続・その愛に触れたなら02
任務を終えて帰った煉獄と、久々に一緒に食事をする事が出来た。
立て続けの任務だった事もあり、今夜指令が入ることは無いと言う。
煉獄と一緒に過ごせる事が嬉しくて、ゆき乃はいつもより品数多く食事を用意し、薪を多くし風呂も熱めに沸かした。
湯加減がちょうど良い、と満足気な煉獄を見て、幸せだなと心から思えた。
「うむ!食事も湯加減も最高だった!こんなにゆっくりと出来るのは久しぶりだな!」
「それは良かったです。疲れは取れましたか?」
「疲労なんぞゆき乃の顔を見たら忘れてしまうので心配無用だ!」
そんな筈はないと、心の中で思ったゆき乃だが、そんな風に言って貰えて胸がギュッと締まった。
自分も風呂に入り、寝支度を整えて寝室に行けば、煉獄が布団を敷いてくれていて、隊服ではなく寝間着の浴衣姿の煉獄が本を読みながら涼んでいた。
まだ数回しか見たことないその姿は、いつもゆき乃をドキドキさせていた。
そんな事を知らない煉獄は、「ゆき乃もこちらに来い!涼しいぞ」と自分の隣をポンと叩く。
煉獄の隣にゆき乃が正座をして座ると、煉獄の瞳が真っ直ぐ彼女に向けられた。
ドキリと胸が鳴り、途端に恥ずかしくなったゆき乃は意識を別に持っていこうと、「お茶でも入れましょうか!」と立ち上がろうとした。
でも、咄嗟に煉獄がゆき乃の手を掴みそれを止める。
「茶はよい。ここに座るといい」
腕を引かれた勢いでより近く、煉獄の体が触れる距離に座ることになったゆき乃は、先程よりも顔が紅くなっていた。
触れた部分から感じる煉獄の体温や、耳元に掠める吐息もすべて、ゆき乃の鼓動を高鳴らせる。
耳まで熱くなっていたゆき乃がそれを隠すように煉獄の名を囁くと、「何だ?」と普段よりも少し柔らかな声がした。
「いえ、何も…」
「こうしてゆき乃と過ごせる時間がこの上なく幸せだ。任務に出ている時もゆき乃の事を思い出さない日はない。本当に俺は、幸せな男だ」
肩を抱く腕に力が入り、煉獄の胸元にゆき乃の体が密着する。
体を通して伝わる鼓動が早いことに気づいたゆき乃が顔を上げると、月夜を見ていた煉獄の視線が降りてきて、少し照れるように目を細めて微笑んだ。
「私も、とても幸せでごさいます。幸せ過ぎて…いえ、何でもありません」
「思ったことは言ってくれ。不安に思うことがあるならそれを俺に分ければいい」
「……怖いと、ふとした時に思ってしまいます。杏寿郎様との生活が不意に失われるような事があったらと、一人の時に考えてしまいます。勿論、杏寿郎様のとこを信じているのですが……すみません、このような事を」
「謝る必要などない!ゆき乃がそう思うのは当然のことだ。ただ忘れないで欲しい。俺はゆき乃を一人にはさせない。絶対に守る。それに……俺は幸せが当たり前だとは思わない。だからこそ、この一時の幸せを心から噛み締められるし、より愛おしく感じる。後悔のないように、想いを伝えようと思える」
「…杏寿郎様」
「愛している、ゆき乃…」
煉獄は言葉を繋ぎ終えると、ゆき乃の頬に手を添えてその柔らかな唇に自身のそれを重ねた。
静かな夜に、優しい衣擦れの音が響いた。