ピンポーン、とチャイムが鳴った。
普段鳴ることのない音に、まさかと胸を押さえて玄関へと走った。
確認もせずにドアを開けると、
「よっ!久しぶり!」
「…慧ちゃん、か」
幼馴染みの、木村慧人だった。
慧人と私は同じ施設で育った。
あまり他の人と馴染めなかった私とは違って、誰とでも仲良くしていた慧人。
私とも当たり前に仲良くしてくれて、施設を出たあとも、こうしてたまに一緒に食事をしたり、近況を報告し合ったりしていた。
「ん?誰か来る予定だった?」
「ううん!何でもない!どうしたの急に」
「昇進祝い!」
「え?誰の?」
「俺のー!来週から、新しい部署!昇進てか引き抜き?俺の努力が認められたってこと。飯、まだでしょ?一緒に食べよ」
慣れた様子で部屋に入る慧人。
買ってきた食材を台所に置いてくれるけど、作るのは私。
家事全般苦手な慧人は、勝手に来るくせに私任せ。
普通なら怒りたくもなるけど、家族のように育ってきた私達にはお互いの家がまるで自分の家のようになっている。
そういう存在がいるって、心の支えになる。
「次はどんな仕事するの?」
「外敵対策…って、守秘義務守秘義務!」
「いや、今更。慧ちゃん今までわりと喋ってるよ私に」
ご飯を食べながらそんな会話。
所々抜けてる慧人が、よく警察官になれたもんだと感心する。
「危ないの?」
「まぁね。外敵…ってほとんど、奴らのことだし」
「…奴ら?」
「獣」
ドクンと胸が大きな音を立てる。
手が止まった私を不思議そうに見つめ、「ゆき乃?」と顔を覗き込んでくる慧人。
何か喋らなきゃ。
そう思っている私の脳裏には、あの日のユウセイが浮かんでいて、咄嗟に腕の押さえた。
傷なんてとっくに治ってる。
不思議とあの日から痛みすらない。
それなのに、傷痕がたまにジンと熱くなる。
「大丈夫?なんか変だよ」
「大丈夫よ!それより慧ちゃん…危ないのは心配だよ」
「平気!っていうより、自分で志願したんだ。…やっとだよ」
「え?」
最後聞き取れなくてもう一度聞いたけど、「食べよ食べよ」とはぐらかされてしまった。
いつも喋るときも笑顔の慧人から、一瞬笑顔が消えたように見えた。
気のせいだったかな?