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立派な執務室の扉を叩く名前は、部屋内から返事が聞こえたことを確認してから中に入る。
「失礼しますグレン中佐」
「おー、名前か。珍しいな」
グレンは仕事中だったのか手を止めてペンを置き、名前を見て笑みを浮かべる。
名前は去年まではグレン直属の部下であったが、昇進を受けてグレンの元を離れることになった。グレン自身、名前を気に入っており、手放したことを後悔しているのだ。
「どうだ、調子は?」
「特に問題ありません」
「そうか、で何用だ」
グレンは腕を組み、名前の顔をじっと見つめる。名前は手元にある書類に目を通し、告げる。
「渋谷警備兵による報告書です。主に百夜優一朗特別二等兵についてですが」
名前はそう言いチラリとグレンの表情を伺う。グレンはやっぱりか、と言った表情で名前の話を聞いており、続けろと促した。
「ヨハネの四騎士と遭遇した際、分隊長の命令を無視および単独行動をしたとのことです。また、チームワークが皆無という報告を受けております。詳しくはご自分で確認してください」
名前は書類をグレンのデスクの上に置いた。しかし、グレンはその書類に目を向けることはなく、どこからか便箋を二枚取り出した。それの一枚に何か書き込んでから名前に渡した。
「優には謹慎っつーことでここに転校させとけ。チームワークのできない奴はいらん」
名前の受け取った紙には優一朗の名前と渋谷第二高校の文字が書いてあり、それを確認してから名前はわかりましたとグレンに一礼する。
マントを翻しグレンに背を向け、執務室を退出しようとした。
「まて」
しかし、ドアノブを握った時に背後から声がかかり名前の動きが止まった。振り返ると、いつの間にか立ち上がったグレンが封筒を名前の前に出した。多分、もう一枚の紙が入っているのだろう。
「これをシノアに渡してくれ」
「柊シノア様にですね。分かりましっ、た!?」
名前が受け取ろうと手を伸ばした瞬間、封筒が持ち上げられ空振りし、バランスを崩した名前。それを見たグレンは笑みを浮かべ、彼女の腰に腕を回し引き寄せる。
必然的に密着する2人。名前は文句ありげにグレンを睨みつけるが、思った以上に顔が近いことに気がつき、自然と顔に熱が集まる。
「なにするんですか!危ないですよ!」
グレンの従者である、小百合や時雨なら喜びそうな状況であるが、名前にとっては羞恥でしかなかった。
らしくもなく声を荒げる名前。しかし、グレンは名前を離そうとはしなかった。
「もう一度俺の下につく気はないか・・・名前」
目をそらさずに、真剣な表情で告げるグレン。心なしか、腰に回る腕の力が強くなったように名前は感じた。
「・・・何のために昇進を受けたと思ってるんですか」
名前はグレンの腕に手を添え答えた。お互いに目を離すことはない。沈黙は続くが、それを破ったのはグレンであった。
「悪かったな」
グレンは名残惜しそうに名前を離す。
離れた名前は俯きがちに、グレンに言う。
「私はあなたの下じゃなくて、隣に立ちたいんです・・・・ってことで待っててくださいね!」
名前はそう言って、グレンの手から素早くシノア宛の封筒を抜き取ると失礼しましたと早々に執務室を出て行った。
残されたグレンは前髪をかきあげ、声を上げて笑った。
「待っててやるよ」
嬉しそうに、扉を見つめるグレンであった。
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