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 シュミレーション終了の合図を見て私はロックオンに駆け寄る。彼はヘルメットを片手に、返事をするように手を振った。



「お疲れ様」
「ああ、名前も」
「私は何もしてないよ」



 二人で並んで歩く姿は何時もの事だ。シュミレーションの話だとか、今日の御飯だとかよくある「日常会話」というものを楽しみながら一旦部屋の前で分かれる。もちろん、私は作業着から、ロックオンはパイロットスーツから着替えるためである。
 再び顔を合わせたのは食堂で、私が飲み物を手にした時だった。



「遅かったね」
「まあな」



 ロックオンの髪が若干濡れていることからシャワーでも浴びたのだろう。彼も俺と同じく飲み物を手にし、一気にそれを飲み込んだ。
 そこで気が付いたのだが、ロックオン自身になにか違和感を感じる。


「んー・・・・、ちょっと動かないで」
「は?」


 二歩下がって彼を見つめる。
 髪型は変わっていない、服装も同じだ。でも、何かが違うような気がする。


「どうかしたか?」
「いや別に・・・ちょっと気になって・・・・!それだっ」


 ロックオンが空になったコップを置いた動作で気が付いた。
 今、彼はいつもしているグローブをしていない。
 ロックオンも俺の言いたいことに気が付いたのか、なんだと声を漏らし納得していた。


「今日はしていないんだね」
「さっきまでシャワー浴びてたしな」


 ポケットからグローブを取り出すロックオン。
 彼の手は指が長く、一見綺麗に見えるがスナイパー特有の傷やタコなどが見受けられた。だが、それを含め俺は綺麗だと思う。


「ねえ、触ってもいい?」
「ん?いいぜ」


 ありがとう、と返しそっと彼の手に触れる。
 見た目以上に綺麗な手は俺の手に馴染むようで、ずっと触っていたいと思った。


「ありがとう」
「じゃあ、次は俺の番だな」
「へ?」


 ロックオンはすくい上げるように俺の手を取るとその指に口づけをした。
 驚きのあまりに手を引くも、手首を彼に捕まれてしまい逃げる事ができない。


「散々煽ったんだ。逃げんなよ」


 すがすがしく微笑んだ彼。その腹の内は誰も知らない。
 もちろん、俺さえも。


title:tenuto

 
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