独りよがり




(佐助視点)


「……っ...」


詰めた息を吐いて、意識を失った彼女の上から身を離した。閉じられた目尻からは未だ乾いていない涙の筋が流れている。
先程まで己を映していた瞳には混乱と羞恥と恐怖とが綯交ぜになっていた。震える華奢な身体。もうやめてと懇願する声を無視して。


俺は、彼女を蹂躙した。



アキちゃんが倒れて、涙したあの日から、彼女の態度が急によそよそしくなった。何かを隠しているのは明白で、しかもそれは間違いなく自分が関係しているのだろう。
けれど、ぎこちない会話をして、目線を逸らす様子にどうしてもこちらから聞く気にはなれなくて。もやもやとした気持ちを抱えたまま独り、夜を過ごしていた。


こんな時間まで何も言わずに、とどこか責める気持ちを抱きながら、いつの間にこんなに過保護になったんだと自嘲する。


ふと、昼頃に出掛けたはずの彼女の声が聞こえて、窓から外を覗いた。そこには、いつかの雨の日に見た男とアキちゃんの姿が。
他の男に気を許して笑う彼女を、自分以外の男に抱き締められた彼女を見た瞬間に。自分の中に重く濁った闇が広がるのが分かった。



ーー嗚呼、彼女は、永遠に手に入らない存在なのだ。



所詮己の身はこの世には存在しない異物。彼女にとってはあの男といるのが日常。そう理解すると同時に、猛り狂うような嫉妬の念が込み上げた。


彼女の口から、他の男の話など聞きたくもない。怒りにも似た衝動に任せて組み敷いてしまえば、それまでの理性は呆気なく崩れた。


淡く色付く唇を味わって、柔らかな肌に直に触れた途端、堰を切ったように抑えてた感情が溢れだす。
女の鳴かせ方なら知っていたし、自信もあった。
無理矢理与えられる快楽に戸惑い、怯えながらも抗えない彼女の姿に、興奮で脳が焼き切れそうになる。
態と彼女を傷付けるような言葉で、態度で。自分の存在を彼女に刻み付けた。自分の快楽だけを追って、ひたすら衝動のままに、何度も、何度も。



我に返った時には、彼女の全てを奪った後だった。冷静になった途端、足元が崩れていくような絶望感に襲われる。

意識を飛ばした彼女が次に目を開く時、もう二度と自分へ微笑みかけることは無いだろう。自身を犯した相手として、侮蔑と拒絶が向けられるのだろう。
もう二度と、彼女の優しい眼差しが自分へ向くことはない。



震える手で、彼女を抱え、ベッドに寝かせる。こんなに細い身体を力任せに抱いたことを思うと、自分を殺したくなった。眉を寄せて苦しげに眠る彼女をぼうっと見つめる。足元には己の意思とは関係なくじわりじわりと闇が広がっていく。誘われるように闇に溶けて、意識を閉じた。


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