episode.17








「リトお前結構動けるじゃねーか」


「さっきは助かった」


敵の海賊との戦闘を終え。航海を再開した船の上。シャチとペンギンにまで褒められて調子に乗ってしまいそう。今まで自分でもあんな動きができると思っていなかったのだが、ベポがいうにはミンク族はみんな生まれながらに高い戦闘スキルを持っているらしい。私も完全にではないにしろそのセンスは受け継いでいるようだ。ただ、あの時はペンギンを助けなきゃとその一心だったから、いつでもあの感覚を呼び出せなきゃ意味がない。そういうと、ペンギンが練習相手になってやろうかと申し出てくれた。面白そうだとシャチとベポも同意する。

そこそこの戦闘を繰り広げた直後だというのに、私たちは甲板に出る。ペンギンは当てないから大丈夫と言って、愛用の槍を器用にくるくると回してみせた。やっぱり武器あるのかっこいい。いつでもいいぞと言う声を聞いて、ダンッと床を蹴った。

ペンギンの槍は体よりも大きくて、その間合いから逃れるために高く跳び上がる。空中で身動きができないところへ容赦ない突きが飛んできた。それを体を捻って避けると、私の動きを予想していたかのように槍の先が薙ぎ払うような軌道に変わる。


「っ、わ」


槍の柄を両手で受け止めて、そのままそれを軸にくるんと宙返りをした。距離をとって間合いの外に着地する。すばしっこいなぁと余裕そうに笑うペンギンになんとか反撃したい。今度は跳ばずに突進する。先程の敵は素直に吹っ飛ばされてくれたが、ペンギンは焦る気配もみせず槍を振る。開脚して体を伏せると頭上ギリギリを槍が振り抜かれた。耳の先の毛がチリッと擦れてちょっとひやっとした。当てないとか言って、私が避けなかったら絶対今の当たってたじゃん。私からの攻撃を予想しているペンギンの意表を突きたくて、槍を振り抜いた体勢のペンギンに両手を広げて抱きついた。


「うぉ!?」


咄嗟に受け止めたペンギンは勢いそのまま仰向けに倒れる。ゴンと頭を打った音がした。あ、ごめん。ペンギンの上に馬乗りになってマウントポジション。これで槍は振るえまい。脱力したペンギンがやれやれと槍を投げ出した。


「お前、これ戦闘訓練じゃなかったのか」


「だって悔しかったんだもん」


「ガキか…て、ガキだったわ」


うわ、そうやってすぐガキ扱いする。体勢はこっちが優勢なんだぞ、こちょこちょしてやる。馬乗りのままペンギンに手を伸ばした、次の瞬間、視界が切り替わる。


「なにしてる」


宙に浮いた体とすぐ近くからローの声。腰に回った腕に、小脇に抱えられているのだと理解した。うえ、なんで?
顔を上げると少し離れたところにペンギンたちが見えた。



「ペンギンに訓練してもらってたの」



「どう見ても遊んでただろ」



「私がちょっとやり返しただけ」



「ほぅ、そんなに体力が有り余ってるなら俺が遊んでやる」



「は?」



いうが早いがポイっと投げられた。空中で体を捻って難なく着地する。立ちあがろうとするとすぐさま私ごとROOMが展開され、一瞬で目の前に現れたローから鋭い蹴りが飛んできた。とっさに後ろに飛んで避けるものの空気を割くような速さに冷や汗が背中を伝う。まあまあだな、と呟いたローは私の戦闘スタイルを真似るように足技だけを器用に畳み掛けてくる。重さも速さも段違いのそれをかろうじて避けるだけで、反撃の余地なんて全くなかった。



「避けるだけか?」



ローは意地悪く笑うと流れるようにこちらを挑発してくる。刀すら抱えていない。素手でしかも足技だけという制限までついて、完全にこちらを舐めた態度が闘争心に火を付けた。絶対に手を使わせてやる。そう思った瞬間、覚えのある感覚が手足に伝う。さっきの戦闘の時と同じ神経が研ぎ澄まされる感じだ。


相手の予想のつかない動きをしないと、ローには当てられない。目の前のローを見据えると、真横に地面を蹴った。自分にかかる空気の圧に、さっきよりも早く動けているのを感じる。視界を揺さぶるように左右に飛んで、距離を縮めた。目の前に迫るロー、ここで蹴りを出したら確実に読まれて受けられてしまう。蹴りのモーションと見せかけて、真上に跳んだ。



「チッ」



案の定蹴りを想定していたローは一瞬舌打ちをしたが、真上に跳んだ私にもすぐに対応してくる。ここでもう一回。空中で体を捻り、ローの後ろへ距離をとって回り込む。死角に着地した瞬間地を蹴って突進斜め後ろから右脚を振り落とした。
入る!と思ったその瞬間、こちらを見もしないまま正確にローの手が私の足を掴んでそのまま受け止められた。全力で振り下ろした足を受け止められてビリビリと余韻が脚に伝わる。なんで死角なのに受け止められるの!?



「うーー!悔しい!!!」



「一撃入れるのに必死過ぎなんだ、お前は」



「でもロー、手使ったね」



「……」


パッと足から手を離すローの横にそのまま転がる。もう少しであの研ぎ澄まされる感覚が掴めそう。感情に左右されてるような気もするけど、もう少し自在に使いこなせるようにならないと。グーパーと手を握って開いてを繰り返してみる。離れたところから私とローの戦闘を見ていたペンギンたちがやっぱりうちのキャプテンはカッコいいな!とはしゃぐ声が聞こえた。


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