キャイン――という声と共に、ドサッという鈍い音が聞こえた。
私に触れてたものがなくなり、軽くなった身体を起こして薄目に見ると、二つの物体が衝突していた。
怖い。
早く逃げなきゃ、ここから。
そう思うのに…痛む腕から血が流れて、恐怖が抜けないからなのか身体が地面に張り付いてるかのように動けない。
霞んできた目に映るのは、さっきの獣ともう一人…人間だった。
獣ではない事に少し安心したものの、何だか身体が熱くなってきて息苦しい。
ゴロンと目の前に獣が転がってくる。
さっきまでの強気な目が弱くなって、弱々しくなってる。
それなのに、私と目が合うと、自分よりも弱いものを見つけたからか、向きを変えて牙を向けた。
「…たすけてッ……」
「弱いな、人間は」
さっきまで遠くに立っていたその人が、いつの間にか近づいていて、その獣に持っていたナイフでトドメを刺した。
こんな光景、人生で見た事もない。
生臭い臭いに吐き気がする。
月の光に逆光して顔はよく見えなかったけど、「雑魚は散れ」という冷たい声が頭に響いた。
「…チッ、汚れた」
「ハァ…ハァ…ありが、と……」
身体を起こしたはずなのに、力が入らなくなって地面に突っ伏した。
さっきよりも視界が狭い。
腕の痛みよりも、身体が熱くて怠い。
私、どうしちゃったんだろう。
「チッ…面倒なことになったな……おい、人間!聞こえるか?」
「…熱い…からだ……たすけ、て…」
「雑魚が!知恵だけつけやがって!」
ふわりと身体が浮いた感覚がした。
だけど、目を開けることももう出来なくて、身体に力が入らない。
ただ、身体が焼けるように熱くて傷が痛くて…―――それなのに、
「…安心しろ。オレが助けてやる」
耳元で何度も囁かれたこの言葉に、身体が軽くなっていったんだ。