そばにいたくて


そんな私の頭にポンッと触れた黎弥くんの手。

それでも顔を上げられない私に、


「分かった、もう言わないから…そんな泣きそうな顔しないでよ」


落胆した黎弥くんの声が耳に届いて思わず顔を上げた。

黎弥くんは私を見ると、困ったように眉毛を下げて…それでも笑っていて。

だけどその悲しい笑顔を見たら、もっとギュッと胸が締め付けられたような気がした。

自分から遮ったくせに。

――もう言ってくれないの?

そんな矛盾した事を思って黎弥くんを見上げてる私の本心を、黎弥くんは気づいてるだろうか。


「黎弥くん…あの…」

「謝んないでよ?そんな事言われたら凹んで仕事できないかもしんねぇ」

「……」

「まぁ、それでも仕事を何でもこなしちゃうのがこのオレなんだけど」

「……」

「こういうの天才って言うんだろうね?」


ニッと笑った黎弥くんに釣られて、私も微笑んだ。

空気を変えようとわざとそんな事を言うのは、黎弥くんの優しさで。

今までこの優しさに何度触れてきただろう。

だから余計に…――――さっきの黎弥くんの顔が頭から離れない。

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