代の頃の姿をしているという。金貸しから逃げ回る綱手を探すのは容易ではなく、どこにいるのか見当もつかないらしい。
地道に探していくしかないと聞き、ナルトはあからさまに不機嫌な様子である。

「時間は無駄には使わんよ。道中は全てお前に時間を充てるからのォ!」
「俺に?」
「お前を強くする時間、修行だ!」

ナルトは目を輝かせ先ほどガイにもらった全身タイツを取り出した。

「よーしぃ!」
「イヤイヤ、だからそれはないのォ…ワシそんなん着た奴と一緒に歩きたくねーからのォ…」
「え、あっ…」
「おいおいフタバ!まさかお前まで着るつもりだったんか!?さっきは引いてたろ!」
「その、自来也様ナルトにばかり修行つける雰囲気だったので…私は私なりに修行したいですという意思表示を…」
「わかったわかった!ナルトとは違う修行内容になるがちゃんと考えておる!とにかく着ようとするのをやめろのォ!」


自来也は先が思いやられる、と言った風に頭を振る。

さんさんと照りつける太陽は横に並ぶ3つの影を優しく地面に映し出した。


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