episode.9
※ロー視点
島に到着し、最低限の物資調達を終えてすぐにシャチ、ペンギン、ベポを部屋に呼び出した。
「予定変更だ、シャボンディに戻るぞ」
「どうしたんだ?」
ログが書き換えられる前に出航する予定ではあったが、それにしても急だと当然の疑問を口にしたペンギンに先ほど買った新聞を投げ渡した。広げて内容を読む左右から、シャチとベポも揃ってペンギンの手元を覗き込む。
「火拳のエースが処刑されるらしい、シャボンディで中継される」
「エースっていや、白ひげんとこの!?」
「公開処刑とはまた派手だな」
「白ひげ海賊団が黙ってないんじゃない?」
「十中八九来るだろうな」
「マリンフォードにか?海軍の総本部だぞ。正気じゃねぇ」
「海賊なんて正気じゃねェやつらの集まりだ」
海軍総本部に白ひげが特攻してくるとなれば、国同士の戦争と大差ない規模になるだろう。どちらが勝っても歴史が変わる。
「俺たちの絡んだ天竜人の一件はおそらく一旦保留だ、シャボンディの警戒は解かれる。それどころじゃないからな」
火拳のエースの処刑。それを巡る海軍と白ひげ海賊団との攻防。戦力にはおそらく七武海も出張ってくる。そうなれば奴も。新聞の内容が確かなら処刑の日程は二日後。この島もシャボンディからさほど離れていない。速攻で向かえば間に合うだろう。
「そう言う訳だ、わかったら出航の準備だ」
「アイアイ、船長」
揃った敬礼をして部屋を出ていくベポたちを見送る。四皇の一角が討たれるにせよ、海軍本部が負けるにせよ、その後に来る混乱の中で、どこまでやつの情報を得られるか。新世界に根を張るやつのナワバリを潰し、息の根を止める。コラさんの志は俺が継ぐ。たとえコラさんが俺にそれを望んでいなくとも。
しかし、相手は七武海。おいそれと手を出せば返り討ちにあう。俺のオペオペの能力も知られているばかりか、やつの周囲も含めれば単純な戦力差じゃ圧倒的に不利だ。
ふいに、先ほどの一件を思い出す。
リトが俺の船に乗りたいと言った。あいつにとってこの船は夢の様な場所なのだと。この船の連中は割とドライな気質だと思っているが、リトのいままでの環境を聞くにそれでもここは居心地がいいらしい。なんでもすると言った目は本気だった。まるで生まれたての雛が目に入ったものを親と認識する様な、そんな依存だと思った。寄る辺のない場所で命を助けたと聞かされたなら、想像に難くない話だ。そう言う意味では、俺は自分の復讐の旅の途中に随分重いものを乗せたようだ。これからの戦いを思うなら無理にでも島に置いておいたほうがよかったのか。いや、そもそも俺の復讐にはベポたちでさえ巻き込むつもりはないのだ。適当な理由をつけて船を離れる。船員は俺の個人行動には慣れている。海に出た頃に比べたら随分と人数が増えたが、俺がいなくなったとしてもアイツらはアイツらでなんとかやっていけるはずだ。
リトだってそうだ、あいつが健康に自立したらまた改めて意思を聞けばいい。雛はやがて巣立つものなのだから。