log

 街中は何処かうきうきとした雰囲気であった。
 2月14日の聖バレンタインデーである今日、男女は愛を謳い、誓い、そして確かめ合う。とある東国ではチョコレートを渡す風習があるとかないとか。その影響でか、職場でも仄かにチョコレートの香りがして辟易する。



「で、大佐。その量は一体・・・・?」
「聞かんでくれ名前。不本意だ、私は遠慮したのだが・・・・」
「押し切られたと」
「・・・・・・・・すまない」



 そう申し訳なさそうに言うロイ・マスタング大佐。彼のデスクの上には溢れんばかりのプレゼントの山が形成されていた。私は午前中は外での活動があったため、昼休憩の今初めてそれを見た。他の人たちは休憩に行っているのか誰もいない。
 途中ですれ違ったホークアイ中尉はすごい顔で歩いていたが、これが原因か。
 女性って怖いななんて思う一方、それを受け取る大佐に呆れてしまった。一応、私と大佐は恋人同士。嫉妬しない訳ではないが、ここまで来ると呆れの方が勝って、少し同情する点もある。



「別に謝らなくても、私は気にしてませんし」
「それはそれでアレだな」
「そうですか?一々気にしてられないと思うんですよね、大佐モテますし。はい、午前の分です。これくらいは仕事してください」



 書類をまとめ大佐に渡す。大佐は溜息を吐くとデスクの上を簡単にだが片づけ、書類を置いた。そして、また違ったプレゼントを何処からかデスクの上に置いた。



「少しくらい嫉妬でもしたらどうだい?これは私から名前に」
「ありがとうございます。あの、私は何も用意してないんで期待しないでください」
「そうだろうと思っていたさ。帰りにディナーでも一緒に行こうか」
「あ、いいですねそれ」



 大佐に断りを入れてプレゼントを開ける。中はケーキのようで、だがクリーム等は無い。私はこのお菓子を見たことがなかった。



「これなんですか?ケーキみたいですが・・・・」
「ガトーショコラというチョコレートケーキの一種だ」
「へえ。いただきますね」



 備え付けてあったフォークを手に取り一口食べる。甘いチョコレートの味が舌の上に広がった。おいしい。そう思ったのが顔に出ていたのか大佐は私を見ながら微笑んでいた。



「なにか、言いたいことでも?」
「いや、かわいいなと」
「・・・また、そう言う事を」



 恥ずかしくなり、照れ隠しにまた一口食べる。
 すると大佐は不意に私に接近してくる。何か問題でもあったのかと、ぼーっと大佐を見ていたら、大佐は私の口元に手を伸ばした。



「ついてるぞ」
「え、はい。ありがとうございます」
「・・・甘いな」



 そう言って欠片を食べた大佐。そして何か思いついたようにガトーショコラを見つめた。なんか嫌な予感が胸をよぎった。



「チョコレートプレイというのも・・・・」
「やりませんからね!」



 私は立ち上がり大佐を睨み付ける。



「ははっ、冗談さ」
「言っていい冗談と悪い冗談があります!」
「まあ、」



 大佐は満面の笑みで私を見つめ、口を開いた。



「ディナーの後は・・・と言う事で、楽しみにしておいてくれたまえ」



 そう言って大佐の指先が私の唇をなぞり、触れるだけのキスをする。
 真っ赤になった顔を片手で隠しながら、彼に文句を言おうとするとすでに大佐は部屋から出て行っており、残されたのは恥ずかしさを抱く私と、大きな書類の山だけだった。 



2016.0214
2022.0708 加筆修正

 
novel-top
top