意地







スマホの通知が鳴り止まないと思ったら、猿飛先輩から怒涛の連絡が入っていた。元親先輩の方には政宗先輩からの連絡が入っているらしい。げんなりしながらも、それぞれで連絡を返した。

昼休み中に連れ出されてから4時間半。元親先輩はこのまま家まで送ると言ってくれたが、ギリギリ放課後に間に合ったのでカバンを取りに学校に戻ってもらった。

帰りももちろんバイクで、行きより慣れたとはいえ降ろしてもらった時には子鹿の足取りだった。体幹?インナーマッスル?わかんないけど普段使わない筋肉を使った気がする。明日が怖い。


「また背負ってやるのに」


「いいです、歩きます」


海では甘えたが、ここでそんなことしたらどんな噂が立つかわからない。幸いHRも終わり、部活動の生徒以外は帰っていて、校舎は人もまばら。教室にも人気はないだろうと思いながら、自分の教室のドアを開けると、私の机の周りに伊達先輩と猿飛先輩が待ち構えていた。最悪だ。

「hey,アキ 長曾我部に拉致られたんだってな。貞操は無事か?」


「言い方!!!語弊しか生まないですそれ!?」


開口一番最悪な言い回しで詰ってきた政宗先輩に思わず、口が荒くなった。


「アキちゃん、俺様に黙って長曾我部とデートしたの!?ねぇなんで!?言ってくれたらどこへでも連れてってあげるのに!」


猿飛先輩に関してはめんどくさいことこの上ない。なんでいちいち報告しなきゃいけないんだ。


「お前らのせいで疲れた顔してたから、気晴らしに連れてっただけだ。でもまぁ、デートって言われりゃデートかもな、楽しかったぜアキ」


元親先輩は宥めたいのか煽りたいのかどっちかにしてほしい。また行こうな!じゃないんだよ、今は空気読んでほしい。

おぼつかない足取りでカバンを引っ掴む。そのまま肩にかけようと思ったら、横から猿飛先輩に掻っ攫われた。

「ちょっと、カバン返してください」


「俺様が持つから。ていうか家まで送る」


「そんなんで歩いて帰れんのか?俺が車呼んでやるよ」


「いや、元々俺がバイクで送ってくつもりだぜ?」


「歩くの大変なら俺様が抱えて歩くからいいでしょ」


「絶対嫌です!一人で帰りますからカバン返してください!」


「俺様だって嫌!」


子供か!まるで駄々っ子のような猿飛先輩の言い分に、付き合いきれない。お互いに嫌々と平行線の私たちを見かねて、政宗先輩が割って入った。

「OK. わかったから2人とも落ち着け。おい猿、てめぇは少し頭を冷やせ。アキの気持ちも考えろ。嫌われるのは嫌だろ?」


「ッ、」


「アキ、こっちじゃお前が長曾我部に誘拐されたって言われてたんだ。お前が担がれて連れてかれたのを見てた奴がいる。猿が過剰になんのもの分かるだろ?まぁ、長曾我部に限ってなんかあるとは思ってなかったが。帰ってきてみればお前はふらふらだし」


「…そんなの、先輩達に関係ないじゃないですか…」


「そんなこというなよ、"お友達"の仲だろ?」


ようは要らぬ心配をかけたということらしい。分かるようなわからないような。政宗先輩が珍しく諭すように喋るから、納得いかないけれど、無理矢理落とし込んだ。


「…じゃあ、私はどうすればいいですか」


「間をとって、うちの車でお前ら二人を送ってやるよ。元親もそれでいいだろ?」


「俺は最初から何にも反対してねぇ」


「猿、それが落とし所だ、いいな?」


「…わかったよ」


それは折衷案というのか、なんというか。政宗先輩がどこかへ電話を掛けると、ものの3分もしないうちに校門に黒塗りの高級車が停まった。元親先輩とは別れ、助手席に政宗先輩、後部座席に私と猿飛先輩が乗る。革張りのシートに、体が沈んで落ち着かない。何故か教室からずっと私の手を離さない猿飛先輩は、かと言って何かを喋るでもなく。いつもうるさいくらいの人が黙っているととても気まずい。
エンジン音もブレーキも感じないくらいスムーズに走る車内で、今日はつくづく乗り物に縁があるな、と関係ないことを思った。


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