急転直下
泣いたことがバレないように、暫く玄関の外で時間を潰してから家に入る。音を立てないようにゆっくりと玄関を開けると佐助さんが待っていた。廊下の電気が付いていないせいで、その表情は伺い知れない。
「っ、ただいま戻りました」
「……おかえり」
なんとなく気まずい空気を感じながら、リビングにむかう。飲みかけのお酒が置いてあって、佐助さんも今の今まで起きていたのだと知った。
並んでソファに座るも、会話はない。水を飲みながら、隣に座る佐助さんを伺う。夜風に当たったせいか、酔いは醒めていた。
全部言おう、戻れることも、私の気持ちも。全部伝えた上で、どんな返答でも受け入れないと。
「佐助さん、お話があります」
佐助さんの方に向き直って、覚悟を決める。
「聞きたくない」
「え、?」
出鼻をくじく様に発せられた言葉に、思わず戸惑った声がもれる。次の瞬間、視界が反転した。
手にしていたグラスが床に落ちて、水がラグを濡らす。肩を押されてソファに倒れ込み、唐突に見えた天井と佐助さんの顔。
逃がさないとばかりに捕まれた左右の手は頭の上で抑え付けられる。手首に佐助さんの指がくい込んで、痛みに眉が寄った。
…え、なんで私押し倒されてるの?
「佐助、さん…?」
「……俺様ばっかり我慢して...馬鹿みたい……最初からこうしてればよかった」
唇が触れそうほど近い距離で見つめられ、囁かれる。にっこりと口元は弧を描いているのに、その目は欠片も笑っていない。いつか見た威圧的な佐助さんだ。いつかと違うのは、今度はそれが私に向けられているということ。
状況について行けず、ぽかんと見つめ返すと、次の瞬間には唇を塞がれていた。