傷の治し方
「……佐助さんって」
「なに?」
「何でそんなに優しいんですか」
ひとしきり泣いたせいで、頭が痛い。だるい体を佐助さんにあずけて唸るように呟いた。いくら私がこの世界での衣食住を提供してるって言ったって、代わりに今やほとんど毎回ご飯を作ってもらってる。来る前よりあちこちピカピカだし。それに何かと甲斐甲斐しく私の世話を焼いてくれる。
私としては代償とするには貰いすぎな気がしてならない。ご機嫌取り?なら、もっと卒無くこなすんじゃないのか。なんて言うか、過保護なお母さんそのものって感じ。……何でこんなに甘やかしてくれるんだろう。
「アキちゃんがいい子だから、助けてあげたくなるんだよねぇ」
まるで子供に向けたような言葉に、何故かムッとした。何がいい子だから、だ。
ひねくれてるし、口は悪い。もういいと冷めたフリをしながら、蓋を開けてみればしっかり春人と陽菜を憎んでた。こんな私のどこが。
「さすが。お母さんの鑑ですね」
拗ねた気分でつい、嫌味っぽく返してしまった。ああもう、これじゃあ、子供扱いされても文句言えないじゃないか。
私の態度に苦笑した佐助さんは、時にアキちゃん、とおもむろに口を開いた。
「色恋の傷は、色恋で癒すってのが世の常だけど」
告げられた言葉の意味を噛み砕くこと数秒。不穏な雲行きを察して佐助さんの胸からそろそろと起き上がる。距離を取ろうとしたが、しっかりと掴まれた腕のせいで離れられない。このパターン何度目?いい加減学習しようよ私。
ゆっくりと距離を詰める佐助さん。片側に寄った二人分の重みに、ソファがギシッと音を立てた。
「あ、あのっ……」
鼻先が触れ合うような距離。焦る私を見て、意地悪な顔をした佐助さんは一際艶やかに微笑む。
「本物のお母さんにも出来ない癒し方、してあげようか?」
くらりと眩暈がした。