「完全に寝ちゃったね」
そのままソファで寝てしまった黎弥くんをジッと見てたら、後ろからコハルさんの声がしてハッと我に返った。
完全に黎弥くんに見惚れてた!
慌てて視線をコハルさんに移すと、意味ありげに笑ってて…
「ゆき乃ちゃんずっと黎弥のこと見てるからすーぐ分かっちゃった」
「そ、そんなに見てました?」
「うん、ずっと視線がアッチ向いてたもん」
言われて顔が赤くなる。
誰かに言われることほど恥ずかしいものはない。
でも、言われるほど見ていたのなら…黎弥くんにもそれは伝わってないのかな。
「ゆき乃ちゃん、もっと押しなよ」
「え〜?」
「だって黎弥とゆき乃ちゃん、誰よりも仲良かったじゃん?だから私てっきり、もう付き合ってるのかと思ってたもん」
「…でも、仲良すぎて、言えないですよぉ」
「ん〜その不安も分かるよ?私も陸とそうだったもん…でもね、」
ベランダで煙草を吸ってる陸さんに目配せしたコハルさん。
それから微笑んで、私に近づくと、耳元で話して聞かせてくれた…――――
「実は陸も知らないんだけど…」
――――コハルさんの恋の必勝おまじない。
それを伝えると、嬉しそうにベランダにいる陸さんの元に行ってしまった。
コハルさんが来て笑う陸さんがポンと頭に手を置いていて、恋人同士の距離は、いくら仲が良いといっても友達との距離とは全然違うんだって思う。
部屋には私と、寝てる黎弥くん。
なっちゃんは追加のおつまみを買いに行っていて今はいない。
顔を赤くして寝息を立ててる黎弥くんの顔のパーツを目で追いながら、そこに目が留まってドクッと大きく心臓が高鳴った。
コハルさんが言うから。
でも…――――私だって、この恋を実らせたい!
「黎弥くん」
「……」
「黎弥くん、黎弥くーん…寝ちゃったの?黎弥くんあのね、起きないと…キスしちゃうよ?」
「……」
「黎弥くん……好きだよ」
寝ている黎弥くんにそう呟くように想いを伝えた。
自分の想いを言葉にしただけで、キュッと胸が締め付けられる。
苦しいのか嬉しいのか、何て言い表したらいいのか分からないこの感情を乗せて…――――黎弥くんの顔に、そっと近づいた。
コハルさんがそれで成就したからと言って自分も同じようになるかなんて分からないし、想いを伝えなきゃ始まらない。
でも、それでも…この溢れる想いを、今は夢の中でもいいから受け止めて欲しい。
触れたのは一瞬。
離れると、唇がジンと熱かった。