禁断の色香 02
その声がどういう意味をなすのか、瞬時に理解した。
まるで媚薬のような血鬼術があると、以前蝶屋敷に入院をした時に聞いたことがあった。
男だけを好んで喰っていた鬼だ。恐らく弱ったところを存分に味わっていたのだろう。
いつ血鬼術が解けるのだろう。
いつ風柱の苦しみが解放されるのだろう。
「俺から離れろォ…ッ」
「でも、」
「お前を襲うかもしれねェ、頼むッ…」
伸ばしかけた手を止めた。
触れればどうなるのか、風柱の自制が効かなくなったらどうなるのか。
男を知らないゆき乃にとって、想像するだけで身が震える思いだった。
だけど、自分の身を守る事よりも、風柱を苦しみから救う事がゆき乃にとっては優先すべき事だった。
「分かり、ました…」
「分かったならさっさと、」
「…風柱様の苦しみを、解放させてみせます!経験はありませんが、知識はありますので安心して身を委ねてください!」
「クッ……テメェ何訳の分からねぇ事ッ…」
「私の母は、女が家を守るものだと強く信じておりました。その為には夫となる男を満足させられるようになりなさいと、私は小さい頃からそういう事を教わっておりました。だから……風柱様のお役に立ちたいのです!」
捲し立てるように言葉を並べながら、隊服の一番上のボタンだけを外し、蹲る風柱の側に近寄った。
明らかに困惑してる表情を浮かべているが、それでも湧き上がる欲と葛藤し、その顔が歪んでいく。
隊服の上からでも分かるくらいに、腫れ上がった風柱の下半身に手を伸ばし、静かに触れた。
ヤメロォ、という声は弱々しく、手首を掴まれはしたが、払われなかった。
風柱を助けたい。
その使命感だけがゆき乃を突き動かしていた。
「し、失礼します!」
隊服のベルトを外し、ズボンに手に掛けた。
腰を軽く浮かせた風柱は、すでに上気した顔を向け、膜の張った瞳を向けていた。
纏っている布が形を変える程に、その奥にあるものが大きく突き上げている。
知識はあっても初めて見るそれに思わずゴクリの唾を飲んだ。
「引き返すなら、今だァ…」
「女に二言はありません!」
「…クッ……変な女だなぁ…」
一瞬垣間見えた柔らかな表情に、ギュッと心が掴まれた。
常に殺気立っている彼からは想像できない。いや、こんな艶めかしい顔も想像はしたことはなかったが。
「ハァ…ハァッ……アァ、」
男がこんな声を上げるなんて知らない。
纏っていた布を外し、赤黒く反り勃ったものに指を丁寧に滑らせていく。
月夜に反射して、先端を潤している液が輝いている。
それを掌で包み込み手を上下に動かすと、顔を上に向け、それを隠すように腕で覆った風柱から甘い声が漏れた。
血鬼術の所為ではあるが、自分の動きで風柱がこんな声を出してくれるのかと、触れる度に気持ちが昂ぶっていき身体が火照っていく。
きっと覚束ない動作だろう。
ぎこち無いだろうし、上手くもないに違いない。
だけど、風柱が身を任せてくれている事に、こんな状況ではあるのに悦びを感じてしまう。
手を動かしながら、ゆっくりと顔を近づけ、唇でその先端に軽く触れた。
すると、「ア…ッ」という声と盛大な吐息に合わせるように、その先端から何かが飛び出してきた。
思わず避けてしまったが、それを握り締めたままの手には白濁とした液がベットリとついていた。
荒い呼吸を繰り返す風柱が、その腕を退けて視線を向けた。
物欲しそうなその顔に、身体の火照りが強くなる。
それは風柱も同じだったのだろうか。
掴んでいたそれがまたすぐに先程と同じように大きく硬くなっていき、また熱を帯びていく。
「風柱様……」
まるでゆき乃も媚薬に犯されたかのようだった。
その硬いものを唇で飲み込み、舌先で撫でていく。
もっと見たい、妖艶な顔を。
もっと聞きたい、淫らな声を。
顔を動かす度に漏れ聞こえる甘美な声に、自分の下半身が潤っていくのが分かった。
不意に、頭に触れた手が優しく撫でる。
そのまま視線だけを上げると、快感に昇り詰める直前の風柱の表情が見えて、何とも言えない気持ちになった。
甘い吐息を漏らし小さく身震いした直後、口の中に感じた苦味は、一生忘れないだろう。