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2月14日バレンタインデー。
アーカイブを通して知った文化だ。もっとも、商業目的にとある会社が企んだものであったため、文化と言うには少し違っている気がする。
先日、真矢に総士と付き合っていることがバレてしまったせいなのか、真矢が積極的にチョコレートを渡すことを進めてきた。断る理由もなく、私は押し切られる形でチョコレート製作に打ち込んだ。
それで当日。アポをとることもなく総士の部屋を訪ねる。
ノックをしてみるが返事はなく、ロックがかかっていなかったため勝手に中に入る。
中に入ると休むことなくデータに目を通し続ける総士の背中が見えた。呆れるように溜息を吐いて彼の肩を軽く叩く。
「総士、お疲れさま。少し休憩にしない?」
「っ!名前先輩、いつのまに・・・・」
「私はちゃんとノックしたよ。それよりも・・・隈できてる。何日寝てないのさ、もう。体壊すよ」
「僕は別に平気ですが・・・・」
私はそう言ってテーブルの席に腰を下ろす。総士も軽くキーボードを叩いてから、私と向かい会うように座りなおした。
総士はバキバキと音をたてながら背伸びをして、静かに息を吐いた。ほんとにお疲れだな、と思いつつ私は持ってきたチョコレートの箱を総士に渡した。
「バレンタインだって。真矢が作りなって」
「珍しいですね。先輩がこういうの作るのは」
「まあ、初めてだしねお菓子は」
「・・・・・食べれますか?」
「失礼だな」
私は基本的に食べるの専門である。自分で作る料理なんてものは、食べれればいい、まずくなければいい、ととても大ざっぽなものである。
総士はそんな私の料理を知っているから、少し不安げに箱を開けた。
「これはなんですか?」
「オランジェットって言うらしい。オレンジを砂糖で煮詰めてチョコレートにつけたもの。ちなみに、オレンジの提供者は一騎ね」
綺麗に並べたチョコレート、見た目だけは気を使ったからおいしそうに見える。
珍しいものを見るように総士は一切れ手にとり、口に含んだ。
「甘いでしょ?」
「・・・そうですね。ですが、少し甘すぎます」
「まあ、脳には糖分って言うしさ」
甘いものが特別得意という訳でもない総士だが、気に入ったのかまた一切れと手に取った。
やはり、一騎に相談したのはあたりだった。甘さ控えめで、柑橘類の酸味を生かしたチョコレートを提案してきたのは一騎である。
黙々とチョコを口にする総士見て私は自然と頬が緩んでしまう。お腹でも減っているのなら、何かご飯でも作ってあげようかな。
「何か?」
「いや、あとで夕飯でも持ってきてあげようと思ってね」
「そうですか。では食堂のをお願いします」
「いやいや、そこは私の手作りが良いって言うところよ」
総士は冗談ですと珍しく声に出して笑う。いつもの難しい顔をしている彼も好きだが、やはり笑っているのが一番だと思う。
総士は時計をみて、夕飯は一緒に食堂に行きましょうと私を誘い立ち上がる。手調理をふるまえないことを残念に思いながら彼の誘いに乗り、一緒に部屋を出た。
自販機の前を通りすぎたあたりで彼は思い出したように呟く。
「一か月後、期待しておいてください」
「うん。期待してるね」
軽く返事をして、彼の手をそっと握る。
恥ずかしそうに顔を背ける総士だが、そっと握り返してくれたことに思わず笑みがこぼれる。
来年も一緒に過ごせたらいいな、と思いながら食堂を目指した。
2016.0214
2022.0708 加筆修正
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