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「・・・・・・・寝すぎた・・・」



 名前が目を覚ますと窓の外はオレンジ色で、教室には誰一人として残っていなかった。



「5コマ目の記憶はあるから・・・4時間も寝ちゃってたとか・・・4時間で違うことできたのに・・・」



 ぶつぶつと自分の失態を嘆く名前。席が窓際ということもあってか、日の暖かさと午後の眠気に勝てず寝てしまった。まあ、名前の自業自得であっただけなのだが。
 名前は机に下げてあった鞄を手に取り、帰るため下駄箱を目指して教室を後にした。

 その途中の階段の踊り場でクラスメイトの桃矢が後輩らしき少女と一緒にいるところを目撃してしまった名前。条件反射で隠れてしまったが、今更出ていくにも行けず立ち去るのを待っていた。そして、数分すると少女が何かを桃矢に渡して下に降りて行った。名前はそれを確認してから隠れるのをやめて桃矢の前に行った。



「モテモテだねー木之本君」
「苗字!見てたのか」
「まーね。で、何もらったの?」



 名前は桃矢が持っている袋を指差しながらそう言った。よく見ると、南瓜やお化けといったものがプリントされているのを見て名前は思い出した。



「ああ、今日はハロウィンか。・・・ハロウィンに何かあげる習慣ってあったっけ?」
「いや、ないと思うぞ」



 桃矢は困ったようにそう答えた。名前はいいこと思いついた、と小さく口に出すと桃矢に満面の笑みで『トリック・オア・トリート』と言った。
 桃矢は今言うかよ、と心の中で思ったが口には出さずに先ほどもらっていた袋を開け、中からクッキー一枚を取り出した。



「口あけろ」
「それ、もらったやつじゃん。いいの?」
「いいんだよ」
「はいはい」



 名前は口を開けると桃矢はクッキーを食べさせた。名前は意外とおいしいと思いながらそのクッキーを食べた。
 桃矢はその様子を見て何か思いついたのか意味ありげな笑顔を名前に向けた。



「トリック・オア・トリート」
「え、ちょっと待って!・・・・・あった」



 突然桃矢がそういったもので、名前は焦りながらも鞄から小さなチョコレートの包みを取り出した。はい、と言って桃矢に渡そうとしたが桃矢はそうじゃないと言った。



「俺がやったようにくれよ」
「・・・マジで?」
「マジだ」



 名前は面倒臭いと言いつつも包みを開け、桃矢の口にそれを運んだ。そして、手を引こうとしたら桃矢は手首をつかみそれを阻止し、名前の指に少しついたチョコを舐めた。
 名前は驚いて彼の手を叩き落とし、手を引っ込めた。



「ななななな、なにしてんの!!」
「なにって、舐めただけだろ」
「もう、なんなの・・・」



 名前は顔を赤くしながら桃矢に舐められた指をハンカチで丁寧に拭いた。そして、桃矢と目を合わせずにじゃあねと言って急いで階段を下りて行った。



「・・・・これで、少しでも意識してくれよな」



 桃矢の独り言は誰もいない階段に響いた。


2014.1031
2022.0708 加筆修正

 
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