犯人探し






病院の帰りも先生に家まで送ってもらったので、次の日は早めに学校に行った。

教室の自分の席の周りに血は落ちてなかったけど、誰か掃除してくれたんだったらめちゃくちゃ申し訳ない。後で聞いてみよう。いつもより30分は早くきてみたけど、グラウンドからは運動部の声が聞こえるし朝練はもっと早いらしい。頭が下がる思いだ。


「さて…」


誰もいない教室を見渡す。今朝は下駄箱に何も細工はされていなかった。人気のない廊下に出てみる。自分のロッカーを開けてみるが特に変化はなし。どっから手をつけたものかと思っていると、ふと廊下を歩いてくる一人の女生徒が目に入った。肩までの髪に規定よりほんの少し短いスカート。何の気なしに見ているとぱちっと目があった。
口が小さく三池と私の名前を呼んだ気がした。一瞬で視線を逸らされたかと思うと顔を背けるようにすれ違って、彼女は階段を降りていく。教室しかないこの階でどの教室にも入らずに階段を降りていくのは不自然だ。何か目的があったはずだけど。
そこまで考えてチラリと自分のロッカーをみやる。


「…いきなり当たりかな?」



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「いや髪型とスカート丈だけじゃ特定できるわけないでしょ」


「ですよねー」


クラスの女性陣は一様におんなじ様な反応だった。そりゃそうだ。私は転校生な上に委員も部活もやってないので驚くほど交友関係が狭い。そもそも積極的に友達を作るタイプじゃないのだ。


「なにか他に特徴思い出せない?」


「ていうかさ、黒尾のファンにちょっかい出されてるとか、なんで早く言わないの?」


「いきなり怪我してるし」


「もしかして前に体操着ないって言ってたのもそれ関連?」


思いの外、私の置かれている状況に憤ってくれているらしく山崎さんを筆頭にクラスの女子が味方であるのは心強かった。ちなみに、黒尾は教室に来て早々、女性陣から怪我させてんじゃねーよと八つ当たりに近い口撃を受けておとなしい。いや黒尾のせいでは…と仲裁はしたものの、だって芳乃はこいつのとばっちりでしょと身も蓋もないことを言われてしまい閉口せざるを得なかった。


「部活見に行ってみるのは?ファンならいるかも」


「たしかに」


山崎さんさすが。今日も可愛い。それなら多少絞れるかもと思い、すぐさま黒尾に部活を見に行くことを伝えた。



##



キュッ、キュッ、とシューズが床の上を軽快に動き回る。ボールは吸い付くように手から手へと繋がり、スパイクの音が重く体育館に響く。初めてちゃんと見たバレー部に、私はただただ圧倒されていた。
なにより黒尾が、研磨が機敏に動いてるのにびっくりだ。夜久さんは床スレスレでボールをこれでもかと拾うし、海くんも動きっぱなしだ。山本くんと福永くんは交代で休憩中らしく目が合うとペコリと頭を下げられた。

3年生は引退して少し人数が減っているらしいが、活気は十分だ。これがバレー部。
ぼけっと見ていると一緒に来てくれた山崎さんが私を小突く。


「芳乃ちゃん、ほらあの辺はバレー部のファンだよ、例の人いる?」


おっと、目的を見失ってた。言われた方に視線を向けるとそこそこの数の女子たちが体育館の入り口に溜まっていた。
私たちは許可をもらって体育館のニ階に上がらせてもらってるので、彼女たちが上を見なければ視線が合うことはない。


「…あ、あの人」


集まる女子の中に見覚えのある女生徒を見つけた。今朝見たばかりだからまだ記憶も鮮明だ。友達と連れ立って見に来てる中、1人だったのも余計に目に付いた原因かもしれない。
山崎さんにも見てもらうがどうやら知らない人らしい。同じ学年じゃない可能性もあるし、もう少し近くで探ってみるかとそうっと二階を離れ、一階に降りていく。


「あ、三池さんじゃん、来てたの?」


「おつかれさま、お邪魔してます」


降りたところでコートから出てきた夜久くんに声をかけられた。マネージャー希望ならもっと近くで見学してもいいのにと言われ、反応しにくい冗談に苦笑いする。タオルで汗を拭っていた夜久くんは私の怪我に気付くと指どしたの!?と大袈裟な反応を示した。大したことないよと誤魔化しつつ、例の女生徒のことをこそっと聞いてみる。


「ねぇ、夜久くん。あそこにいるセミロングの女の子見覚えある?」


「どれどれ…あぁ、確か3年の先輩じゃない?よく見かけるよ、いつも見てるだけだから話したことないけど」


夜久くんすごい…!めちゃくちゃ有力情報じゃん。思わずありがとう!と握手する。
夜久くんはえ、なんで、どういたしまして?と混乱気味だ。


「あの先輩がどうかしたの?」


「いや、ちょっと話がしたくて探してたの。名前とかはわかんないよね…?」


「えーさすがに名前までは…あ、でも引退した3年生が確か同じクラスって言ってたかも。聞いてみようか?」


「神様仏様夜久様…!まじでありがたいお願いしてもいい??」


「大袈裟だなぁ」


夜久くんのファインプレーに大喜びで連絡先を交換した。分かり次第連絡してくれるらしい。優しいかよ。山崎さんも来てよかったねぇと言ってくれて、二人ともいい子過ぎて泣きそうだ。
夜久くんは練習に戻るらしく、休憩の邪魔してごめんねと差し入れのスポドリを手渡して、体育館を後にした。

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