整理





『芳乃、クロとなんかあった?』


『あっ、…なんもないけど』


『嘘下手すぎ』


家でオンラインでゲームをしていると通話中の研磨がいきなりそんなことを言う。ゲーム中にあんまり関係ない会話しないのに珍しい。しかも内容がいきなり核心付いてくるからつい動揺して攻撃の回避をミスってしまった。慌てて退避と回復操作をしながらシラを切ってはみたけどあっさり見抜かれる。


『そんなに分かりやすい?』


『お昼一緒に食べた時、雰囲気おかしかった』


さすが幼馴染よく見てらっしゃる。研磨だから気付いたのか、それとも研磨以外にも察してる人はいるのかな…夜久あたりもクラス一緒だしなんか分かってそう。それで言うと山崎さんもかなぁ。なんか、急にしんどくなってきた。


『…黒尾は私のこと好きなのかなぁ』


『俺に聞かないでよ』


『ごめん、忘れて』


思わず口をついて出たぼやきは、研磨に一刀両断された。そりゃそうだ。
好きって思ってくれたんだよなぁ、きっと。じゃなきゃキスしてこないよなぁ。いつから?とか、なんならずっと絡んできてたのはアプローチだったの?とか、だとしたら私相当鈍いじゃんね?とかぐるぐるぐるぐる考えながら無心で攻撃する。敵が弱り始めて、逃げ出したところをマップを見ながら猛追する。あとちょっと。


『クロになんか言われたの?』


『言われたというか、なんというか…』


何があったかなんて説明するのも違うだろうと、なんとなく言葉を濁して、話の方向性を変えてみる。


『私、自分が恋愛に関わるなんて思ってもみなかったからさ』


『なんでそう思うの?』


『うーん、諸々の事情があって。あんまり詳しくは言いづらいんだけど』


『恋愛しちゃいけないの?』


『どうなんだろう、私の気持ち次第…なのかなぁ』


自分で恋バナを振っておきながら研磨の口から恋愛というワードが出てきたことにびっくりした。今日の研磨はやけに食い下がる。いつもならあ、そう、とか言いそうなのに。そんなに黒尾と私が気になるのかな。私の気持ち次第というのは、多分その通りで。たとえこの先がどうなろうと、今好きな人との恋愛を楽しむって、そうやって割り切ってしまえばいいだけの話だ。ただその人に本気になって、戻った世界でもその人に囚われ続けたらとか、私が急にいなくなった後にその人がどうなるのかとか。そんな不確定なことを考えて尻込みして避けてるだけなんだと思う。


『…芳乃にとってクロはただの友達?』


ストレートな質問に、面食らう。ふと、自分の置かれた状況と黒尾の立場ばかりが先に来て、私自身の気持ちをちゃんと整理してなかったことに気づく。私は実際黒尾をどう思ってるんだろう。大事な友達、という言葉はどうしてかあんまり合ってない気がした。弟がいたらあんな感じかも?いや、なんか違うんだよなぁ。研磨は大事な友達。夜久もそう。弟はむしろリエーフとか山本のがそんな感じあるよね。…じゃあ黒尾は?


『私にとって黒尾ってなんだろね…?』


『だから俺に聞かないでってば』


『ごめん』


淡々と返されて謝る。最後の一撃を華麗に決めて敵を倒した研磨が、無慈悲にゴリゴリと素材を回収していく。私も素材を取らないとと思うのに、画面の中のキャラクターはボーッと立ったままだった。







- 31 -


prev | next