――――気づいたら、陸さんとコハルさんの家にいた。
泣きながら玄関の前に立つ私を、出迎えてくれたコハルさんは何も言わずに迎え入れてくれて、陸さんも何も聞かずに温かい紅茶を入れてくれた。
その優しさにまた涙が出る。
一息ついた時に、「なにがあったの?」と優しく聞かれて、自分の気持ちと黎弥くんへの嫉妬と、嫌いと言ってしまった事――――すべてを打ち明けた。
話しをしてる間も涙が止まらなくて。
今でも思い出すだけで、二人が笑ってる姿は胸が苦しくて。
でも、やっぱりやっぱり、
「それでもっ…黎弥くんが好きなんです…」
「大嫌いな人には涙なんで流せないわよ!好きだからこんなに悩んで苦しんでるんでしょ?」
「はいいぃぃぃっ」
コハルさんに背中をポンポンとされて、今まで溜まっていたものをすべて吐き出すように泣いていた。
仕事の疲れもあって、誰かに甘えたかったのかもしれない。
本当は黎弥くんに。
だけど黎弥くんは他の女の子と笑い合ってて、そんな姿に嫉妬して…――――全部全部、黎弥くんが好きだから。
子供みたいに泣いた私は、泣き疲れてそのままソファで寝てしまっていた。
瞼が重たくて、だけど耳で微かに陸さんがコハルさん以外の誰かに話をしてる声が耳に届いた。
何となくふわふわした感覚で、だけど目は重たくて。
泣いてスッキリしたのか気持ちは少し軽くて、何となく…まどろみの中を意識が心地よく漂っているような。
そんな気分の私に、遠くから聞こえる声。
「ゆき乃ちゃん…ゆき乃ちゃん?」
あれ、黎弥くんの声だ。
夢を見てるんだと思って、目を開けたら勿体ないって思ってそのままでいると、
「ゆき乃ちゃん、ごめんね?俺、肝心な所に気づかなくて…こんなに泣かせて。自分の気持ち、伝えてないのにゆき乃ちゃんを責めるような事言って」
スッと何かが頬に触れる。
その時にようやく、これが現実なんだと気づいた。
黎弥くんがそこにいるのが分かって、目を開けようとした時、
「ゆき乃ちゃん、ゆき乃ちゃーん…ほんとに寝てんのか」
「……」
「起きないと…チューするぞ?」
えっ…?
「大好きだよ、ゆき乃ちゃん」
夢かと思う黎弥くんの告白が耳に届いた瞬間、唇に触れた温かくて柔らかな感触。
苦しい締め付けじゃない、まったく違う締め付けが心臓をギュッとする。
でもすぐに離れてしまう黎弥くんの唇。
もう…もうもう!
これってデジャブ、ていうか――――起きてたのね、黎弥くんのバカっ!
「起きるまで、チューしてやろうかな」
微かな息遣いでまた近づいてきたのが分かった。
もう、黎弥くんのバカ!
黎弥くん…――――もう、大好き!