届け、この想い


「来週小テストするから、しっかり復習しておくように」

「え〜!」


授業の終わり際、眠気から覚めるような事を先生が伝えると教室がうるさくなった。

そんな事もあたしにはどうでもよくて。

まるで反抗期のように先生の授業から目を背けていた。


「保科」

「……」

「放課後、準備室に来なさい」


先生の言葉に返事もしなかった。

答案用紙を投げつけ飛び出したあの日から数日経った。

あの時――――もう先生の事は諦めようって決めた。

このまま好きでいても意味がないって。

そう決めたのに、先生を見るとまだ心の奥にある「好き」って気持ち出てきてしまう。

だから先生と目を合わさないように、先生と離さないようにって。

これも、子供じみた態度になっちゃうのかな。

どうしたら、先生に釣り合うような大人な女性になれるんだろう。





放課後になって、今日も先生の呼び出しを無視して帰ろうとした。

会いたいような会いたくないような、よく分からない気持ちがずっとあって…どんな顔して会えばいいのか分からなくて。

先生に、何て言われるのかも…。

まだ受け止める勇気がない。

だから掃除を終えてすぐに帰ろうとしたのに、


「…なんで、」

「こんな事だろうと思った」


わざわざあたしの教室まで来た先生は、あたしの手首を掴むと引っ張るように歩き出した。

呼び止められても逃げようと思ってたのに。

先生の手が触れただけで、意図も簡単に反抗心なんて消えてしまう。

好きな気持ちは、全然消えてくれないのに。


「入りなさい」


準備室に連れて行かれて、静かにドアを閉めた先生はあたしの背中を押すと近くの椅子に座らせた。

椅子をコロコロと持ってきた先生。

あたしと向かい合わせに椅子を並べるとそこに深く腰掛けた。

視線を合わせて、ジッとあたしを見つめる。

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