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 朝日がカーテンの隙間から日光が顔を照らす。眩しさに目を覚ますと体を起こし、窓越しに外を見つめる。日はもう上がっており、町を照らしていた。
 私はサイドテーブルに置いてある、昨日嫌々ながら貰った銀時計を手にして、時間を確認した。そして、もう一度外を見て頭をかきながら溜息を吐いた。


「さすがに寝すぎた」


 銀時計をベッドに投げ、立ち上がり着替え始める。一通り身だしなみを整え、冷蔵庫から水を取り出して一気に飲む。
 口元から伝う水を拭い、シンクにコップの残りを捨て上着を着る。そして、先ほどの銀時計を思い出したように懐に入れて靴を履く。
 家の鍵を閉め、私はタッカー氏宅を目指して歩き始める。しかし徒歩で行こうと思うと距離がある。面倒だとため息をついた時、後ろから声がかけられた。


「おーい、名前少佐!よかった、乗ってください」


 声をかけたのは車に乗ったジャンで、後ろのドアを指で差しながら煙草の煙をふかした。
 私は遠慮なく車に乗り込み、一息つき足を組んだ。


「ありがとうございます。この距離を歩かなくてすみました」
「え、タッカーさんのとこまで歩くつもりだったんすか?・・・・意外っすね」
「そうですか?私も軍人ですのでこれくらい歩けますけど、まあ面倒だと思っていたのでありがとうございます」


 面倒ごとは嫌いなので、本当にジャンに感謝していた。ジャンは煙草の灰を落とすと笑い、私の瞳を見る。


「そういや昼飯食べました?」
「え?いや、まだですけど・・・」
「じゃあ、一緒にどうっすか?」


 特に急ぎではなかったので、いいですよと言うとジャンは雰囲気のいいテラスのあるカフェに連れて行った。
 そこはジャンの行きつけの店のようで、店員がにこやかに声をかけていた。
 私は目立たないようにジャンの後ろをひっそりとついていく。奥の壁でそこから見えにくくなっている席に案内され、軽いランチメニューを頼んだ。


「お洒落なところですね」
「いやー、彼女と何回か来ているんですけどなかなか続かなくてですね・・・・・ははは」


 頬をかきながらジャンは言う。
 何と返していいのか分からずとりあえず、いい出会いがありますよと慰めておいた。
 しばらくすると可愛いウエイターさんがランチを運んできた。そして、彼女が去るとジャンはそういやと話を切り出した。


「昨日大佐と何かありました?」
「あ、いや特に」
「何もなかったんですか?」


 ジャンは面白そうに私の顔を見つめている。
 何を期待しているのか、と小さくため息を吐く。


「ただ、久しぶりに顔を合わせたので食事しただけですよ」
「本当にそれだけですか?」
「何が言いたいんです?」


 私は確かめるかのようにジャンに聞き返した。ジャンはにやにやと窺うように私の顔を覗き込み、ほぼ初めて目が合うことに少し驚き体を引く。
 ジャンは私から顔を離し、椅子に深く座りなおした。
 私はジャンの顔をまじまじと見ながらランチセットのアイスコーヒーを口にする。


「久しぶりに会った男女がディナーを共にして本当に何もなかったんですか・・・!?」
「・・・ああ、なるほど。少尉は大佐と私がそういう関係であると思ったんですね」


 マスタング大佐とは実際昨日食事をするまで、全くと言っていいほどまともに話したことがなかった。
 食事に誘われた事自体珍しく、また比較的親しくされたことも驚いた。


「大佐とまともに話したのは昨日が初めてですよ。その前に話したのは6年近く前です」
「そんなに前なんですね」


 6年前と聞き、少尉は察したらしくそれ以上は聞いてこなかった。
 食事を終え、昨日と同様にタッカー氏の元へ行く。車内での会話は少なかったが、心地のよい時が過ぎて行った。
 タッカー氏の家に着くと、ジャンはまた迎えに組ますと言うと車に乗り込み去って行った。
 私はベルを鳴らすと家の中からではなく庭の方から返事が聞こえた。どうやら、ニーナと一緒に庭で遊んでいるようだ。少し微笑みながら庭に向かう。
 庭にはアレキサンダーとじゃれるエドワードとニーナと遊ぶアルフォンスが居た。2人は私を見つけると声を荒げた。


「少佐!やっと来たな!」
「約束の時間はとっくに過ぎてますよ!」
「あー、すみません。寝てました」


 私は、悪気はなかったと2人に返答した。エドワードは少し不機嫌そうであったが、アルフォンスはそこまで気にしているようではなかった。


「お姉ちゃんも一緒に遊ぼう?」


 いつの間にかニーナは私のコートの裾引いており、少し寂しそうに話しかけた。ニーナは期待を込めた目で訴えかけているようにじっと目を見つめてくる。私は少し間をおいてから、溜息を吐いた。


「仕方ないですね」


 そういうと、ニーナは嬉しそうに口角を上げて喜んだ。


 
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