episode.6





※ロー視点




あれから夜になるとリトは俺の部屋を訪ねてきた。どうやら、安眠できたことに味をしめたらしい。どこで聞いたのか毎晩なんてやらしーとからかってきたシャチはバラしておいた。痩せぎすの犬っころに欲情などするか、まったく迷惑な話だ。俺の匂いが好きだとか安心するだとか、恥ずかしいことを真顔で言うリトに頭を抱える。自分の匂いなんか分かるか。俺の毛布をくれてやるから自室で寝ろと言ってはみたが、言うことを聞かない。これではイッカクの部屋にわざわざベッドを運ばせた意味がない。



「毛布ならやっただろう、いつまでここにくるつもりだ」



「お願いロー。私のことは空気と思って」



流石に部屋の隅に人が転がっているのを空気と思えるほど神経は太くない。何もするでもなく部屋にきて、いつの間にか床で寝ている。それをベッドの端に移動させて、空いたスペースで俺が寝るというのが三日ほど続いている。なんでこいつのために俺が気遣ってやらなければならないんだとも思うが。初日に自分が善意でしたことを覆すのもなんだと思い、大きい犬の世話を焼いているのだと考え方を改めた。
今日は昼間に海上に浮上した。リトが意識を取り戻してからはずっと海中にいたから、昼間はいつもより少しだけテンションが高かった。やれ潜水艦が動くのがカッコいいだとか、カモメだ、魚だといちいち反応してはすごいねとベポやイッカクに話していた。俺たちからしたら見慣れ過ぎて気にもとめないものがこいつの目にはとびきり新鮮にみえるらしい。ベポもイッカクもリトに関しては輪をかけて優しく、よかったね、と相槌を打っていた。俺と共に離れた場所からその様子を見ていたペンギンやシャチまでもが、ピュアだなぁ、なんか世話焼きたくなるよな、などと話をしていて。リトが着々と周囲を味方につけていることに少し驚いた。


船で目覚めた当初より、少しずつ表情から緊張が取れているようには感じる。警戒心は解けているようで、少し緩んだ表情をするようになったが、相変わらず相手の反応を窺うような態度をしているのは変わらない。
一見すると包帯だらけで痩せていて、髪も伸ばしっぱなしのリトは少年か少女か分からないくらいだが。よくよく見れば目鼻立ちは整っていて、このままもう少し栄養状態が良くなれば街で目を引くくらいになりそうだった。


明日には適当な島に船を寄せて、物資調達の予定だ。ログの溜まる日数にもよるが、海軍さえいなければ数日滞在してもいいだろう。もしもそこそこ治安のいい島だったなら、リトに選択肢を与えるつもりだ。
このまま船に乗るのか、ここで降りて平穏な人生を送るか。これからの航路にはゆくゆくゾウを入れてはいたが、この先の航海でそこまで無事に辿り着ける保証もない。本人の希望を尊重するつもりではあるが、俺自身はどちらを取ってもいいと思った。





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