願わくば、君と 02


ゆき乃と杏寿郎の関係が色変わりしたのは、ゆき乃が継子になって一年程経った時だった。

互いに意識し合ってはいたが、師範と継子の範疇を越えるべきではないと自制していた。

だけどある時の合同任務で、ゆき乃が負傷をし、意識が回復しない期間に溢れた感情を、杏寿郎が言葉にしたのがキッカケだった。

失うことの怖さだけでなく、愛おしいと思う心を大切にしたいと。

それから二人は、継子と師範という関係を保ちつつ、こうして任務や鍛練以外の時間は、その枠を超えて接するようになったのだ。



「他に受けた傷はないのか?」

「ない、です」

「そうか……ゆき乃の嘘はすぐに分かるな」



ハハ、と声を上げて笑った杏寿郎の手が、ゆき乃の隊服のボタンへと伸び、易々と外していく。

距離が近づき、微かに感じた吐息が頬を撫でた。



「か、隠が来るかもしれません!こんな場所で、」

「頼んでないから大丈夫だ」

「千寿郎くんが来るかも」

「千寿郎ならすでに先刻さつまいもを持ってきてくれたぞ!ゆき乃によろしくと言っていた」

「そうですか、でも…」

「まだ喋るつもりか?もう塞いでしまうぞ」



いつも見開いている瞳とは違い、目を細め瞼を閉ざしながら近づくその顔は、この一時(ひととき)だけ出会える彼の顔だ。

普段とは違うその表情に特別感を覚える。

誰にも見せたくないと、独占欲が渦巻く心から目を背けるかのように、ゆき乃はその唇を受け入れた。

久しぶりに触れた唇は、少し荒れてはいたものの、その温もりは全身を熱くさせていく。

唇を割って入ってきた生温かな舌に、後ろ手で支えていた腕が不意に脱力し倒れそうになったが、素早く力強い腕がそれを支えてくれた。

唇は離さずに。



「甘いな、ゆき乃の唇は」

「何も塗っていませんが……」

「ならばゆき乃の色香か。他の男には知られたくないな」



杏寿郎がみせた独占欲に、胸が高鳴る。

ゆき乃を抱きかかえて縁側から部屋に移動した杏寿郎は、ゆっくりと床にゆき乃を下ろした。

それから胸元に巻いているサラシを解いていく。

杏寿郎から贈られた羽織と隊服の上着を脱がされ、サラシの下、胸元に出来たもう一つの傷が露わになった。

それを見た杏寿郎の目が見開き、そこに顔を近づけ、舌先でその傷を舐めた。

背筋がゾクッとし、軽い痛みと共に小さな快楽が襲ってくる。

動く舌先が胸の先端に触れ、思わず声が零れた。



「背中は痛まないか?敷物を持ってこよう」

「師範待っ……待ってください、杏寿郎さん。いいですこのままで」



咄嗟に掴んだ彼の逞しい腕。

振り向いた杏寿郎は驚きながらもその表情を緩め、眉を下げて微笑みを向ける。

この触れ合いの時間だけ許される呼び方。

激しい鼓動が部屋中で鳴っているようだった。

杏寿郎の優しさよりも、今は杏寿郎が無意識で抑えようとしている彼の欲に触れたいと思った。

普段、自分に厳しく律している杏寿郎の側にいて、自然とゆき乃自身も同じような振る舞いになる。

二人は鬼殺隊でいる時間は触れ合う事も熱視線が絡む事もない。

だからこそ、こうして男女としての時間になると、お互いのタガが外れ、深く愛を確かめ合うのかもしれない。



「杏寿郎さ…アァ、ン……ハァ」

「綺麗だ、ゆき乃」

「ンンッ…あぁ、杏寿郎さん……ッ」



脱ぎ捨てた服が畳の上に広がっている。

胸元に這う舌と身体を撫でるように滑る指が、視界を滲ませ、脳を痺れさせていく。

杏寿郎の指が、潤い溢れているそこに触れると、甘美な水音が耳に届いた。

濡れているな、と満足そうな顔をする杏寿郎。

視線が絡むと近づき、また口付けを落とした。

今度はゆき乃から、彼の口内を割って入りその舌を絡めた。



「まだ余裕があるな」

「いえ、そういうわけでは…」

「久々だから、しっかりと解さねば」



そういうや否や、杏寿郎はゆき乃の太腿を大きく広げると、怪我をした内腿を避けながら舌を這わせ、甘く香る蜜壷を舐め上げた。

途端に背中が反り、嬌声が溢れ出た。



「杏寿郎さ、ダメ……あぁッ、ああぁぁッ」

「ダメなものか、次々と溢れてくるというのに」

「あぁッ…ハァ、ン……ッ、あぁ、ああぁッ…!」



潤いを掻き回す舌に、その奥が震える。

膨れた蕾に唇が触れ吸われると、昇り詰めていたものが溢れだし、高鳴る声と共にゆき乃の視界は白くなっていった。

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