▽04

「まっつりー!!」
「お祭りだー!!」

ナルトとフタバは初めて経験する大きな祭りにはしゃいでいる。
綱手の情報を集めるため大きな街に立ち寄ったところ祭りが行われており、自来也の勧めで少し遊ぶことになったのだ。しばらくはこの街に留まり、修行もここで行なっていくらしい。

「それにしてもエロ仙人ってばケチだよな〜たった三百両しかくれないんだもん」
「ふふ…酒・金・女の三禁を守るために仕方ないんだよ」
「そんなこと言って、フタバには五百両あげてたじゃんかー!キー!俺の財布まで持って行きやがってー!」

プンプンと怒り続けるナルトをなだめ、フタバはたこ焼きが食べたい!と屋台を楽しそうに回る。
そんな様子にナルトも思わず笑顔になり、2人は射的やお面、金魚すくいなど思い思いに祭りを楽しんだ。

「それにしてもさっき妙に金魚がフタバに寄って行ってたな!」
「私も驚いちゃった、なんだろうね?昔から割と魚が寄ってくる」
「はは、なんだそれ!不思議だってばよ!」

フタバは次は何しよっかなーと笑っている。そんな彼女を見ながら照れ臭そうにナルトが呟いた。

「な、なんかこれデートみたいだな」
「ん、たしかに!あはは、私デートなんてしたことないや、初デート!」
「俺もだってばよ!へへへ」
「でもごめんね、せっかくならサクラとデートしたかったよね」
「んーそりゃサクラちゃんとできたら何よりだけど、俺ってばフタバのことも大好きだから問題ないってばよ!あ、でもこのことは同期の奴らには内緒な…アイツらに知られたら俺、俺…特にシカマルには…」
「ふふ、皆デートってしたいものだよね。私も憧れてたもん。思ってたよりずっと楽しいね、あ、自来也様にお土産買っていこうか!」
「(皆デートがしたいってよりフタバと居たいってだけなんだけど…まあいいか)おう!イカ焼きにしよう!」

ナルトとフタバはイカ焼き屋のおじさんに一本サービスしてもらい、自来也の姿を探すことにした。
しばらく歩くと、ギャハハハハ!と豪快に笑う声が聞こえてきた。ナルトとフタバは顔を見合わせ、その声がした店の暖簾をあげる。


「ギャハハ!若い娘はええのォ〜!」


フタバの目に映りこんだのは両脇に女性を侍らせ酒を飲んでいる自来也の姿だった。
どうやらかなりの量飲んだらしく、ナルトから取り上げていたカエルのがま口財布はぺちゃんこにしぼんでいる。


「おお…ナルト、フタバ!もう祭りは堪能したんかのォ?」
「は、はい。初めて見るものばかりで新鮮でした。ね、ナルト…ナルト?」
「忍の三禁もっかい自分で言ってみろってばよォ!!いきなりトリプルで破ってんじゃねーぞ!コラァ!!」


ナルトは怒りをあらわにし自来也に殴り掛かる。慌ててフタバが止めに入るが彼は全く微動だにしない。


「俺が必死で貯めたお金使い込みやがってー!こんなことならさっさと修行してくれってばよ!」
「ナ、ナルトよせ!悪かったってコラ!」


騒ぐナルトの手から、買ってきたイカ焼きがすっぽ抜けた。
やばい、と焦ったフタバがそのイカ焼きをキャッチしようと手を伸ばしたが遅かった。イカ焼きはいかつい顔をした男の白いコートにべったりとシミを付け、勢い余ったフタバまでその男にぶつかってしまった。


「す、すみません!」
「なにしてくれとんじゃこのガキ!兄貴のブランド服にシミ付けてからに!この服がいくらするか知っとんのか!弁償じゃあ!十万両出さんかい!」

白いコート男の舎弟なのか、スキンヘッドの男がそう叫ぶ。
その男はフタバの両腕を掴みいやらしく笑った。


「十万両払えねーっていうならこいつを貰ってくぜェ?こりゃ数年経ちゃあかなりの上物になるぞ」
「いや、痛い!離して!」

手の自由が利かないせいで吸収の力も使えない。
フタバは自分の力不足をひどく痛感した。

「おい、その子を離せ。お前らが気安く触っていい子じゃねぇぞ。そもそもそのダサい服が十万両はちとやりすぎだのォ」
「そうだフタバから手を離せクソダサコート野郎!」
「ぶっ殺されてーのか!?兄貴は元岩隠れの中忍で伝説の暗忍と恐れられた凄腕忍者だぜェ!」
「あ?伝説の…なんだって?」
「どうやら痛い目に遭いてーようだなァ!」


