あの飲み会があってから数日。
黎弥くんとは会えてはいないものの、前よりも心なしか黎弥くんからの連絡が多くなったような気がした。
もしかしたら、あのおまじない効果が発揮された?
そう思うと嬉しいような恥ずかしいような…寝ていたとはいえ、自分がかなり大胆な事をしたなぁなんて。
早く黎弥くんに会いに行きたい。
それはすぐにやってくると思っていたのに…――――
「これも、ですか?」
「今こっちプロジェクト抱えてて出来る人いないんだよ、頼んだよ」
ドサッと机に置かれた資料にズシンと身体が重たくなる。
この数日、社内の仕事が急に忙しくなって、その上欠員と重なって、残業続きの毎日が続いていた。
仕事に慣れてきたころとはいえ、こうも毎日ハードな生活は、心も体もヘトヘトになっていく。
学生の時にはバイトをして、その上遊んだりしても平気だったのに。
最近、ずっと黎弥くんに会いにファミレスに行けていたせいもあってか、完全に黎弥くん不足で、精神的なダメージの方が強かった。
【最近忙しいんだなゆき乃ちゃん!がんばりや!】
【つぎ来たら、ローストビーフ増量してやるよ〜】
【俺、今週ずっとシフト入ってるから】
黎弥くんからのメッセージにジンと胸が熱くなる。
返せてないのに、面白いスタンプを交えて送ってくれる黎弥くんに、思いっきり抱きしめてもらいたい。
だけど、今日も終わりそうにない仕事。
会いたさだけが募る毎日。
毎日の仕事で心がヘトヘトになっていたある日、一通のメッセージが届いた。
それは飲み会以来のコハルさんからで、
【ゆき乃ちゃんおめでとう!黎弥とラブラブなんだって?】
思わず「え?」と声が漏れてしまうような内容だった。
すぐに返事をしてどういう意味なのかを聞いたら…――――黎弥くんに会いたくて会いたくて、今日やるべき仕事だけを片付けて会社を飛び出していた。
【黎弥、ゆき乃ちゃんとラブラブなんだ〜ってみんなに言ってるらしいよ?だからあの後付き合ったのかなって!黎弥にちゃんとぶつかってみなよ!】
ファミレスまで走りながら、コハルさんの言葉が頭の中をグルグル回ってた。
黎弥くんがみんなにそう言ってたのが本当なら、あのおなじないは本当にきいたのかもしれないって事で。
それよりなにより、黎弥くんも同じ気持ちでいてくれてるのかもしれないって思うと、黎弥くんに会いたい気持ちを抑えられなかった。
行けば黎弥くんに会える。
とにかく、黎弥くんに会いたい…――――ただそれだけ。
まさか、あんな光景を目撃することになるって分かっていたなら、この気持ちを抑えられたのかもしれないのに。