上田の地へ
「大丈夫ですか、佐助さん」
「俺様やっぱりこれ苦手かも...」
時速100キロの電車は追ってこれるくせに、時速40キロの車で酔うってなんかもうよくわからない。高速乗ったりもしたし、そもそも自分で走るのとはわけが違うんだろうけど。
車酔いでダウンして、よろよろと頼りない佐助さんを従えて、やってきました信州上田。正直私は欠片もわかんないんだけど、一応真田さんがいたお城らしい。
佐助さんの世界では、ここで働いてたってことだよね?
ネットの情報を頼りに来てみたはいいけど...。
「なんかあれですね。私としてはああ、城跡だねって思うんですけど...」
佐助さんからしてみたら、この城跡っていい気しないんじゃないかなとかって今更思う。ていうか一部は 高校になってるんだね。すごいね。
「うーん、確かに造りは似てるけど、周りの風景も相まって俺様んとこの城とはもはや別物って感じだね」
外に出て元気を取り戻した佐助さんは、苦笑いを浮かべている。最初にここに来てたら絶望して死んでたかも、と危ういことまで言いだす始末だ。まぁ、初めて逢った時、甲斐に行きたいって言ってたもんな。確かに城があるはずの場所が城跡としてしか残ってなかったら絶望するかもしれない。
「この輪っかが、家紋ですか?」
「これは六文銭だよ」
「六文銭...」
ああ、お金か。何のマークかと思った。え、家紋がお金なの?真田家はお金大好き?と聞けば、六文銭は三途の川の渡し賃でね...と、訂正が入った。
佐助さんが詳しいのをいいことに、あれは何、これは何と、目に付いたものを片っ端から聞いていく。
いままでお城ってただただ大きくて凄いなぁってくらいしか感想持たなかったけど、解説があるとなかなか楽しい。ていうか、佐助さんと回れてるから楽しいんだろうな。
「もう昼過ぎですし、一旦宿に行きますか?荷物重いですよね」
「いや別に荷物は気にしなくていいけど」
いやいや、荷物持ってもらっちゃってるの本当に申し訳ないんです。自分の分くらい自分で持つって言ってるのに、頑なに持たせてくれないのだ。こうなったら一旦宿にチェックインして、荷物を全部置いてしまおう。
上田城の散策を一通り終えて、宿に向かう。驚くなかれ今回のお宿、部屋に露天風呂がついてます!凄い!佐助さんの身体の傷痕は、ぱっと見カタギじゃないから、普通の人がみたらびっくりしちゃうかなっていう配慮も兼ねて、部屋にお風呂がついてるところを選んだのだ。勿論大浴場の方にも露天風呂があるらしい。少なくとも2回は入りたい...温泉大好きな私からしてみたら本当に嬉しい。そしてさらにびっくりなのはこの宿代が佐助さん持ちだということ。
例のアルバイトで貯めたお金には一切手をつけてなかったらしい。生活の足しにしてほしいと言われたのだ けど、せっかくだから宿代に使おうと提案してみたのだ。
チェックインして案内された部屋はゆったり広々とした和室だった。つくなり、荷物の整理もそこそこに部屋の露天風呂を見に行く。
「わぁー!凄い!景色もいいですね」
「本当、 旅籠も進化してるんだね」
宿の横には川が流れていて、ザァアという音以外には喧騒は何も聞こえない。今はもう紅葉の見頃は過ぎて寒くなってしまったけど、秋に来たら相当綺麗な景色を拝めそうだ。
「露天風呂何回入れるかなぁ」
「なんなら一緒に入る?」
他意なく言った言葉に、にやりと笑みを深めた佐助さんをみて、顔が熱くなった。
「!?、な、に言ってるんですか」
今更だけど二人で一部屋ってことは、夜も一緒ってことだ。いや、待って。そういえば、そうか。...えええ。途端にぎこちなくなる私に、佐助さんは苦笑して頭を撫でてくる。
「まぁまぁ、そう身構えなくても。取って食いはしないから...たぶん」
「全然安心できないんですけど」
「ほら、お茶しに行かないの?行きたい店もあるんでしょ?」
話題を変えるように促されて、考えるのをやめた。今は普通に楽しもう。