白コートの男は怒りの形相で自来也に殴り掛かる。
自来也は慌てることなくナルトに話しかけた。今からお前に教える術を見せるからよくみておけ、と。

そう言うと自来也の手に見る見るうちにチャクラが集まり、彼の掌で球体を作り出した。
ドン、と白コート男の腹にそれを当てると、男はすごい勢いで店の外へと吹っ飛んでいった。ちょうどそこにあった屋台を全壊させるほどの威力だ。
呆然とするスキンヘッドの男の隙を突きフタバは思いっきり吸収の力でチャクラを吸い取り、ナルトたちの元へ逃げ帰った。
突然チャクラが減ってしまったことに驚いたのか男は倒れこみながらな「な、なんだこれ…」と情けない声を出している。

「フタバ!大丈夫か!」
「うん、平気。ありがとうナルト」
「なら良かったってばよ…それにしてもエロ仙人!今のすっげー!」
「ただの掌底じゃなかったよね…」


驚く二人をよそに自来也は全壊した屋台の主人に修理代として大金を渡し、売られていた水風船をついでに買い取った。
何に使うんだと疑問に思っていると、フタバ、ナルト修行に行くぞと自来也が呼びかけた。


* * *


「ってなわけだ、ナルト。お前は今からこの"水風船修行"でチャクラの流れを作る…つまり回転のコツを掴め」

修行ができそうなひらけた場所にやってきた3人。
自来也は買い取った水風船をナルトに手渡し修行の内容を伝えた。
ナルトは今までの修行の中でチャクラの集中・維持、放出について学んできた。今回はそれらを応用し水風船の中の水をチャクラで押しかき回す修行だということだ。

「わかったってばよ!それで水風船が割れるくらいまでに水の回転を早くする修行だな!」
「お前だんだん察しが良くなってきたのォ!」

フタバはそのやりとりをキラキラとした目でみていた。
さっき自来也は印を結んでいなかった。と、いうことはつまりチャクラさえあればいいのだ。取得の難易度はともかく、チャクラを上手く練ることができるようになれば自分にも使えるかもしれない。
今はまずチャクラを練ることからだ。

「で、だ。次はフタバの修行内容だが…だいぶ期待しとるようだのォ」
「もちろんです!ようやく私のチャクラを活かせるようになるかもしれないって考えたら…」
「まあそう焦るな。とりあえずは…フタバ、あっちに川があるからそこまで移動しよう」
「は、はい」

自来也はそう言うとフタバを連れて大きな川に向かった。
そしていとも簡単にスッと水面に立つ。
フタバはカカシたちがイタチや鬼鮫と戦っていたとき、そう言えば全員水面に立っていたな、と思い出していた。

「これはチャクラを放出させて立っているんだが、実はちとコツがいる。まあ一度やってみろのォ。足の裏からチャクラを放出するイメージだ。ちなみにナルトはだいぶ時間がかかった」

フタバは言われた通り足に意識を集中し、川へと歩みを進めた。
思い切って水面に足を伸ばすと、驚いたことにそのまま立つことが出来た。


「じ、自来也様!私立てまし、うわあ!」


しかし5秒程立ったところでザブンと水中に沈んでしまった。プハッと顔を出したフタバは立てた喜びとすぐに沈んでしまった悲しみに複雑な表情を浮かべている。

「ハハハ!早いだろうとは思っとったが、いや、まさか一回目で立てるとはのォ」

自来也はフタバに手を差し伸べ、川から彼女を引き上げた。
びしょ濡れになってしまったフタバは着ていた上着を腰の上の方までたくし上げ、ギュッと水を絞り出した。


「油断しちゃダメってことですね。でもなんとなくわかりました!次はもう少し長く…自来也様?」


自来也はフタバを見たまま非常に驚いた顔をしていた。
そしてその視線はどうもフタバの左腰、アビスマ一族の血継限界を受け継いだ者に現れるという鯉の痣を捉えている。

「お、お前…その痣は…」
「え、ああ、これはアビスマ一族の…」
「…そうか、不思議な巡り合わせもあるもんだのォ…」

自来也はそう言うと自分の荷物の中から1つの古びた巻物を取り出した。
フタバはなんだろう、と首を傾げる。すると自来也が優しい表情でフタバの頭をガシガシッと撫でた。


「フタバ!お前さん思ってた以上に強くなるぞ!」



視線の端でキラキラと川の水面が輝いている。その輝きは太陽の反射によるものか、それとも何故か流れ出しそうになる涙のせいなのか、フタバには判断がつかなかった。


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