そばにいたくて


触れられてる手が熱くて、心拍数が一気に上昇する。

手を動かそうとしたら、黎弥くんがそうさせまいと今度は強く私の手を掴んだ。


「そんな顔してたら抱きしめたくなる」

「……」

「もう逃げんのやめねぇ?これ以上我慢してたらオレどうにかなりそう」


黎弥くんの真剣な声に、何も言えなくなる。

言われてる言葉は嬉しいのに、どうしてこんなに胸が苦しいんだろう。

何も考えず、黎弥くんの胸に飛び込めたらどんなにいいか。

でもそんな事…――――できやしない。


「黎弥くん…私っ…」

「余計な事考えずに、オレのものになってよ」


私の言葉をかき消すように発せられた黎弥くんの言葉。

それと同時に、黎弥くんの身体が少し近づいて、私の身体を抱き寄せた。

お互いの肩に顎が当たるような体勢で…黎弥くんの肩が私の涙で濡れていく。

ちゃんとした言葉をもらったわけじゃない。

だけどそれ以上の言葉を、いま黎弥くんから貰えたと思う。

黎弥くんの言葉に心臓が震える。

初めて触れた黎弥くんの温もりに、私が抑えていた気持ちと涙腺が、いとも簡単に緩んでいく。


「好きだよ、ゆき乃が」

「……っ…」

「好きだ」


掠れた声で耳に届いた黎弥くんの想い。

今までどこか冗談めいていた部分があったから、からかわれてる所もあるのかもしれないって思ってた。

でもそれは、私が勝手に…自分の気持ちを制御するためにそう思ってただけで。

もう、黎弥くんの告白を嘘だなんて思わない。

だって…こんなに真っ直ぐ、私の胸に響いてる――――。


「…そばに…いたいの」


抑えられない気持ちが、口から零れた。

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