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※一騎出てこない
いらっしゃいませ、の声に軽く挨拶をしてからいつも座る窓際のカウンターに腰を下ろす。喫茶楽園は一騎くんが此処でのバイトを始めてから一気に人気になった。
今日も昼時前だがすでに人が入っている。
「名前ちゃん、毎日来るよね・・・ねっ、もしかしてさ!」
「真矢ちゃん・・・」
お冷をテーブルに置きながら声をかけてくる真矢ちゃん。彼女はニヤニヤと頬を緩ませながら尋ねてきたため、私は何か悪い予感を抱いた。
「・・・・ごめんね、今日一騎くん検査でいないんだ」
「え!?、あっ、違うの、」
そう言われて私は大きな声を上げてしまった。
店の中に居た人らは何事かと私を見る。真矢ちゃん、と咎めるように見つめるとごめんと悪いと思っていない顔でキッチンの方に戻った。
焦りを隠すように水を口に含むと、真矢ちゃんにランチを頼んで頬杖をつく。
「もうっ」
私は一騎くんが好き。いつから好きかと聞かれると、分からないと答えるしかない。いつの間にか好きだったのだから。
でも、この気持ちを伝える気は全くない。ただ思っているだけで十分なんだ。
しかし、誤算があった。真矢ちゃんにばれてしまったのだ。正直私は面倒なことが嫌いなので、真矢ちゃんにはそっとしておいてほしいと伝えたのだ。ところがどっこい、真矢ちゃんは私を一騎くんに会わせようとする。
「はい、ランチ」
「ありがとう」
真矢ちゃんはランチを私に渡すと小さく囁いた。
「明日はいるから明日もおいでよ」
「・・・余計なお世話だよ」
口ではそう言うも、多分私は明日も此処に来るだろう。
title:tenuto
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