蘇ったのは断片的な記憶だけ。
何故私のアパートを知っていたのか分からないけど、彼に運ばれて部屋まで来たこと。
腕の怪我を見るためなのか、服を脱がされたこと。
意識が朦朧とする私を組敷き、身体を伝う血を舐めとり、傷口に唇で触れられたこと。
身体が異常に、熱かったこと。
裸の彼が私を抱きしめてくれたおかげで、その熱さが和らいだこと。
その後は…――――分からない。
「オレ、言った?名前」
「分からない…けど、少ししか思い出せない」
「忘れろ。思い出さない方がいいこともあるしな」
「どういう、事?」
「怖かったんだろ?そんなの、思い出す必要ないだろ…もう、忘れろ」
そう言って、また顔を近づけて今度は私の首元に顔を埋めた。
生温い舌がツーっと身体を這っていく。
また身体が痺れて、口から吐息が漏れる。
ダメだ、流される。
そもそもこうして裸でいる状況がオカシイ!
「やめ……は、離れろー!!」
「イテ!」
思いっきり蹴り上げた足が、お腹にヒットして私から降りた彼。
起きたときよりも暗くなった外から、月明かりが射し込んでいて、長い時間寝ていたんだとようやく気がついた。
「何すんだよ…たくっ」
私の命の恩人である彼、ユウセイは…髪の毛をポリポリ掻きながらベッドから立ち上がる。
シュルっと私の顔の前を横切ったものに息が止まりそうになった。
何事もなかったかのように、ズボン履いてるけど。
何事もなかったかのように、頭触ってるけど。
「え、あなた……何、ソレ…」
人間だと疑わなかった。
だけど、聞いたことがある――――そういう存在がいるってこと。
どういう姿なのかは知らなかったけど。
頭から生えて立っている耳。
お尻から生えてる長い尻尾。
金色に光っている瞳。
人間のようで、まるで狼のようなその姿。
そう、彼は…――――半獣の人間だった。