そばにいたくて


「私…黎弥くんのそばにいたい」

「うん」

「だから…」


言葉を繋げようとした私の身体を少し離す黎弥くん。

真っ直ぐ私を見つめて、少し目を細めて微笑んだ。

もういいって。

隠しても無駄だって。

黎弥くんの声が今にも聞こえてきそうな…そんな表情で私を見つめてる。

だから…。

その言葉の後に続くはずだったものがスッと消えた。


「…好きです…黎弥くんが好き」


自然と零れた黎弥くんへの想い。

同時に溢れた涙が頬を伝って落ちていく。

この想いを口にしたらどうなるかなんて、考えてる余裕がなかった。

私も、限界だった。

自分じゃ抑えきれない程膨らんでる黎弥くんへの想いを、どうする事もできなかった。


「やっと聞けた、ゆき乃の気持ち」


クイッと口角を上げて笑った黎弥くんが、優しく涙を拭ってくれて…その強くて優しい腕の中に、もう一度私を押し込めた。

お互いの鼓動が共鳴して、身体に響く。

触れられないと思っていた黎弥くんに抱きしめてもらってる。

こんな幸せなこと――――あっていいんだろうか。

もう何も考えたくないって思ったから、思考回路を一切遮断した私はただ黎弥くんの温もりに身を寄せて、心地よい鼓動に耳を傾けていた。


「キスしてぇ」


その空気を打ち砕く言葉が、黎弥くんから聞こえるまで。

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