秘密の女子会
放課後。学校の最寄駅のドーナツ屋に女子3人で集まっていた。試験前で部活もないので珍しくかすがと鶴姫と予定が合い、一緒に試験勉強をすることにしたのだ。
「それにしてもアキちゃんが海賊さんと接点があったなんて!」
鶴姫がもっちもっちとドーナツを頬張りながら、意外そうに言う。試験前に勉強しに来たはずなのだが、彼女の問題集はさっきからページが進んでいない。
「海賊さん??」
「長曾我部のことだ」
アイスコーヒーの氷をかき混ぜながらかすがが補足をいれてくれた。なんで元親先輩が海賊さんなんだ?眼帯してるから?輩だから?どっちかって言うと暴走族さんって感じだけど。
鶴姫もかすがも、私の中学からの友達だ。同じ高校に進んだ仲で、クラスは離れてしまったがそれでも定期的にお昼を一緒に食べたりしている。
「私はむしろ鶴姫とかすがが先輩達と面識あることの方にびっくりしてるよ」
高校初日、私が猿飛先輩達に盛大に絡まれた後。彼女達に相談がてら話をしてみたら、鶴姫は元親先輩と、かすがは猿飛先輩とそれぞれ接点があることが判明したのだ。
「私はただの腐れ縁ってやつだ。むしろあいつがアキに猛アプローチしてるって聞いて引いている。本当に無理なら言え、私が粛清してやる」
大真面目な顔でそう諭してくるかすがは本気の目をしていた。中学時代、元親先輩や、猿飛先輩の噂なんか聞いたことなかった。なのに、どうして二人は先輩達を知っているのだろう。
「二人は、なんで元親先輩や猿飛先輩のこと知ってるの?私もなんかあの人達と接点があるらしいんだけど、全く身に覚えがなくてさ」
行儀が悪いと分かっていながら、ストローをつい噛んでしまう。頼んだアイスティーはミルクとガムシロップを入れたけど、なんだか水っぽく感じた。助けを求めるようにそうぼやくと、二人はお互いの顔を見合わせる。
「知り合いなのは確かなんだけど…中学で知り合ったわけじゃないの…なんて言うかそれよりもずっと前」
「私は、まぁ同郷だからな。知っているだろう?私が施設育ちだってこと。…厳密にはそれよりも前から、その、縁はあったが」
二人とも何やら言葉を選びながら、急に歯切れが悪くなった。かすがが児童養護施設で育ったと言うのは中学の時に聞いて知っている。同郷ということは猿飛先輩も施設育ちってこと?いま武田道場に下宿してるのもそういう事情が関係しているんだろうか。
本人から直接聞いてないことを、周りから意図せず聞いてしまってなんとなく気まずい。そういえばお弁当自作してるって言ってたしなぁ、と色々腑に落ちて納得した。
問題は鶴姫だ。鶴姫は中学からその可愛さでファンクラブがあるくらい人気だった。対して元親先輩はどっちかというと男性人気のが高い。しかも治安悪めの。どうしてそこが関わり合いになるのか、しかも中学よりも前って。
なんとなく、二人のニュアンスが、私との関わりを話したがらない元親先輩達の態度に似てみえた。みんなが共有していて、私だけが知らないなにか。
「ねえ、なんかさ。みんなして私のこと盛大なドッキリにかけようとしてる?」
「ドッキリ?」
「なんでそう思ったの?」
きょとんとする二人の反応に、違うのかぁ、とモヤモヤする。
「だってさ、みんなして何か隠してるよね。私にだけ教えてくれない何かがあるように感じる。少なくとも元親先輩と政宗先輩と猿飛先輩と幸村くんにはある。だけど誰も教えてくれない…」
「それは…」
「アキちゃんを騙そうとかそういうことは一切ないの。でも、私たちがアキちゃんに話していないことがあると、やっぱりいい気はしないよね…?」
困った顔をするかすがと、しょげて項垂れる鶴姫。別に鶴姫たちを責めているわけじゃない。自分だけが知らない何かを共有している人達が周りに溢れていて落ち着かないだけなのだ。なんかこう、世にも奇妙な何かに巻き込まれているような。
「いいよ、隠し事があったって。友達だからって全部知りたいなんて思ってないの。ただなんか変な気分っていうか…自分でもうまく説明できないや。でも二人のことが好きなのは変わらないよ」
「アキちゃん…」
「私もアキが好きだ。もちろん鶴姫も」
「私も二人のこと大好きだよ!」
2人が私に言えない何かを共有していたとしても、私には目の前の優しい2人が全てだ。
かすがと鶴姫と出会って過ごした中学時代の思い出も、育んだ絆もちゃんと本物だ。それだけは確信を持って言える。
いつのまにか友情を確かめ合うことになった私たちは気を取り直して勉強を再開する。
結局すぐにまた根をあげて、終始おしゃべりに花を咲かすことになった。