デート04


【side ゆき乃】


颯太が連れて行ってくれたお店は、映画館からすぐ近くの場所だった。

昼どきなのに並ばなくて済んだのは…颯太がその店を予約してたからで、私を待たせない方法を考えてた事を感心した。

そして料理も、まぁまぁ美味しかった。

ちゃんと下調べしてんじゃん。

私に気に入られようと頑張ってる感満載だけど。

それでも…そんな颯太を見て悪い気なんてしなかった。


「ご馳走様でした!」


そう言って、颯太の手を握る。

驚いた顔して「まだ繋いでくれるの!?」とでも言いたそうな表情をする颯太。

これに意味なんてないから、あまり気にしなくていいのに。

そう思いながらも、何だか初々しい颯太の反応を見て楽しんでいた。


「颯太ってさ、会社でも人気あるじゃん?」

「いや…」

「若い子が言ってたよー!モテるでしょ」

「俺、ゆき乃さん以外興味ないです」

「へぇ」

「え!? そんな反応っすか?」

「…颯太って今まで、年上と付き合った事ある?」


突然の質問にキョトンとした表情で私を見つめる颯太。

パチパチと数回瞬きをした後――「ないっす」と素直に答えた。

うん、だろうな。

何となくそんな気がした。

だから…たぶん私への気持ちは「憧れ」も含まれてるんじゃないかって思った。

本人は気づいてないかもしれないけど、そういう"好き"もある。

憧れからの好きっていう想いが悪いって言ってるんじゃない。

むしろ誰だって一度はある願望なんじゃないかなって思った。

ただ、そういうのは…手に届かないから輝いて見えるんだって。


「ゆき乃さんは…」

「あ?知りたい?私の過去」

「……」

「ま、教えないけどね!」


ベーッと舌を出して颯太の手を引っ張って歩いた。

颯太は何も言わなかったけど、繋いでいる手に力が入ったのは分かった。


- 11 -
prev next
novel / top
ALICE+